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世界共同体憲章試案(連載第23回)

2020-01-04 | 〆世界共同体憲章試案

〈社会権〉

【第72条】

1.すべて人は、労働者であると否とを問わず、衣食住、医療及び必要な社会的支援により、自己及び家族の厚生に十分な生活水準を保持する権利並びに疾病、心身障碍、配偶者の死亡、老齢、災害その他の不可抗力または戦争もしくは他人の不法行為による生活不能の場合は、公的な救援及び保護を受ける権利を有する。

2.すべて人は、ひとしく医療にアクセスし、必要かつ有効な治療を安全に受ける権利及び疾病を予防するための衛生上のサービスを受ける権利を有する。これらの権利を保障するために、世界共同体及び汎域圏は、医療衛生機関のネットワークを直営する。

3.母親及び出生した子は、特別の保護及び援助を受ける権利を有する。すべての子どもは、嫡出であると否とを問わず、または養子であると否とを問わず、同等の権利を有し、かつ同等の社会的保護を受ける。

[注釈]
 第69条の生存権の規定をより具体化した社会権条項である。貨幣経済が廃される世界共同体域内では、労働と生活は分離されるため、労働者であると否とを問わず、社会権がひとしく保障される。第二項は、世界共同体域内において医療・衛生サービスを受ける権利を実質的に保障するため、世界共同体と汎域圏に直営医療衛生機関ネットワークの創設を義務付ける。

【第73条】

1.すべて人は、障碍や疾病の有無を問わず、無償で教育を受ける権利を有する。基礎教育は基礎的な職業教育を含み、義務的でなければならない。専門的な職業教育は特権的であってはならず、民衆に広く開放されたものでなければならない。心身障碍者の特別教育は隔離的であってはならず、普通教育と統合的または交流的でなければならない。

2.教育は、基本的人権の尊重の強化を目的とし、かつ人類相互の理解、寛容及び友好関係を増進し、恒久平和の維持のため、世界共同体の活動を促進するものでなければならない。

[注釈]
 貨幣経済が廃される世界共同体の域内では、教育はおよそ無償である。専門職業教育の特権性の禁止、障碍者特別教育の隔離性の禁止は、世界人権宣言以来の伝統的な社会権論のレベルを超える規定である。

【第74条】

1.すべて人は、その資質及び関心に応じて勤労する責務及び権利を有する。世界共同体を構成する各領域圏は、領域民が最適の職業を選択できるように各人の適性を考慮した科学的な方法によって労働を配分しなければならない。

2.金銭その他の報酬を伴う労働は、禁じられる。ただし、特別な賞与としての現物支給については、この限りでない。

3.労働者は、公正な労働条件及び物理的に安全かつ衛生的で、心理的にも健全な労働環境を確保し、並びに労働時間の公正な制限及び定期的な有給休暇を含む休息をとる権利を有する。労働者がこれらの権利を侵害された場合、中立的な公的機関を通じて迅速に救済される権利を有する。

4.労働者は、自己が所属する企業体の経営に対して、直接に、または公正な方法で選任された代表者を通じて参加する権利を有する。

[注釈]
 本条は労働権に関する規定であるが、伝統的なブルジョワ人権論における労働権とは大きく異なる規定である。貨幣経済が廃されるため、賃金労働も廃される。その代わり、無償の勤労は責務となる反面、科学的な方法で最適な就労ができるように公的に労働配分され、賃金労働下よりもきめ細やかな労働権が確保される。また企業労働者の場合、経営参加権が保障される。

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