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■水脈の肖像09-日本と韓国、二つの今日 (2009年12月13日で終了)=3

2010年01月17日 21時19分27秒 | 展覧会の紹介-現代美術
承前

 引き続き、出品者でもある谷口明志さん撮影の写真から。

 冒頭は、金貞旭(Kim,Jung-work)の、Koreaninkと韓国紙によるドローイング。
 なにか人物の二重性を表現しているらしい。
 夢と現実、あるいは社会性と幼児性…。




 前項でも紹介した崔美娥(Choe,Mee-ah)さん「救出装備(Rescue Equipment)」。
 自然を破壊するものであり命を助けるものでもある道具の両義性を、変化の激しい韓国社会に思いを寄せながら制作したものであろう。




 李玄珍(Lee,Hyun-jean)「Bridge」。
 今回は映像だけだったが、実際に韓国で展示されたときは、映画「マディソン郡の橋」に登場するような屋根が付いた木の橋の上から、映像の水面を眺めるという趣向だったらしい。
 映像自体は、縦長で、自然が残されているさほど大きくない川で、子どもたちが石を連ねた橋をこしらえて、そこで遊んでいるという、心和むもの。
 柿崎さんから指摘されて初めて、川の真ん中で遊んでいる子どもたちの映像と、水面に反射する映像とがズレを生じていることに気がついた。
 何を意味するのか…。

 このほか、韓国勢では、紙で大量のチマチョゴリ(韓国の民族衣装)を作った李惠暎(Lee,Hye-young)「Mother's dress」、子どもたちと遊び道具の写真を撮った尹丁美(Yoon,Jeoung-mee)が目を引いた。
 後者は「The Blue project II -Jake and his Blue Thing」「The Pink Project II Maia and Her Pink & Blue Things」などと題された大型のカラー写真。なぜ男児の持ち物に青が多く、女児はピンクなのか。日本と同じようなジェンダーの問題をひそませていると同時に、男児のスポーツのコレクションがメジャーリーグなど米国関係のものばかりであることを示し、文化あるいは表象の圧倒的な「入超」状態を皮肉っているようだ。


 あんまり一般化はしたくないし、するべきでもないと思うのだが、こうして見てくるとやはり、韓国勢の方が、現代社会とは何か、自らのアイデンティティとは-と、真剣に問うているのに対して、日本勢は社会と向き合うというより、どこか素材と戯れているような傾向があるようだ。
 どちらが優れているということではないのだが、やはり日本の方がまだ「平和」なのかもしれない。

 触れることのできなかった作品が多数あるが、展覧会が終わって1カ月もたっているので、いちおうここらへんでアップしたい。
 谷口さんをはじめ関係者のみなさんにはお世話になりました。ご協力に感謝します。


(この項おわり)

2009年12月5日(土)-13日(日)9:30-5:00(入場-4:30)月曜休み
道立近代美術館(中央区北1西17 地図D


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