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共産論(連載第53回)

2017-07-14 | 〆共産論[改訂第2版]

第9章 非暴力革命のプロセス

(4)移行期の工程を進める:Lead the transitional process

◇移行期工程の準備
 革命移行委員会(革移会)の最大任務は、共産主義社会の開幕に向けた移行期の工程を進めることにある。移行期には革命に伴いがちな政治・経済的混乱も予想される。この時期をいかに短縮できるかが革命に成否を左右する。
 目安としては遅くとも5年以内に移行期を完了させることが望ましい。それを可能とするためにも移行期については民衆会議内部で事前に討議し、入念な準備と計画を練っておく必要がある。以下、この移行期工程の中でも特に重要なものを項目的に列挙していく。

◇初期憲章(憲法)の起草
 前章でも指摘したように、革移会は早期の立憲体制移行を目指さねばならないのだが、大規模な革命にあって急激な立憲体制の確立は困難であるから、過程を分けて考える必要がある。
 それとともに、ここで「憲法」と言った場合、我々が知っている憲法とは異なることに注意を要する。現在、我々が知っている憲法は国家の構制を定めた国家基本法という性格を持つ。これに対して、共産主義社会では再三述べてきたように国家は廃止されるのであるから、憲法も「国家」基本法ではあり得ない。
 その代わり、憲法は民衆による社会の運営方法を定めたルールとなり、それは「民衆会議憲章」という形式(例えば「日本民衆会議憲章」)で示される(以下、単に「憲章」という)。
 この憲章の制定にも二つの過程がある。第一は最初期共産主義社会―言わば「生まれたばかりの共産主義社会」―に対応するものとしての「初期憲章」であり、第二はこの最初期共産主義を経過した後の成熟期共産主義社会に対応するものとしての「完成憲章」である。(※)
 民衆会議は革命後直ちに第一の初期憲章の起草作業に取り組むため、「憲章起草委員会」を設置する。この委員会は、民衆会議の国際本部でもある世界民衆会議とも連携しながら、適切な憲章案の策定を目指して移行期のプロセスいっぱいをかけ幅広く討議する。その際、世界民衆会議は、世界共同体の創設を見越して、世界共同体憲章を踏まえた初期憲章のモデル試案を提示する。

※「初期憲章」「完成憲章」各々について、部分改正を重ねることは可能である。

◇共和制の樹立
 憲法問題と関連して、それ自身憲法問題でもある政体の選択も重要課題となる。
 共産主義的政体とは本質上共和制であるから、君主制やそれに準じた世襲的統治形態とは両立し得ない。これは、日本の象徴天皇制を含めて政治的権能を喪失し象徴化された君主制(象徴君主制)の将来に関わる問題である。(※)
 結論から言って、共産主義革命後は象徴君主制も廃止を免れない。ただし、「廃止」の意味内容については慎重に分析される必要がある。
 すなわち、ここで言う「廃止」の対象となるのはさしあたり政治制度としての君主制であって、ファミリーとしての王室(以下、天皇制における「皇室」を含めてこの語を用いる)を廃止するかどうかとは区別することができるのである。
 もちろん最も徹底した共和制にあっては王室そのものも廃止することが要求されるであろう。歴史的に見ると、民衆蜂起型の革命によって君主制が打倒されたときには王室もろとも解体され、君主処刑という事態に発展することもあった(フランス革命やロシア革命)。
 しかし、それらは専制君主制に対する民衆の憎悪を背景とする出来事であって、すでに政治的権能を喪失して久しい象徴君主制は通常民衆的憎悪の標的とならない。象徴君主制における王室解体、ましてや君主処刑はかえって民衆の同情を買い、尊王勢力の反革命テロリズムをさえ誘発しかねないであろう。
 そこで、象徴君主制の廃止にあっては王室もろとも廃止する徹底政策よりも、君主制は廃止するが王室は存続させるという形を捨て実を取る不徹底な方策をあえて採るほうが賢明と思われるのである。
 ただし、王室の存続といっても、それはいかなる特権も伴わない形で王室メンバーとしての形式的称号の存続を認めるというにとどまる。従って、宮内省(庁)のような特権的家政機関は廃止されるほか、王室メンバーの実質的な一般公民化が促進されることになる。

※すでに共和制が樹立されている場合であっても、民衆会議体制は大統領その他の執政官に施政を委任するのではなく、民衆自身が民衆会議を通じて統治する「民衆共和政体」への移行を要する。

◇革命防衛
 移行期とは様々な形で反革命策動が展開される時期でもあるから、革委会の任務として革命体制を防衛すること自体も移行期における重要な政策となる。この革命防衛については内政面と外交面とを区別することができる。

(a)内政面
 内政面での革命防衛策は、歴史上しばしば人権侵害の象徴として革命に対する恐怖のイメージを醸し出すもととなってきた。特に革命防衛を直接の目的とする政治警察の創設は人権侵害の温床を作出するので避けるべきである。
 しかし反革命活動を座視しているわけにはいかないから、反革命活動に対抗するための民間ボランティア組織として「革命防衛連絡会」(革防連)を立ち上げる必要はある。
 これは反革命活動への関与が疑われる団体や個人に対する情報収集・動静監視及び対抗的抗議活動、場合により捜査機関への告発を行う、警察権限を持たない非権力的な組織である。
 一方、反革命的マス・メディアや出版社に対する事前検閲や反革命デモ・集会の禁止措置は導入しない代わりに、反革命的メディアや出版社に対しては不買・不視聴運動を、反革命的デモ・集会に対しては対抗的デモ・集会を組織して対応する。これらの活動の組織化も先の革防連の任務である。
 また、公職追放などの集団的パージも必要ない。後述するように、移行期にはまだ旧政府機構は残存しているから、一般公務員は当面温存しなければならず、明白に反革命サボタージュに出る公務員を個別的に解職すれば足りる。
 ただし、軍の反革命クーデターには一定の警戒を要する。そのためにも軍を統制する平和問題担当革命移行委員の下で実務に当たる委員代理には革命に理解ある退役軍人(自衛官)を充てるとともに、中堅幹部層以下の革命体制への統合に努めなければならない。

(b)外交面
 歴史的に見ると、多くの革命においてその波及を恐れる諸外国からの干渉がなされ、戦争に発展することが少なくない。そこで、外交面での革命防衛策を講じることも不可欠である。
 その際重要なのは(1)で論じておいた民衆会議のトランスナショナルな組織化である。共産主義革命は最終的には全世界に波及する連続革命(ドミノ革命)の中で初めて反革命外国勢力の干渉を打破し、完遂されるものである。このドミノ革命の問題は次章の課題であるが、それは単なる“革命の輸出”にとどまらない、全世界的な革命のうねりである。
 こうした意味で、外交面における革命防衛の要諦は、技巧的な外交術とも異なる民衆会議のトランスナショナルな連帯それ自体なのである。

◇土地革命
 移行期における経済政策で最も重要なものの一つが土地革命、すなわち全土地の無主物化と公的管理体制への移管である。この政策は、おそらく最も強い反発・抵抗を呼び起こし、旧土地所有権者による訴訟提起も多発しかねないから、革移会はすみやかに政令を発布して土地管理機関を設立し、旧土地所有権者による訴訟を法的に禁止するほか、土地囲い込みなどの実力行使に対する取り締まりの体制を整備する必要がある。そのためにも、土地管理公社は法務部門のほか、独自の捜査部門と警備部門も備えている必要がある。

◇基幹産業の統合
 共産主義経済の基軸が計画経済(環境計画経済)にあることはすでに見たが、資本主義的市場経済から一挙に共産主義的計画経済へ移行することは無理であるから、まずは計画経済の対象分野の企業統合を通じた再編に着手する。
 具体的には、鉄鋼、電力、石油、造船、機械工業に加え、運輸、通信、自動車等々、計画経済の導入を予定している分野に関して、将来の生産事業機構化へ向けた単一の包括会社を設立することである。
 そのうえで、将来の計画機関である経済計画会議の前身となる「計画経済移行準備協議会」を設置し、各包括会社の担当役員を中心に計画経済の準備と演習を行う。
 こうした包括会社と同様の会社の設立は、一般消費分野でも行われる。すなわちスーパーマーケットやコンビニエンスストアの合併による地方圏ごとの包括小売会社の設立である。これは地方圏ごとに設立される将来の消費事業組合の前身となる組織である。

◇農業の再編
 農業生産機構を軸とする共産主義的な農業集約化は土地改革に伴う農地の所有権消滅問題とも絡んで、大きな反発を招く恐れもあるため、十分な経過措置を講じて農業者の理解と信頼を醸成することを要する。
 この点では、旧ソ連で強権的なやり方で断行された「農業集団化」が引き起こした農民反乱と農業生産の逆効果的な落ち込みは歴史的に大きな教訓である。

◇経済移行演習
 移行期にはまだ資本主義は完全には廃されず、その相当部分が残されたままである(残存資本主義)。しかし、この時期からほとんどの人にとって未知の共産主義経済という新経済システムに適応するための予行演習を展開することが不可欠である。
 具体的には、代表的な都市部及び典型的な農漁村部に「共産主義経済試行区」を設置し、試行区内で先行的に共産主義経済の実践を開始する。
 わけても最大の焦点となる貨幣経済の廃止はほとんど「文明史的な」と形容しても過言でないほどの大変革となるために、貨幣交換なき生産・流通・消費に習熟しておく必要がある。
 試行区内では、一定の経済的補償を伴いつつ、モデルとなる小売店などの協力を得て、貨幣交換によらない無償供給(取得数量規制付き)を試行するほか、貨幣交換によらない流通システム全般の経済演習も行う。
 また、先の計画経済移行準備協議会による経済計画演習のほか、貨幣交換によらない生産財の生産・納入・更新のシステムについても演習を行う。
 こうした試行演習以外にも、共産主義経済への移行プロセスの全体像を解説した文書を各産業界にも配布して、自発的な準備を促す。また、共産主義経済の下での新たな生産と労働の仕組み全般をわかりやすく解説した冊子を全世帯に配布するなど情報提供・周知徹底を通して不安の解消に努める。
 このように、経済移行演習は試行と告知の組み合わせにより、社会経済システムの大変動期にありがちな混乱を最小限に抑制しようとする移行期の施策である。

◇移行期行政
 共産主義社会では国家は廃止されるが、移行期には中央・地方ともまだ旧政府・自治体機構は存続する。
 この間、中央では上述の革命移行委員が国務大臣に準じて各行政分野を所管するが、主要省庁は当面の行政事務を継続しつつ、政策シンクタンク化へ向けた組織転換の準備作業を開始する。
 これに対して、地方行政に関しては、革移会の特別政令により、まず全自治体の残存首長・議員を一斉解職する。そのうえで、都道府県のような広域自治体は地方圏民衆会議の管理下に移し、民衆会議から「臨時行政委員」(知事相当)及び「臨時行政委員代理」(副知事相当)を派遣して通常業務を継続しつつ、地方圏への統合へ向けた作業を開始する。
 一方、市町村については市町村民衆会議が直ちに市町村行政を掌握し、当面は民衆会議議長が市町村長職を継承しつつ、中間自治体としての地域圏の区割り作業及び地域圏への権限移譲などの作業を指導する。

◇軍廃計画の推進
 移行期行政で注意を要するのは、軍(自衛隊)の扱いである。共産主義社会では最終的に常備軍は廃止されるが、それは世界法(条約)に基づいて初めてなし得ることであるから、それまでの間は軍を革命体制に統合しつつ、軍を保持していく。とはいえ、移行期には将来の常備軍廃止を視野に、軍縮ならぬ軍廃計画を進めていく必要がある。
 その進め方や規模は、反革命諸国からの武力干渉及び軍内部からの反革命クーデターという内外情勢を考慮しつつ、戦略的に決定される。そのためにも、軍廃を所管する平和問題担当移行委員の舵取りは極めて重要である。

◇司法革命  
 移行期工程では、第4章でも論じたような警察、裁判所制度によらない新たな司法制度の創出も始まる。
 しかし、司法は秩序維持に関わり、革命防衛にとっても要の領域であるから、混乱を避けるため細心の注意を払った経過措置と応急措置を取りながら進めていかなければならない。従って、新司法制度は初期憲章の施行に合わせて時間的な余裕を持って施行されるべきであろう。(※

※革命の時点でもなお死刑制度が存置されていた場合は、まず緊急政令によって死刑判決及び執行を全面的に停止したうえ、死刑廃止国際条約の批准に向けたプロセスを開始することも忘れてはならない。

◇初期憲章の施行
 以上の移行期工程が完了に近づいた段階で、仕上げとして初期憲章の制定手続きに入る。具体的には先の憲章起草委員会が策定した憲章案を民衆会議総会にかけ、多数決により可決した後、さらに市町村、地域圏、地方圏の各レベルごとの三分の二以上の民衆会議で単純多数決により可決する。なお、初期憲章はその名のとおり第一次的なものであるから、この段階では民衆による直接投票は不要としてよい。 
 かくして、初期憲章の公布・施行をもって、移行期工程が完結する。

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