書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

河南省文物考古研究所著・編集 唐際根監修 渡邉義浩/谷口建速訳 『曹操墓の真相』

2012年08月15日 | 東洋史
 直接証拠がないから断定はできないのに断定している(詳しくは『ウィキペディア』「西高穴2号墓」項「曹操墓認定の根拠」を参照)。「魏武王常所用」云々の石牌がその中で最大の根拠とされていると思うが、それなら「越王鸠潜(勾践),自乍(作)用剑」の銘のある青銅剣(世に言う“越王勾践剣”)が発掘された湖北省江陵県望山1号楚墓は、勾践の墓かということになる。持ち物の所有者は変わるものだ。
 それより、炭素十四年代測定法や熱ルミネッセンス年代測定法を木材が殆ど遺っていない、誤差が大きいと言う理由で実行を拒否する姿勢には首をかしげる。さらに残された遺骨のDNA検査まで頑なにその必要なしとして拒絶する態度に至っては異常の感さえ受ける。

(国書刊行会 2011年9月)