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■Finish and Begin 夕張市美術館の軌跡1979-2007、明日へ(2)

2007年03月26日 21時30分28秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
(承前)

斎藤清「初夏の舞」「さつきの会津」「地の幸(3)」「霊峰夕映え」
 会津生まれの世界的な木版画家も、幼少時は夕張に住んでいた。
 筆者は、雪景色とか古い町並みという印象があるのだが、「霊峰…」など、なかなかシンプルでモダンな作品だ。
 

泉秀雄「夕張発電所」「菊の花」
白江正夫「朔北(ノシャップ)」
 小樽在住の 道展会員で、ベテラン水彩画家。
 この作品は、2003年に市立小樽美術館で大規模な回顧展がひらかれたときには出品されていない。
 鉛色の曇り空、青と茶のトタンの描写などを通じて、北国の冬の厳しさがつたわってくる風景画の佳作だと思う。


森熊猛「戦陣訓」「総理大臣明治の譜」「大正時代総理大臣列伝」「総理大臣曼荼羅戦後譜」「昭和事件伝」
 2004年に95歳で長逝した夕張出身の諷刺漫画家。同年、この美術館で回顧展がひらかれている。
 「戦陣訓」は、末端の兵士が死ぬほどに勲章が増える上官を描く。痛烈な皮肉がこめられている。
 戯画的な似顔絵が多い中で、「昭和事件伝」の山宣(山本宣治)だけはシリアスな表情をしている。やはり、治安維持法改悪にほぼひとりで反対し、右翼の凶刃に倒れた代議士は、ちゃかせなかったのだろう。

渡辺俊博「夕張スケッチ」
熊谷知之「風のNAVI」
大宮健嗣「原野(風)」
藤野千鶴子「宙’94-2」
 藤野さんは札幌在住で、美術文化協会と新道展の会員。
 抽象画では道内を代表する存在のひとりだと思う。
 ふつう、年を重ねると、画面は大ざっぱになるものだが、この人の場合、近作のほうがはるかに細かい。
 十数年前はこんなに大まかな絵を描いていたとは、知らなかった。

よしだつとむ「○」
 墨象というか前衛書のような単色の絵画やインスタレーションを札幌で発表し、作風もご本人の容貌も仙人のような人だったが、そういえば最近とんと見かけない。お元気なんだろうか。

渡辺晃一「Five message from ADAM」
 おなじ大きさの、縦長の5つの支持体からなり、それぞれ別のアプローチで人間存在の根源に迫る力作。左端のキャンバスはエックス線写真、次いで油絵が2点、石膏の半立体、シルエット…で表現されている。
 男性は、イエスではないのに、はりつけにされているように見える。
 アダム、はりつけ…と連想していくと、筆者なんぞはすぐに、セントラルドグマの地下にロンギヌスの槍…と話があらぬ方にそれていくので困ります。でも、これ、80年代の作品。
 渡辺さんは福島大の教授。現代美術、絵画の制作とともに、「絵画の教科書」を編さんするなど美術教育にも力を入れている。

http://www2.educ.fukushima-u.ac.jp/~koichiw/index.html

江川博「冬の時代」
坂本順子「真谷地の魚」
 昨年55歳で亡くなった、アッサンブラージュや抽象画の作家。
 たぶん、夕張・真谷地でひろった何かを貼り付けて、エイのようなかたちに見せているのだろう。
 重厚な表現の人だったけれど、このかたちはどことなくユーモラスだ。


山内壮夫「労働のモニュメント」
 1907年岩見沢生まれ、75年歿の彫刻家による浮き彫り。
 もともと夕張の労働会館にあったものという。
 こういう、団結ガンバロー的というか、日本における社会主義への道的というか、労働者と農民は手を携えてブルジョワジーの支配を打ち砕け的な雰囲気というのは、いまの日本ではどんどん忘却されている。
 戦後いまほど、生活苦に追いやられているプロレタリアが増えている時代はないのにね。
 それはともかく、この彫刻家の姓は「やまのうち」というはずだが、このレリーフには「YAMAUTI」とサインがしてある。
 本人もどっちでもよかったんだろうか。


07年2月11日(日)-3月25日(日) 月曜休み(2月12日は開館)、2月13日・14日・3月22日も休み
10:00-17:00
100円(高校生以下無料)

(この項つづく)


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