「欲の皮が突っ張る」
とはよく使われる言葉だ。
「怖くて縮こまる」
縮むことは恐れ・恐怖と結びついている。
皮膚は全身を包むシート。
皮膚のどこかが突っ張ればどこかが縮むことになる。
欲望と恐れによって、皮膚は突っ張ったり、縮んだりしている。
動きだけでなく質(ツルツルやザラザラ、湿りや乾燥、ピリピリした感じなど)も内外の状況によって様々な変化をしている。
東洋医学ではそういった突っ張りや縮みを虚実とか陰陽とかで分類したりする。
もう少し細かく、怒・喜・思・悲・憂・恐・驚など五行で分けたりもする。
外界の気候によっても皮膚は変化する。
寒ければ熱を外へ放出しないように縮むし、暑ければ緩んで汗を出す。
これも東洋医学では風・暑・湿・燥・寒などで分けたりする。
そして外界の気温だけでなく、血流が悪く冷えている所は縮んでいるし逆は突っ張っている。
運動によっても皮膚は動く。
筋緊張と協調して、というよりも筋緊張を調整するように動いている。
情動によって、気候によって、運動によって、全身を包む皮膚は様々な動きをする。
そしてその優先順位はその時その場その人によって異なる。
すごく暑いところでも、ものすごく怖い思いをしたら縮こまって寒く感じる。
すごく寒くても、興奮していたら緩んで汗が出てくることもある。
治っていない皮膚の傷でも動きが制限される。
傷跡や手術した痕など治っていても皮膚は動きを制限し続けてしまうことがある。
それはおそらく記憶と習慣だろうと思う。
暖房で暑い部屋から出ても、何か考え事に夢中だと皮膚はその暑い部屋での状態のままということもある。
そして目には見えない心の傷(記憶)も同じことだ。
記憶による皮膚の活動への制限が強まると、気候、情動、運動など現状への対応力が弱くなる。
治癒力の低下ともなる。
そういった皮膚の制限を外し、動きなど活動を回復することはそれに付随する問題の改善につながる。
しかし、長年猫背の人に「こういう姿勢がいいんだ」と外から指摘したり、手で動かしても根本的な改善はなかなかできない。
そういった制限(偏り・疲れ)は寝ても解消できない。
深く刻み込まれた記憶や染み付いた習慣を解消していくためには、少しずつ変化させていくことが必要になる。
体表の鍼治療はそのサポートとなる。