北海道美術ネット別館

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伊藤光悦展(8月12日まで)

2006年08月11日 20時35分44秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 近年は、空から見た空港をモティーフにしている伊藤さん(北広島在住)。空港といっても、飛行機の姿はなく、ビルは廃墟のようで、がらんとしています。冒頭の画像の「Airport 「take off」」は、爆撃の跡のような穴が、滑走路のあちこちにあいています。快晴の空と、乾いた大地の、まるで人類が滅びた後のような飛行場の対比が、鮮烈です。
 この穴は、1970年代にラオスからベトナムにかけて走った時に見た北爆(ベトナム戦争時の米軍による対ベトナム爆撃のこと)の跡だそうです。見たときは衝撃でしたが、そのままでは絵にはならないので、ずっと温めてきたとのことでした。
 ところで、この絵の右下に、船が座礁したように描かれているのにお気づきでしょうか。


 その船が発展して、この「NOAH」になりました。
 モティーフになっているのは、箱舟ではなく、タンカーです。それも、陸地に揚がって、うち捨てられ、甲板が土でおおわれています。
 黙示録的な光景ですが、作者によると、アフリカなどに、船が陸地で放置されているところが、実際にあるそうです。
 現実にある風景だといわれれば、なるほどと思うのですが、それにしても、箱舟が座礁して陸地にあるというのは、最後の希望さえついえてしまった光景の比喩のようで、暗然たる気持ちにさせられます。船の周囲は荒涼として、ほかにほとんど何も描かれていないだけに、なおさらです。(きっと、いろいろ描きこめば、安っぽいSFのイラストみたいになってしまうんでしょうね)


 今回の個展は、伊藤さんにはめずらしく人物が描かれている作品があります。
 上の写真で、手前にうつっているのは「国境からの道」。
 そういえば、今回は、道をテーマにした小品が多いです。
 少年がはだしでほこりっぽい道に立っているのが、臨場感がつたわってきます。
 30年ほど前にタンザニア国境で見た光景が元になっているということです。
「ほんとうは背後にいっぱい人を描きたかったんだけど、体力がなくて」

 ほかに作品は
「初夏の丘」
「駒ケ岳夕暮れ」
「カムイ」
「子羊」
「Peru Railroad」
「道」
「帰り道」
「Run way」
「アンデスの村」
「アンデスの遥かな道」
「聖なる谷の村」
「RUNWAY 1945の記憶」
「空の底に」

 伊藤さんは二紀展委員、道展会員。
 春先に病気をされたそうで、だいぶやせられましたが、これからは団体の雑務は若い人にまかせて、無理のない範囲で絵筆を執りつづけてほしいものだと思いました。

8月7日(月)-12日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A

■2002年の個展


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