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元SEALDs諏訪原健「立憲民主党の大躍進を支えた#SNS戦略と8500万円のカンパ」 諏訪原健〔AERA 2017.10.25〕

2017-10-25 23:28:51 | 第48回衆院選

元SEALDs諏訪原健「立憲民主党の大躍進を支えた#SNS戦略と8500万円のカンパ」

連載「20代の処方箋」

 2017.10.25 07:00

東京・JR秋葉原駅前で開かれた立憲民主党の演説会に集まった聴衆たち。会場では枝野コールが巻き起こった(撮影/西岡千史)

東京・JR秋葉原駅前で開かれた立憲民主党の演説会に集まった聴衆たち。会場では枝野コールが巻き起こった(撮影/西岡千史)


*  *  *
 総選挙では自・公が定数の2/3を超える議席を獲得し、「安倍一強」は今後も続いていくことになった。しかしそんな状況の中で、ひときわ注目を集めているのが、立憲民主党の大躍進である。立憲民主党の議席数は、公示前の15から、55へと大幅に伸び、一気に野党第一党の地位に登りつめた。

 このような大躍進の原因を、希望の党の失速に伴って偶然に生じた「風」と見る向きもある。しかし私にはそうは思えない。あえて言えば、「風」に流されまいとする「草の根」の動きこそが、結果的に「風」を作り出すことになっているのだと思う。

 その「草の根」の動きを促進したのが、立憲民主党の「ボトムアップ」というスタンスだ。
 枝野氏は、「立憲民主党は『あなた』が作った政党だ」と街頭で語っていた。事実、立憲民主党が立ち上がったのは、「枝野立て」という市民の後押しがあったからだ。市民の声を受け、枝野氏はたった一人で記者会見を開き、ともに戦ってくれる人を募った。
 それを見て、自分こそがこの動きを作り出した当事者なのだ、何としても選挙戦に参加しなければならないと思った人が多くいたはずだ。

 枝野氏の言葉を聞いていて、真っ先に思い浮かんだのが、バーニー・サンダースのホームページ(HP)に書かれた言葉“This is your movement”だった。候補者のためではなく、あなた自身のための選挙なのだという打ち出し方に重なるものを覚えた。また立憲民主党の選挙戦自体も市民主体の選挙で、どこかアメリカ大統領選を彷彿させるものがあった。


 選挙戦の中で特に印象的だったのはSNS戦略だ。
立憲民主党のTwitterアカウントは、政党の「広報」にとどまらない、どこか「中の人」を身近に感じるような発信で多くの共感を集めた。フォロワーも選挙期間中に18万人にまで膨れ上がり、フォロワーの急激な増加自体がニュースになっていた。

 SNSは選挙への参加を呼びかけるツールとしてもよく機能していた。
街頭演説会の告知においては、「#大阪最終大作戦1020」、「#東京大作戦FINAL」のように毎回ハッシュタグが作られ、Twitterユーザーがつながりやすくなる工夫が見られた。また「ボランティア大作戦」と題して、選挙への参加方法が様々な形で提示されていた。

 さらにSNSの利用方法は、一方的な情報発信にとどまらなかった。
Twitter上で会話をする光景も多く見られたし、市民の自発的な動きも積極的に拡散することもあった。また演説会の参加者が自分で撮った写真や動画を、「#立憲カメラ」というハッシュタグでアップロードするように呼びかけるなど、市民の側からの情報発信も後押ししていた。

 こういった取り組みは、SNSを超えた勢いにつながった。
街頭演説会には、毎回多くの人が参加し、その様子はメディアを通じて、さらに広い層に届けられた。しかも伝えられる演説会の様子は、安倍自民党総裁の、ものものしい警備に囲まれ、聴衆と離れた街宣車の上から行われる演説とは一線を画していた。

 選挙ボランティアの促進にもSNSが貢献していた。
初めて候補者の事務所に足を運んでボランティアをした人、初めて家の前に政党のポスターを貼った人、そういう人が多く見られた。また立憲民主党への寄付も、短期間で8,500万円にまで膨れ上がった。このような様々な要素が連鎖的に作用し合うことで、「風」は作り出されていたと言える。

 さらに言えば、55議席を獲得するまでにいたったのは、安保法制以来の「市民と野党の共闘」の下積みがあってのことだ。
共産党は「見返りは民主主義」だとして、異例とも言えるスピードで67選挙区の候補者を取り下げた。取り下げを行えば、選挙区内での選挙運動は著しく制限され、自らの議席数に大きな影響が出ることは目に見えている。それでも「市民と野党の共闘」を重んじるという踏み込んだ決断だった。各地の市民グループも、地域事情に合わせて、迅速に最適な戦い方を作り出していた。目まぐるしく変わる政治状況の中でも、多くの選挙区で協力の枠組みが作れたのは、これまでの「共闘」の経験があったからだった。「大躍進」と呼べる結果の背景には、これまでの市民運動の積み重ねがあった。


 このようにしてみていくと、立憲民主党の勢いは、一過性で実体がないものとは思えない。むしろ政党として市民を受け入れる体制はこれからもっと整備されていくはずで、今後さらに多くの市民を巻き込むものになっていく可能性が開かれている。

 多くの市民の参加は、政党の足場となり、ブレない軸をつくりあげることになる。「ボトムアップ」の政党である以上、政治家や党のスタッフは自分たちが誰を代表しなければならないのか、常に自覚的であることを求められる。仮に政治家が信念を曲げるようなことがあっても、その時は下からの突き上げによって軌道修正をせざるをえなくなるはずだ。

 多様な市民の参加は、政策的な厚みにもつながる。これまでなかなか代表されなかった市民の声が今後政策に取り込まれていくことになるだろうし、候補者自体を多様化していくことにも繋がるかもしれない。今の国会はジェンダーの観点からも、年齢層の観点からも偏りが大きい。政党を支える人が多様で、そして力を持っていけば、この状況も変えていけるはずだ。

 今回の選挙戦の何よりの財産は、より多くの市民が、民主主義の「観客」としてではなく、「プレイヤー」として政治に関わったことだと思う。「今の政治はダメだ」、「どこの政党にも期待できない」と言うのは簡単だ。でもそういうことを言っているうちは、政治が良くなることなどない。政治は政治家だけのものではない。紛れもなく私たち自身のものなのだ。私たちが変わらなければ、当然ながら政治も変わらない。

 選挙結果だけ見れば、現状では市民の力などそんなに大したものとは言えないのかもしれない。しかし民主主義は選挙結果が出たからと言って、終わるものではない。民主主義は様々なプロセスの積み重ねなのだ。今の状況に、次に何を接続できるのかが重要だ。そのように考え、地道に取り組むことが今まさに求められている。

 安倍政権は今後、自民党改憲草案に基づく憲法改正に向けて動くだろう。具体的にどの項目から着手するかはわからないが、いずれにしても改憲草案に通底しているのは、「公益及び公の秩序」を、私たちの尊厳や権利よりも重く見ているということだ。憲法改正が悪いとは言わない。しかしそもそも憲法を軽視する安倍政権の下で、自民党改憲草案に基づく憲法改正が行われるとすれば、それは何としても阻止すべきだ。そう考えた時、一番の武器になるのは私たちが主権者としての力を高めることだと思う。私たちの力で、立憲野党全体を押し上げることができるかどうか、あるいは憲法についての国民的な理解を広められるかどうか、憲法改正がどうなるかはこういった点にかかっていると思う。

諏訪原健

諏訪原健(すわはら・たけし)/1992年、鹿児島県鹿屋市出身。筑波大学教育学類を経て、現在は筑波大学大学院人間総合科学研究科に在籍。専攻は教育社会学。2014年、SASPL(特定秘密保護法に反対する学生有志の会)に参加したことをきっかけに政治的な活動に関わるようになる。2015年にはSEALDsのメンバーとして活動した

 
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