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本郷新賞の公募賞切り替えを機に、北海道からのアート情報発信は求められているのかについて考える

2013年08月01日 22時54分10秒 | 新聞などのニュースから
 毎日新聞道内面や北海道新聞で相次いで報道されていたが、本郷新賞(札幌市、札幌市芸術文化財団主催)が、今年から「本郷新記念札幌彫刻賞」と名を改めるとともに、公募の賞とすることを発表したという。

 毎日新聞の記事はネットに公開されているので、一部を引用しておこう。

 本郷新賞は、全国の公共スペースに設置された作品から推薦で選考。しかし選ばれた作品15のうち13が市外に設置された作品だったことなどから、賞のあり方が検討されていた。

 本郷新記念札幌彫刻賞は3年に1回選考。若手芸術家の発掘と位置づけ、50歳未満を対象に未発表作品を公募する。作品は、2015年オープン予定の同市中央区の大通交流拠点地下広場に3年間展示し、受賞者の記念個展も開く。(以下略)

 毎日新聞の記事に補足すると「15点」というのは、これまで15回行われてきたということ。
 また「3年に1回」とあるのは、これまでの隔年に比べると間隔が広がった。これは、あるいは、国際芸術祭と頻度を一致させるという狙いがあるのかもしれないが、分からない。

 また、札幌市のサイトに、作品公募についてくわしく書かれている。PDFファイルです。

http://www.city.sapporo.jp/somu/koho/hodo/201307/documents/hongo-sin.pdf

 リンク先のPDFファイルによると、8月1日に応募を開始。
 図面、模型による2度の選考をへて、来年6月に結果が発表される。

 本郷新記念札幌彫刻美術館で受賞記念の展覧会を開けるというのは従来通り。時期は2016年4~6月の予定。

 賞については「受賞者には賞金100 万円(3年間の作品借用料を含む)が授与されます。また、本郷新記念札幌彫刻美術館での受賞記念個展を開催し、記念展覧会の作品制作費として50 万円が授与されます」とのこと。

 審査員は、酒井忠康氏(世田谷美術館館長)、建畠晢(さとし)氏(京都市立芸術大学学長)、植松奎二氏(彫刻家)、阿部典英氏(美術家)、佐藤友哉・札幌芸術の森美術館館長の5人。
 札幌在住が2人、道外が2人、道内出身で東京在住が1人(酒井さん)という、うまいバランスである。


 さて、ここでは、賞の転換についてどうこう述べるのが趣旨ではなく、このニュースをきっかけにちょっと考えたことを記しておきたい。

 筆者の印象では、本郷新賞というのは、パブリックアートを対象にした全国でも珍しい賞である。
 そして、受賞作の中には、じつは本郷のような具象系はひとつもない。コンセプチュアルな立体や、サイトスペシフィックな作品がとくに近年は多く、時代にあわせて進んでいる賞だといえるだろう。

 では、この、全国的にもユニークな賞の、全国的な知名度はどれくらいあるのだろう。あくまで例だが、山口県宇部市の「UBEビエンナーレ 現代日本彫刻展」などと比べてみたとき、どうなのだろうか。
 北海道にいると、そのあたりがいまひとつつかみきれないのだ。

 ただ、なんとなく感じるのは、北海道からのアート情報は東京や道外各地にはあまり届いていないのではないだろうか、ということだ。

 たとえば、上のほうでリンクを貼った毎日新聞の記事にしても「地方面」に載っている。
 道内だけを対象にした賞ではないのだから、それほど大きい扱いでなくて良いから、文化面に載せてほしかったと思う。
 そういえば、東川賞の記事も、朝日、読売、毎日各紙は北海道面に掲載されている。朝日が木村伊兵衛賞より大きくは扱えない事情は分かるけれども、ほんとは全国版の文化面に回すべきではないんだろうか。

 要するに、全国紙の北海道支社や道内テレビ局は、アートの報道や情報をあまり発信していないし、発信を求められていないのではないかと思う。
 テレビ・キー局が北海道に取材に来ないわけではない。しかし、彼らの取材対象は、あくまで「うまい食」「雄大な自然」であって、普通にモダンな芸術をとりあげようとしても、おそらく企画段階で没になってしまうのではないかと邪推する。

 われわれ北海道人が北海道のアートをアピールするには、なかなかハードルが高そうである。


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