老後の練習

しのび寄るコドクな老後。オヂサンのひとり遊び。

『エネミイ』@新国立劇場

2010-07-13 10:11:11 | 演劇
また帰りの成田のラウンジで書いている。アっという間。選挙の結果とか見てると、やっぱニッポンのマスコミはサイテ―だな、と思わせる。過去の政権からカンボウ機密費をわんさともらっているから、早く現政権をたたきつぶさないとジブンたちの存在が否定されると。もう、必死だ。菅サンはドンマイでクニのためにがんばってほしい。それにしてもアノ、落ち目のジミン等の総裁だか総統だか、名前も出てこないが、ジブンたちが作った200兆円の借金を棚に上げて、現政権にアタマを下げろとはどういう図々しさ。呆れる。

で、コレは第2夜。逆から読むとイミネエ、意味ねえ。ヒトとヒトの争いがハタから見ると無意味だ、というようなことを言っているような内容。イデオロギーの対立ってホント、意味ネー。お互いの違いを理解し合わない限り未来はないのはアキラカなわけだから。
でもってコノ芝居の中身はナリタ空港反対闘争から40年たってそれにかかわった人たちと、今の時代のヒトたちとの間の溝のようなものとか、今の、ホントにひとりひとりがイキテいくのが困難な時代の、何のために生きるか、みたいな、キワメテ深い内容。
こちらが期待している演劇的な興奮、盛り上がり、クライマックス、、、そういうモノをあえて避けているような作り方で、つまらなかった、かというとそうでもなくて、なるほど、と思わせるようなおもしろさがあった。コレを最後に芸術監督として3年間の任期を終わらされる鵜山仁サンの最後にふさわしい、世の中こんなもんよ的な深い味わいのある芝居。

話は反対闘争に学生運動として参加したオトコの家で展開する。オトコは闘争に加わりはしたがソレを続けることはせずに大企業に就職してもうすぐ定年を迎えようとしている。オトコの仕事は社内のリストラで毎日、誰をくびにするかを考えている。ソコに40年前に一緒に闘った、と相手は思っている二人が転がり込んできて、ソノ二人はその後もカツドーを続けていて農業で集団生活みたいなことをやっている。オレタチはブレてないぞ、みたいにして。3人は、オトコが闘争から離れていくときに、何が正しんだ、みたいなギロンになって、じゃあ40年後に再会して確かめ合おう、みたいな約束をしていた。でもオトコは今のシゴトにうしろめたさがあって二人には本当は会いたくなかった。でも無理やり転がり込んできた、って感じで、この辺はアベさんの友達のような展開。友達=エネミイというシソウが背景にある。

二人はオトコの家でフリーターの息子に農業やれ、みたいなっことを言ったり、ケッコン相手をパソコンで探している娘に、ホントのシアアワセはなあ、みたいな話をする。オトコのツマはフラメンコに熱中していてオトコの苦労など表面的にしかわかっていないのに、二人はツマのフラメンコで盛り上がる。
そういうのをオトコはいらいらしながら見ている。ジブンの生活に口を出すな、みたいにして。でも二人はフリーターの息子や結婚しないムスメを見て、お前が得たモノはこんなもんか、という。それに対してオトコは、カツドーを続けて、ソレで世の中が変わったかと二人に問いただす。
そういう争いを横目で見て、フリーターの息子はジブンには関係ないと思って、ナンで対立するのかと言う。息子はアルバイトのコンビニのシフト表作りを延々と続ける。そんなシゴトにどんな意味があるのかといわれて、まあいいんじゃない、みたいに最初は言うが、一度だけ感情をあらわして言う。この表の中のヒトたちにはそれぞれの生活があって、それぞれの生活を成り立たせるためにボクはこんなに苦労しているんだ、みたいに。
リストラが仕事の父とそういうことに苦労している息子は決定的に対立するが、その対立は表面には出てこないで、二人のオトコが家を出て行ったあとに夜が明けるように父と子の関係にもナニか、薄日が差すような感じがしてオシマイ。

徹底的に盛り上がらない。盛り上がったのは息子がシフト表のことでタダ1回ジブンの考えを言った時だけ。対立とかしない。そんなことしているほど今の世の中はのんびりしていないというような感じ。成田でなんであんなに対立したの、みたいな。今のジブンの生活でみんな精いっぱいでカツドーとか、農業で自立生活とか、逆に笑っちまう、みたいなことを言いたいような。
中間的存在としてのワタシにはハッキリ言ってカツドーしてる二人も、ジブンのまわりのことにしか関心がない息子も両方とも理解できない。会社でリストラのシゴトをして、ソレで得た給料でリッパな家を作ってカゾクを養って、ヨソモノに邪魔されたくないと思って、定年後の楽しみとしてヨーロッパ旅行に行こうとしていて、できれば息子と一緒に行きたいと思いながらなかなか言い出せなくて、それならそれで仕方がないとしか思わない、そういう妥協的ジンセイを送ってきたチチ親であるオトコだけに共感した。

2010.7.9、新国立劇場小ホールにて。コレもまだまだやっている。必見。