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美工展(4月23日まで) 押花が増加し、作品も多様に

2006年04月20日 22時57分28秒 | 展覧会の紹介-工芸、クラフト
 北海道美術工芸協会の「美工展」は、道内でただひとつの、工芸だけの公募展です(道展と全道展には工芸部門があります)。事務局長の高木晶子さんにお聞きしたところ、ことしは出品点数が99点と、例年より10点ほど減った上に、大作も少ないとのことでしたが、ジャンルの多様さと作品の幅の広さはあいかわらずで、楽しく見ることができました。
 また、ことしは、押花が17点にのぼり、これまで最多の分野だった陶の16点を上回りました。習い事のなかでもブームなのでしょうか。道展や全道展で入選実績がないことも応募を増やしている理由かもしれません(両展が門前払いをしているわけではないと思われる)。
 内容を見ても、
一般的な押花のイメージの逆を行き、地味な色調でまとめた多比良桂子(砂川、会員)「風化」、
材料の花を集めるだけで3カ月かかったという労作の岩本紘子(札幌、会友)「燃ゆる想い」、
葉だけを使って花を表現し、奨励賞にえらばれた雑賀赫子(釧路、会員推挙)「彩りに癒されて」
渋い色調が魅力の桑原英里子(美唄、一般)「回想」
パプリカやおけらなど野菜をフル活用し、大きなろうそくの絵に仕立て上げた田中静子(札幌、一般)「聖夜」
押花作品を手製の木のテーブルにはめ込んだ松村ケイ子(上川管内南富良野町、一般)「つどい」
など、バラエティに富んでいます。
 それにくらべると、陶芸は、それぞれうまくまとめてはいますが、あまりバリエーションが感じられないのも正直なところです。その中では、山谷智子(会員、札幌)「天(そら)へ」が、元気のあるフォルムで、独自性を発揮していました。
 また、佐々木義正(札幌)が「霧の連山」で新人賞を受賞しました。
 協会賞は、織の、永原智恵子(札幌)「天空の道あかり」がえらばれました(下の写真)。黄色く伸びる帯は天の川でしょうか。ロマンティックな作品です。


 織では、畠山祐子(札幌、会友)「六花(りっか)」が、雪のかたまりをイメージした大胆な造形でした。三浦千津子(千歳、会友)「影」は、この展覧会ではめずらしい伝統工芸的な作品(たぶん、絣)。渋い色合いです。丸山百代(札幌、一般)「朝やけ」「夕やけ」も地味ながら、グラデーションの美しい作品。
 染色は12点で、3番目に多かったのですが、かつて出品していた若手の姿が見られないのは残念。一方で、佳作賞に輝いた篠木正幸(江別)「ニセナナホシテントウムシダマシ」の都会的センス、新人賞の藤井映莉(北広島)「鯉」などが、新しい世代の登場を印象づけました。藍染め「出逢い“咲く”」の斉藤麗子(伊達)は、七宝ではすでに会友になっており、珍しい2分野での出品です。
 組紐は6点。細谷緋紗子(会員、札幌)「忠信」は、折り曲げると「戌」という文字が浮かび出る変り種の作品。中村玲子(会友、帯広)「時空」は、赤と緑の対比がまばゆいです。
 人形が10点と、活況を呈しています。
 和紙人形「若き日の毘沙門天」を出品した木村藤(札幌、会員)はことし87歳だそうですが、年齢を感じさせない元気な作品。人形としては大作の鈴木美恵子(千歳、一般)「道化師」は、革の質感がよく表現できています。
 橋本紀比古「あまがつ」(札幌、会員)は、人形を抽象にしたような作品で、この作家は人形づくりの根源を考えていることをうかがわせました。



 籐も力作が集まりました。
 空友子(札幌、会員)「希望」は、大小の球体があちこちから下がった塔のような形状が独特。
 織田幸子(同)「Ripple(さざ波)」は、緑の縞模様に染め上げられています。
 中原広子(同)「想いII」も、くしゃっとまとまったような形が面白い。
 新海きよ子(北広島、会員)めくれあがったような形が目を引きました。
 ただし、6点すべてが会員作品で、新しい顔ぶれの登場が望まれます。

 和紙は5点で、宮森恵子(札幌、会員)「花舞い」は80号相当の大作ですが、例年は100号を出している人だそうです。ふわーっとした夢幻的で装飾的な画面が心地よいです。
 皮革も5点。高木晶子(同)「’06-作品1」は、シャープかつ力強い造形です(冒頭の写真手前)。中江キヨノ(恵庭、一般)「愛馬」は、丹念に馬を、レリーフ調に仕上げています。
 このほか、ガラス、金工、刺繍、ボビンレース、木工、木彫、その他(桐そによる絵画)の出品もありました。

第33回美工展 4月19日(水)-23日(日)10:00-18:00(最終日-16:00)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6 地図G)

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