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私たちは主権者だ。天皇に関する制度をどう設計するか、その議論に遠慮があってはならない。〔澤藤統一郎の憲法日記 2017.6.10〕

2017-06-11 21:10:54 | 昭和天皇 平成天皇 天皇制

澤藤統一郎の憲法日記

http://article9.jp/wordpress/?m=201706

私たちは主権者だ。天皇に関する制度をどう設計するか、その議論に遠慮があってはならない。

昨日(6月9日)、天皇の生前退位を認める「皇室典範特例法」が成立した。侃々諤々の議論はなく、「静謐な環境の中で速やかに」、天皇(明仁)の退位希望が認められることとなった。

この特例法成立に際しての首相談話が以下のとおりである。
「天皇の退位等に関する皇室典範特例法が成立しました。本法の重要性に鑑み、衆参両院の議長、副議長にご尽力を頂き、また各会派の皆様のご協力を頂き、静謐な環境の中で速やかに成立させていただいたことに対しまして感謝を申し上げ、改めて敬意を表したいと思います」「光格天皇以来、実に200年ぶりに退位を実現するもので、この問題が国家の基本、そして長い歴史、未来に関わる重要な課題であることを改めて実感した…」

私には、「本法の重要性」は理解し難い。「この問題が国家の基本」であることも、「長い歴史、未来に関わる重要な課題である」ことも。ましてや、活発な議論を意識的に避けて、「静謐な(=ものを言えない)環境」をつくり出したことに「感謝」「敬意」とは、なんたることだ。

天皇の生前退位の可否よりも、共謀罪法案の成否こそが国家的重大事ではないか。また、加計学園問題等に表れた権力者による政治の私物化も、未来に関わる重要な課題である。そして、法案審議に関わって危惧せざるを得ないことは、天皇や皇族にまつわることになると、奥歯にものがはさまったような、明確にものを言えない雰囲気が醸成されていることである。

共謀罪法案の審議の過程では、国体(=天皇制)擁護を掲げた治安維持法を想起せざるを得ない。もちろん、今はなき不敬罪や大逆罪の猛威も。現天皇(明仁)の先代(裕仁)の就位時には、天皇は主権者であった。天皇は統治権の総覧者であり、天皇の名で裁判は行われ、天皇が大元帥として軍事を統帥し、天皇が教育をつかさどった。そして、天皇の名による侵略戦争と植民地支配が行われ、皇軍による無数の殺戮と凌辱が行われた。内外にこの上ない規模の不幸を生み出したことに天皇の責任は限りなく大きい。現行日本国憲法は、その忌むべき戦前と天皇主権を根底から否定して制定されたものではないか。

今、当然のこととして主権は国民にある。天皇に関わる制度をどう設計するかは、主権者である国民の意思次第である。天皇の退位を自由にしてもよし、空位にしてもよい。女性天皇を認めてもよし、さっぱりと廃止してもよい。大切なことは、誰もが闊達に自分の意見を表明することのできる「静謐ならざる環境」を整えることである。国民全体への奉仕者と位置づけられている公務員職の一つである天皇のあり方について、ことさらに議論を押さえた静謐な環境が強調されることは不気味でならず、議会内勢力の大部分がこれを認めていることも不気味でならない。

本日の各紙社説の論調も不気味と言わねばならない。産経に至っては、「立憲君主である天皇の御代替わりという日本の重要事である」とした上で、社説の末尾を「皇位継承の伝統、原則の大切さを十分理解して、皇室の弥栄を考えたい。」と結んでいる。いったい、いつの時代の紙面か。いつの時代の頭と感覚なのか。

とりわけ見過ごせないのは、「陛下を敬愛する国民が、譲位をかなえてさしあげたいと願い、それが政府や国会を後押しした。このような天皇と国民の絆こそ、昔から続く日本の国柄の表れだ。」という一文。天皇を敬愛せぬ者は非国民と言わんばかりの決めつけ。この産経社説風の雰囲気蔓延を危惧せざるを得ない。

比較的真っ当な社説として、沖縄タイムスのものに出会った。
[退位特例法成立]「『象徴』像さらに議論を」というタイトル。
「天皇は戦後憲法の下で『国民統合の象徴』と位置づけられ、その地位は主権者である『国民の総意に基づく』とうたわれている。
『総意』とは何か。『象徴』とは何か。『逝去によらない代替わり』をどのような方法で実現するのか。議論すべき論点は多かった。象徴天皇制について主権者が議論を深めるまたとない機会でもあった。
だが、国会審議は衆参両院で各1日。事前に衆参両院の正副議長が調整に乗りだし、与野党が歩み寄ったこともあって法案審議はとんとん拍子に進み、あっという間に特例法が成立した。」
「昨年8月8日、国民向けに流れたビデオメッセージで天皇陛下が最も強調していたのは『象徴としての行為』だった。憲法は天皇の権能について、『国事行為のみ』を行い、国政に関与することはできない、と定めている。憲法学者の中には、天皇の行為を国事行為に限定すべき、だとの意見もある。」
「『象徴としての行為』とは何か。政治家も国民もそのような議論をしてこなかった。政治の動きは特に鈍かった。…このような議論を避けて通るべきではない。…国会審議で置き去りにされた皇族の減少対策などについて、女性・女系天皇の可能性も含め、真剣な議論を始めるときがきている。」

言論の自由にタブーの領域を作ってはならない。権力批判に遠慮があってはならないことと並んで、天皇という権威に対する批判をタブーとしてはならない。それは、国民主権を形骸化する第一歩だ。
(2017年6月10日)

 

 

 

 

 


「共謀罪」懸念の国連報告書を無視する安倍政権の魂胆 〔日刊ゲンダイ 2017.6.10〕

2017-06-11 19:20:08 | 共謀罪 治安維持法
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/207200

「共謀罪」懸念の国連報告書を無視する安倍政権の魂胆

“精査”にどれだけ時間がかかっているのか(C)AP査”にどれだけ時間がかかっているのか(C)AP

  • 2017年6月10日

〈法律の広範な適用範囲によって、プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性がある〉――。国連人権理事会の特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏が共謀罪法案に懸念を示す「報告書」を安倍首相に送ってから3週間。受け取った菅官房長官は「一方的」「不適切」と色をなして反論し、岸田外相も参院法務委で「(ケナタッチ氏に)正式な回答を用意している。用意が出来次第、回答する」と気色ばんでいた。ところが、いつまで経っても日本政府の「回答書」が示される気配がない。

「精査している」。8日の参院法務委で、「回答書」について問われた岸外務副大臣はこう答えるのが精いっぱいだった。だが、ケナタッチ氏の報告書はたった5枚のリポートだ。「精査」にいったいどれだけ時間がかかっているのか。このままだと国会が閉会してしまう。外務省に回答時期を問い合わせたが、「政府が答弁している通りです」(報道課)と木で鼻をくくったような答えだった。

「ケナタッチ氏の指摘に完全論破された安倍政権は、下手に反論すればますます批判が高まると思ったのでしょう。この際、報告書の指摘は無視して、一刻も早く共謀罪法案を強行成立するつもりなのだと思います」(外務省担当記者)

 共謀罪に詳しい小口幸人弁護士が言う。

「時間がかかっているのは、回答できないからです。ケナタッチ氏が指摘するプライバシーへの配慮は、共謀罪の法制度には一切織り込まれていない。だから政府は“ちゃんと運用する”としか言えない。そんな“空っぽの回答”を共謀罪成立前に示してしまうと、ケナタッチ氏からキッチリ反論されてしまう。わざとモタモタしているのでしょう」

 つまり、共謀罪法案の中身がそれだけヒドイということ。ケナタッチ氏も呆れているに違いない。