書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

Трепавлов В.В. 『Белый царь』

2009年11月10日 | 東洋史
 副題「Образ монарха и представление о подданстве у народов России XV-XVIII вв. 」

 モスクワ大公国、ロシア・ツァーリ国、ロシア帝国時代のロシア君主の称号の一つ“Белый царь(白いツァーリ)”は、トルコ語の“ak xan”、つまり“白いハーン”(モンゴル語の“チャガン・ハーン”、清代の漢語では“察罕汗”)のロシア語訳だった。
 なぜ“白い”のかをめぐって、筆者は、当時のロシア語の「白い」という言葉(белый)にはこんな意味がある、あんな意味もあると、典拠を挙げつつ延々と議論を重ねるのだが、理由は簡単、ロシア人が白人だからではないのか。この本で紹介される当時の史料のなかに、清皇帝(ボグド・ハーン)を“黄色いツァーリ”と呼んでいるものがあるのを見ると、この推測はまず間違いあるまいと思うが如何。

(Москва: Восточная литература, 2007)