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■IKURI TANAKA うるし作品展 (3月25日まで)

2007年03月23日 06時33分43秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 胆振管内白老町在住で、昨春、京都市立芸大を卒業したばかりの若手の田中伊久里さん。郷里にもどってきて1年の節目にひらいた、初の個展です。
 お正月のNew Point展にも出品していたようです。

 道内では、渡辺和弘さんが毎年道展で高水準のうるしの造形作品を発表していますが、すべて平面です。田中さんのように立体造形に取り組む人は、すくなくても筆者は知りません。彼女によると、京都市立芸大では立体やインスタレーションをやる人が多いということですが、とても新鮮に感じました。

 冒頭の画像のインスタレーションは、天井から吊り下がっている6点が「浮き浮き」。床面からぽこぽこっと出ている5点が「ウレシイキモチ」です。
 右側に、3羽いる「黒い鳥」のうちの1羽が見えています。
 光沢のあるつややかな表面は、うるしならではの感覚ですね。
 曲線が生きた、ライティングもあいまって、ユニークな空間がつくられています。

           
 これは、会場に入ってすぐのところにあるインスタレーション「雨漏り」。
 天井から7つのしずくみたいなかたちが下がり、床には28個のしずくが点在しています。
 このしずくは、石膏でかたちをつくったものに、うるしを塗布しているのだそうです。

 どうも田中さんは、天井からつるすのが、好きみたいですね。

         
 左は「みちる」、右は「夕暮れ」。
 粘土でかたちをつくり、木彫の乾漆と同じ技法で、内部を抜いてつくっています(したがって、じょうぶだけど、軽いと思います)。
 「夕焼け」は、一般的な褐色のうるしとはちょっとちがう、絶妙の色合いです。どこか郷愁をさそいます。
 これは、まず銀箔を貼り、表面をこすって模様を出した後、褐色のうるしを塗り重ねたのだそうです。

 画像はないですが「せっけん」という立体もありました(冒頭の画像の右端に小さくうつっています)。
 曲線がなだらかで、すてきな作品です。
「うるしの砥面(とめん)がどうやったらきれいに見えるかを考えたら、凹面よりも凸面のほうが光の反射がきれいなので、こういうかたちを考えました。表面の螺鈿の模様は、泡が浮かんで落ちていく感じを表現しました」

 うるしは、ひたすら塗っては削り取り-を繰り返す、たいへんな作業です。
 小さな作品でも数カ月かかるということです。
 その積み重ねの果てに、あの美しい光沢が生まれるのでしょう。

 田中さんは「わたしなんか、まだまだです」と謙遜していましたが「どうしてじぶんはうるしをやるのか、その理由というか答えはすぐには見つかりませんが、つねに模索しながらやっていきたい」と抱負を語っていました。
 田中さんの作品は、光沢はもちろんですが、自然な曲線もたいへん魅力的です。じぶんも緩やかな曲線みたいな、まろやかなきもちになってくるのでした。
 
 作品はほかに
「ト音記号の休日」
「やま」
「一人と一人」
「家猫」
など。
 

3月20日(火)-25日(日)10:00-18:00
コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階 地図C)


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2 コメント

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ぼく、ドラえもん (エゾ三毛猫)
2007-03-23 07:43:58
田中さんの個展は、空間そのものが持つ
不思議さを楽しめてよかったです。

個人的には、ドラえもんが受けました。
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Unknown (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2007-03-23 22:11:45
 エゾ三毛猫さん、ありがとうございます。
 たしかに、筆者も空間そのものの不思議さを楽しめたのですが、そのことを書くのをわすれていました。こっそり追記してあります。

 ドラえもん…。
 ちょっと、あの会場では浮いていた気もします。
 まあ、ちょっとひとやすみ、というか、ユーモラスなアクセントというとらえかたもできますが。
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