書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

石井紫郎校注 『多門伝八郎覚書』

2015年11月11日 | 日本史
 『日本思想大系』27「近世武家思想」(岩波書店 1974年11月)所収。

 松の廊下の刃傷沙汰の後ただちに浅野内匠頭のみ切腹、吉良上野介はお構いなしの沙汰が下ったことに対して、直接の両者取調べにあたった多聞が抗議するくだりがある。抗議の理由として、「余り片落之御仕置」とある(168頁)。
 そしてこの箇所には「喧嘩両成敗法が念頭にある発言」との石井氏の注釈が入っている。
 とすれば、四十七士の仇討は単なる仇討ではなく、やはり、不公平であることが最初から明白だった幕府(正確には将軍綱吉?)の裁決に対し、公正な法の執行、正義の実現を私刑ながら期した(正確には大石内蔵助?の)行為、という事態の構図になるのだろうか。