2月17日
中公文庫の新刊(といっても先月)「バルザック」(シュテファン・ツヴァイク/水野亮訳)を読んでいます。バルザックの評伝です。ものすごくおもしろい。もうひとつの「幻滅」を読んでいるみたいです。以前からバルザックの、マザコン的年上の女好きには共感できなかったし、今回事実を詳細に知るとますます自分には理解できないと感じるのですが、そういう女性が若い無名作家に与えることのできる安心感こそ、若い自分にはまったく欠けていたものだと、いまになると身に染みてわかりました。もちろん、こんな世界的天才と無能な自分を比べても意味もなにもありませんが。また、これを読むと、ヘンリー・ミラーを思い出しますね。やはり二人は似ていると思います。バルザックは、若いころ、私の感じとった雰囲気からすると、日本の貸本マンガ隆盛時代になんでもいいから描いて儲けた貸本マンガ家みたいに小説を書きなぐり、ヘンリー・ミラーは食うためにポルノ小説を書いていた。なのに、二人とも本質では堕落することなく大作家になった。すごい。
ところで、いまこの評伝もkindle版で読んでいて、また、「幻滅」をはじめとする数編も(「ゴリオ爺さん」はポケットマスターピースで読みましたが)kindleで読みました。また、バルザックの作品はいまも続々と電子化されていて読みやすくなっています。なのに、ヘンリー・ミラーは「南回帰線」と「マルーシの巨像」ぐらいしか電子化されていない。そんなに人気がないのでしょうか。せめて「薔薇色の十字架」三部作だけでも電子化してもらえないでしょうか。
変な着地点になりましたが、「バルザック」、最高です。ぜひ読んでみてください。