北海道美術ネット別館

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■アジアプリントアドベンチャー(8) 公開シンポジウム

2008年07月10日 22時27分57秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 7月6日15:00-17:00、メーン開場の音威子府村公民館でひらかれた。
 テーマは「世界のアート環境」。
 どうとでもとれるテーマで、美術の発表や制作がしやすい環境だとか、そういう話にも展開できるし、さいきん話題の環境問題の話もくくれる。
 もともとひとつの結論を出すようなシンポジウムでもないし、いろんな話がばらばらに出たのは、むしろ良かったのではないかと思う。

 司会は、アジアプリントアドベンチャーで、矢崎勝美代表をのぞけば唯一、第1回から「皆勤」の美術家、荒井善則さん(旭川)。
 パネリストとして、帯広の池田緑さん、ベトナム出身で小樽在住のダム・ダン・ライさん、韓国・済州島の高吉千さんが出席。当初は参加する予定だったインドのユスフさんは、ビザの関係で入国できず、急遽(きゅうきょ)ピンチヒッターとして、ユスフさんの通訳者を務めるはずだった研究者のサカイさんが加わった。

 池田さんは、十勝の現代アートが、「帯広の森」の間伐材を活用できないかというところから出発したことを報告。
 1997年の帯広の森アートキャンプに始まり、98年の札内川流木アートキャンプには10000人もの来場者があったことを話す池田さんは、少し誇らしげに見えた。

 ダムさんは、自ら中古家屋をアトリエに改造した経験や、ベトナムの食文化について語り「これからもベトナムのアートを紹介したい」と語った。
 また、伝統文化で、近年盛んになっている漆工芸についても解説していた。

 高さんは、済州島で取り組んでいる「湿地展」について、映像をまじえながら紹介。
「韓国は開発優先の意識が強い。一生懸命環境問題に取り組んでいる日本人の姿に感銘を受けた」
と言い、拍手を受けていたが、ちょっと買いかぶりというか、面はゆい気がした。

 高さんの発言でショックだったのは
「済州島は『三多の島』といわれる。風、石、女性が多い」
というもの。
 女性が多い-というのは、どうやら、1948年の「4・3蜂起」後の弾圧が過酷を極め、男が多数虐殺されたためのようなのだ。
 ちょっとことばを失ってしまった。

 インド研究者は、アートではなく哲学思想が専門ということなのだが、インドの現代美術に伝統的な世界観が今なお色濃く反映している事情を語って、じつに興味深かった。
 ただ、インドでは社会諷刺的な作品の発表はまだむずかしく、地元有力者が展覧会を荒らしに来たり、アーティストがイスラム原理主義者から死刑宣告を受けたり-ということが実際にあるそうだ。
 さらに
「版画ビエンナーレとか展覧会といっても、しょせん会場に来るのはアッパーエリート以上。いくらインドの経済が成長していても恩恵を受けているのは上層の人だけで、ふつうの階層はアートとは無縁」
と言い切られると、うーむと考え込んでしまった。

 前の晩あまり眠れなかったので、眠くて暑いシンポジウムではあった(すいません)が、いろいろと考えさせられた。


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