老後の練習

しのび寄るコドクな老後。オヂサンのひとり遊び。

『醜男』@世田谷パブリックシアター

2010-07-15 05:46:50 | 演劇
今回見た3本の最後。ホントはもっと見たいのもあったのだが、少しは余韻を楽しむ時間があったほうがいいのはジジツでジシュク。で、コレはドイツの若手作家、マリウス・フォン・マイエンブルクの大ヒット作品の翻訳版。ニッポン人が金髪のカツラかぶったりする翻訳劇ってのはどうもね、と思っていたが、意外とおもしろかったデスよ。主役のヒトはカツラじゃなくてスキンヘッドだったし、違和感なかった。

実際にはあり得ないつくり話なんだが、なんかワタシの身の回りにもなさそうでありそうなコトで、けっこうリアリティあった。
まずはどこかの電機会社の開発担当者が自分が開発したプラグだかなんかの発表会でプレゼンテーションしようとしている。ところがソコの社長だか誰だかが、その役を若いイケ麺のオトコに代われという。どうして、って聞くと、その若いオトコが、アンタはどうしようもなく醜いから、という。よくある話だ。コンペとかで落ちた原因をカオのせいにされたことあるし。マジで。言った相手はジッサイ偉くなったときに整形してるんだから説得力あった。
で、そのヒトは手術をして顔をとっ換えようとする。手術は自分の技術で世の中変えてやろう、くらいに思っている医者がやって大成功で理想のカオ、っていうから石坂コージくらいのカオになったんじゃないかと思う。そのへんは映画と違ってメークしてリアルにやるわけじゃなく、同じ顔のまま、アアこんなによくなった、とかいって見ているほうもそう思うだけ。

でもって、顔がよくなるとシゴトのほうも大成功で、ハッピーハッピーかと思ったらクライアントの70歳を超えたオバーハンが、シゴトをあげるからアタシと寝ろ、みたいなコトを言う。アンタのプラグをアタシにブっ刺して、みたいな。やや興奮。こういうのもよくあるコトだろうなあと想像する。イケ麺はツライのだ。で、そのヒトは、オバーハンと寝て、そのことをツマに報告する。と、当然ながら生活のほうはだんだんオカシクなってきて、全然楽しくない、みたいな状況に進んでいく。
イッポウであの医者はそのヒトのコトで有名になって、次から次に同じカオにしてくれっていう患者で大忙しになる。で、あの誰とでも寝るオバーハンのところにも同じカオに整形したヒトが来て、あらまた、とか言いながら寝る。寝た時点で分かるはずなのに、、だって、アソコは整形してないわけだから、わかるでしょ、ソコのオクサン。で、そっちの方向に進めば安部公房の「他人の顔」的展開になるところを、そうはならず、最初に整形したヒトは不幸のキワミになってビルから飛び降りようとする。と、そこに最初の場面でプレゼンテーションを奪ったモノの、その後、そのヒトが整形したことで出世しそこなった若いイケ麺がまたまた同じカオに整形して出てくる。3人目。もちろん仮面をかぶって出てくるわけではないのでそういうふうに思わないといけない。
いや、ハッキリ言ってこのへんの展開はアタマがこんがらがって正確に覚えていない。最後はその最初に整形したヒトとあとで整形した若いイケ麺が同じカオのオトコ同士でキスして飛び降りるのをやめてオシマイオシマイ。

これを4人の役者でやる。主人公のスキンヘッドは一つの役だが、そのツマは70歳のオバーハンや医者のアシスタントもやっているし、医者はスキンヘッドの上司もやっているし、、それからそれから若いオトコはイケ麺とオバーハンから解き放たれていないダメなオトコ役もやっている。で、彼らが舞台からほとんど下りないで、自分の登場する場面以外は後ろのほうの椅子に座っていて、場面になると前に出てきて光が当たってソコに何かしらの空気のカタマリができて空間が生まれる。コレぞ演劇。そのただ一人の女優が内山理名サマでバルコニー席からだからよく見えなかったが、キレイな足をアシゲもなく、いや、惜しげもなくサラシていてヨカったです。キレイなお声で、ましてや選挙最終日にぺニす、ぺニすって連呼するもんだからちょっとウレシかった。

まあ、カオって何?ってことか。コイズミJrとか、イケ麺で親の七光りで脳ミソからっぽで、やってるほうもツライだろうな、とは想像できる。コレをオンナのヒトを主役にすると芝居としては成立しない。なにしろ部スを部スと呼ぶと犯罪だから。オトコだから救われる。それはイケ麺がある種、笑いの対象でもあるから。オバーハンと寝るどころじゃない、存在そのものを否定されることもあるし。もちろん表面しか見ない、いやもちろんペニすまで見ろってことでもない、そういう薄っぺらい世の中のいまの雰囲気を浮かび上がらせているくらいのことはワタシにもわかりマシた。でもどちらかというと、照明がウマい、みたいにツウがよろこぶ内容。

2010.7.10、世田谷パブリックシアター中ホールにて。東京は終わったみたい。