根室管内別海町で、酪農ヘルパーのかたわら写真を撮っている佐藤弘康さんの、札幌では初めてとなる個展。
乳牛を世話する家族の表情などが、モノクロとカラーでとてもいきいきととらえられています。
道内の人はご存じかと思いますが、酪農の仕事は早朝から乳搾りがあって、たいへんです。もっとも、早朝から夕方まで働きづめ-ということではないのですが、なにせ生き物が相手なので、1日も休むわけにはいきません。
これでは、旅行はおろか冠婚葬祭にも出かけられないので、留守にするときは「酪農ヘルパー」に仕事をお願いするわけです。
佐藤さんのインタビューが載った雑誌が会場の壁に貼られていました。
メモしたわけではないので細部に誤りがあったらごめんなさいなのですが、佐藤さんは山形県で生まれ、大学を卒業した後は東京でラボに勤めながら写真家を目指していたのだそうです。しかし、東京では良い題材が見つからない。あこがれだった北海道に旅し、牛乳が好きだったので道東に行き、ある酪農家に写真を撮らせてほしいと頼んだところ快諾され、それを機に、実習生として働くことになったとのこと。
慣れない力仕事で最初は大変だったけど我慢して働いているうち良い写真が撮れるようになったし、いまは冬の除雪以外は別海での生活を満喫している-というのです。
いやあ、いい話だなあ。
大都会でムシャクシャしてるやつらにきかせてやりたいよ、と思いました。
でも、佐藤さんもがんばったけど、見ず知らずの若者が、3日間写真を撮らせてくれと頼んできて、あっさりOKしちゃう道民のオープンさもいいなあ。
写真は、モノクロ32枚、カラー10枚。
赤ちゃんを背負って干し草の上で仕事する母親の奮闘ぶりをとらえた作品は、モノクロ写真らしいリアリズムに貫かれています。
一方で、仲むつまじい乳牛と猫とか、牛舎の中でふざけあうきょうだいたちとか、心あたたまる写真も多いです。
筆者が気に入ったのは、若い女性が牧場の看板を塗っている1枚。彼女の笑顔がすごくいいです。
作業している大人の写真が多いのはあたりまえとして、子どもたちもたくさん写っています。親の働く姿を身近に見て育つっていうのは、いいことですよね。
土門拳に代表されるような、労働の現場をリアリズムでとらえた組写真というのは、1950年代に全盛だった-というのが写真史の教えるところですが、そういう手法がすっかり用済みになってしまったわけではないことを、あらためて認識したような気がします。しっかりしたリアリズムでこそ浮き彫りになる現実というのが、あるんだなあと思いました。
もともと地元でない人の新鮮な目と、地元にとけ込んだ人の親密な視線。
佐藤さんはその両方を持っているのだと感じます。
都会の人に見てほしい写真展です。
08年7月23日(水)-27日(日)9:00-19:00(25日は-21:00)
札幌市資料館(中央区大通西13)
□http://www.satoeyes.com/
乳牛を世話する家族の表情などが、モノクロとカラーでとてもいきいきととらえられています。
道内の人はご存じかと思いますが、酪農の仕事は早朝から乳搾りがあって、たいへんです。もっとも、早朝から夕方まで働きづめ-ということではないのですが、なにせ生き物が相手なので、1日も休むわけにはいきません。
これでは、旅行はおろか冠婚葬祭にも出かけられないので、留守にするときは「酪農ヘルパー」に仕事をお願いするわけです。
佐藤さんのインタビューが載った雑誌が会場の壁に貼られていました。
メモしたわけではないので細部に誤りがあったらごめんなさいなのですが、佐藤さんは山形県で生まれ、大学を卒業した後は東京でラボに勤めながら写真家を目指していたのだそうです。しかし、東京では良い題材が見つからない。あこがれだった北海道に旅し、牛乳が好きだったので道東に行き、ある酪農家に写真を撮らせてほしいと頼んだところ快諾され、それを機に、実習生として働くことになったとのこと。
慣れない力仕事で最初は大変だったけど我慢して働いているうち良い写真が撮れるようになったし、いまは冬の除雪以外は別海での生活を満喫している-というのです。
いやあ、いい話だなあ。
大都会でムシャクシャしてるやつらにきかせてやりたいよ、と思いました。
でも、佐藤さんもがんばったけど、見ず知らずの若者が、3日間写真を撮らせてくれと頼んできて、あっさりOKしちゃう道民のオープンさもいいなあ。
写真は、モノクロ32枚、カラー10枚。
赤ちゃんを背負って干し草の上で仕事する母親の奮闘ぶりをとらえた作品は、モノクロ写真らしいリアリズムに貫かれています。
一方で、仲むつまじい乳牛と猫とか、牛舎の中でふざけあうきょうだいたちとか、心あたたまる写真も多いです。
筆者が気に入ったのは、若い女性が牧場の看板を塗っている1枚。彼女の笑顔がすごくいいです。
作業している大人の写真が多いのはあたりまえとして、子どもたちもたくさん写っています。親の働く姿を身近に見て育つっていうのは、いいことですよね。
土門拳に代表されるような、労働の現場をリアリズムでとらえた組写真というのは、1950年代に全盛だった-というのが写真史の教えるところですが、そういう手法がすっかり用済みになってしまったわけではないことを、あらためて認識したような気がします。しっかりしたリアリズムでこそ浮き彫りになる現実というのが、あるんだなあと思いました。
もともと地元でない人の新鮮な目と、地元にとけ込んだ人の親密な視線。
佐藤さんはその両方を持っているのだと感じます。
都会の人に見てほしい写真展です。
08年7月23日(水)-27日(日)9:00-19:00(25日は-21:00)
札幌市資料館(中央区大通西13)
□http://www.satoeyes.com/