軽く40年は会っていない。
20代の頃、素人劇団に入っていて、舞台作り、衣装作り、パンフレットの広告とり
そして、俳優までやっていた頃の友だちが遊びに来ると言う。
同窓会なるものに一度も出た事がなく、これからも出るつもりはない。
しかし、何年間か、ワイワイけんけんがくがくと遊びのようなお芝居をやっていた仲間である。
そこは歓迎である。彼女たちは今までも付き合って来たらしい。
それが、わざわざ私に会いに来てくれたのである。
どんなことになるか、全く分からなくて、みんな一緒に温泉に泊まることになっていた。
初めの予定からひとり外れて、4人が愛知県からやってきた。
到着した日は我が家でお昼ご飯。そして温泉へ。
仲間のA子女史の顔で甲州園を予約していた。
何せ、20代の頃には友だちと旅行をしたことはあるものの、結婚してお金を出して宿泊施設に泊まった事は殆どない。
一度だけ、重度の障害を持っていた長男が亡くなった時、旅館に泊まった事がある。
旦那がわたしをねぎらって、連れて行ってくれたのである。
しかし、わたしたち一家は旅行を楽しめるような人種ではなかった。
帰りに寄った魚津の水族館のピラルクが一番印象に残っている。
しかし、今回、旅館でみた御陣乗太鼓にはびっくりした。
初め、この墨染めのような着物を着た鬼がでて来た。
太鼓を叩いた瞬間に、その音の迫力に度肝を抜かれた。
わたしたちは一番前のかぶりつきがいいと、鬼が触れそうな場所に座った。
それこそ、男たちのすね毛が見えるし、胸の激しい動きや足の筋肉が踊っているのも見えた、
その生々しさにドキドキしてしまった。
かって、村人たちが名舟という小さな漁村でワカメや海藻を頭につけ、太鼓を叩いて、
上杉謙信を撃退したという言い伝えがあるのである。
演じている男たちはびっくりする程迫力があった。
必死で上杉謙信の大群を追い払ったと言う。
御陣乗太鼓は外で演じたのを何回もみたことがある。
かなり昔、珠洲の海の特設舞台で、韓国のサムルノリと御陣乗太鼓が共演した時
完全に韓国のサムルノリの迫力に負けたと思った事がある。
しかし、甲州園の地下の劇場で演じられた御陣乗太鼓は別格だった。
太鼓の音が身体中にびんびん響き、なんて男たちだと思った。
それこそ、スタンディングオーベーションをしようと思ったくらいである。
友だちも喜んでくれて、鼻が高かった。
御馳走をたらふく食べ、蒲団を並べて寝てみると、何とも不思議で、困った。
翌朝、小学校の教師を定年まで勤め上げ、今は笑いヨガの先生をしてるという友だちが
ワライヨガのさわりを皆に教えてくれた。
これがまた不思議な体験だった。
呼吸法ですよ、というワライヨガ。さすがに羞恥心が崩れて来てしまった年齢だからか、
それとも、演劇などをしていたからか、みんな、言われるままに声をだしていた。
お陰でよく笑った。
朝食を食べていた時、仲井さんに御陣乗太鼓凄く良かった、と言ったら
すかさず、お面を取ったらがっかりですよ、というので笑ってしまった。
男臭さが充満してたものね。その落差は大きいかも知れない。
朝市を歩き、漆芸美術館を見て回り、キリコ会館もみてまわり、彼女たちは帰って行った。
こんなわたしにわざわざ会いに来てくれるなんて、有り難い。
じっくり話す事は出来なかったけど、みんな元気にやっているようで良かった良かった。
面白い体験でした。