書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

魯迅著 丸尾常喜訳注 『中国小説の歴史的変遷』

2015年07月08日 | 文学
 原題『中国小説的歴史的変遷』。講義記録。

 清末の四大譴責小説は、なぜ口語文(旧白話)で書かれたのだろう。時文でも書けたはずである。まさか鼻祖の『儒林外史』がそうだったからという理由ではあるまい。魯迅もその理由について述べていない。
 魯迅はこの講義のもととなった自らの著作『中国小説史略』においても、これら四大譴責小説を評している。取り上げて論じる魯迅の文章のほうが文語(文言文)に近いのはたいへん興味深い。
 (ちなみに魯迅は『二十年目睹之怪現狀』に対して内容浅薄・誇大の言とたいそう点がからい。しかしながら私は、文体に限っていえば、この四つのなかではこの作品がいちばん好きである。)

(凱風社 1987年7月)