マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

ハヤシライス

2010年07月13日 | ハ行
 「……もあるでヨ」との文句通り、カレーに比べて存在感は希薄だが、たまに強烈に食べたくなる。なぜか郷愁をそそるその正体は、いまも謎だ。

 明治時代、西洋文化の吸収に努め牛肉食を勧めた福沢諭吉の下で学んだ丸善の初代社長、早矢仕有的(はやし・ゆうてき)さんが作ったという説もあれば、ハッシュドビーフが起源だという説もある。昧つけもトマトケチャップ風味もあれば、デミグラスソースもありと色々だ。

 ハヤシライスを「早矢仕ライス」と差別化して提供している丸善の経営企画室・川澄美佐緒さんは「裏付ける資料はないが、ケチャップやデミグラスソースが輸入された時期を考えると、最初はしょうゆやみそがベースの味付けだった可能性もある」という。

 時代の先端を行く商業施設、六本木の東京ミッドタウンにはこの専門店「東京ハヤシライス倶楽部」がある。

 経営しているのはもつ焼き屋、居酒屋、洋食屋など幅広く飲食業を手がけ100店舗を傘下に抱える、い志井(しい)グループ。代表の石井宏治さんは男気が強く親分肌だった亡き祖父が作ってくれていたハヤシライスが無性に食べたくなり、シェフと一緒に2年半かけて昧を再現した。

 「周囲の99%が、日本はカレーの国、失敗する、と言った」そうだが「どうしてもジイさんの昧を食べて欲しい」と損得抜きで出店。いまは埼玉県、鹿児島県にも店を出す。なんかいいハヤシ、否、ハナシもあったでヨ。

 (朝日、2010年01月23日。大嶋辰男)
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