外山さんは函館在住の画家。
道南の画家は、函館や東京では作品を発表しても、札幌では意外と展覧会の機会が少ないのですが、外山さんは毎春かならず札幌時計台ギャラリーで個展を開いています。
4月下旬に札幌市民ギャラリーでひらかれる北海道抽象派作家協会展では、個展で発表した100号の大作を並べ直して展観するのが通例です。
外山さんがモティーフにしているのは、アルファベット。
「A」でシリーズを始めて、11年目のことしは、ついに「K」まできました。
これまでも書いてきたことですが、風景や人物を描いている絵には親しみを持てるのに、抽象的な絵は敬遠してしまう人がいます。
まして、アルファベットを描くなんてなんの意味があるんだ-と思う方もあるでしょう。
しかし、対象に意味がなければいけない-というのは、いささかきゅうくつな考え方ではないでしょうか。
あなたが着ている衣服のチェックには、「意味」はありません。
フランスの写実主義の画家クールベは、故郷の名もない農民の葬儀の模様を大作に描き、物議をかもしました。
それまで、葬儀の絵に描かれるのは、神話の英雄や、王族などが多かったからだといいます。
偉い人について描いていれば偉い絵で、農民を描いていれば貧乏くさい絵だというのであれば、ミレーの「晩鐘」は駄作ということになってしまいます。
問題なのは、「何」を描いているのかということではなく、「どう」描いているかということではないのでしょうか。
上の画像は、外山さんが出品作でいちばん気に入っているという作品。
つぎは、筆者が最も心地よいと感じた作品です。
非常に安定した構図だと思います。
今回は、つぎの「L」が単純な形状であることを見越して、初めて、直線による構成を試みたということです。
毎年、5号程度の小品をエスキスがわりに制作したあと、100号クラスを12点描きます(今回の個展ではそのうち10点を展示)。
レモンイエローの線は、筆を走らせるのではなく、キャンバスを傾けて、絵の具を流れさせることで描きます。
今回は直線を導入したら
「キャンバスを斜めに持たねばならず、背伸びしてもうまく持てないんだ。油の皿を持ちながらだから、タイヘンで、腰を痛めたよ」
とのこと。
ところで、抽象派作家協会展でどういう組み合わせにしようかを考えてから、個々の絵の制作に乗り出すということを、今回初めて知りました。
いままで、100号を、アドリブもまじえて描いたあとで、「さて、どうやってならべよう」とアタマをひねっているものだとばかり思っていたので。
今回は、「K」ということで、或る物をかたどったような並べ方になるそうですが、ネタバレになるので、抽象派作家協会展の際に書くことにします。
緑の部分は、絵の具と油分が分離して、おもしろい表情をしています。
直線の絵のほうが、やや明度が高いのは、「直線だと硬くなるので、緑を明るくした」のだそうです。
さすがベテラン、大胆な自由さと、細心の注意が同居しているのだなあと、感服しました。
08年3月30日(月)-4月5日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
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