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北海道美術ネット別館

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■鈴木悠高展 The following world of evolution (9月15日まで)

2007年09月14日 17時49分53秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 
 札幌時計台ギャラリーのような、複数の部屋のある会場で作品を見ていると、入ってきた人がすぐにきびすを返して出ていく-という光景に出合うことがよくある。
 とくに、抽象画のときが多い。
 抽象画が世に出てからもう1世紀近い年月がたとうとしているのに、食わず嫌いの人がまだこんなにいるという現実に、あらためておどろかされる。
 じつにもったいないことだ。
 筆者はひとつの提案をしたい。
 じぶんにとって「わけのわからない」作品であっても、とりあえず1分は、その前に立って凝視してみること。
 いや、30秒でもかまわない。
 すべての抽象作品がそうだと言うつもりはないけれど、すくなくても鈴木さんの絵は、最初はよくわからなくても、じっとガマンして見つめているうちに、なにかしらの感興がわきおこってくる作品だと思う。
 「イメージの起爆剤になればいい。時間をかけて見ることで何かが浮かび上がってくれば」
と鈴木さんは話す。
 起爆剤。
 つまり、抽象画は、見てそこからなにを想像してもよい。
 抽象は、自由なのだ。

 作品は5点。
 「yellow1」から「yellow5」とナンバーがふられ、いずれも題の通り、黄色を基調とした油彩だ。
 色の主調をそろえることで、「インスタレーションのような、会場の統一感をつくりたかった」という。
 すべて正方形のS50号。ただし、冒頭の画像の「yellow5」だけは、S50号を横に2枚つなげている。

            

 黄色といっても、たとえばイブ・クラインやバーネット・ニューマンのように、おなじ色が平滑に塗られているのではない。
 よく見ると、色の暗いところ、明るいところがまだらになって、いろいろな模様が浮かび上がってくる。
「じぶんとしては『yellow5』がすき。2枚ならべることで、ハイライトが3カ所に生まれているのがいい」

 下地にはセピアなどを用い、何度も塗りを重ねている。
 「チタニウムホワイトはあえて使わなかったので、暗くならないように苦労しました」
 かたちの定まらない明暗がひそかに織りなすドラマ。
 見る人によって、かたちは、刻々と変わっていくかのように見える。
 まさに、抽象の本道をゆく作品群だと思う。

 最後に、個展のタイトルについて尋ねてみた。
「進化の後の世界」
という意味なのだそうだ。


07年9月10日(月)-15日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A


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5 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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0.2秒 (taku)
2007-09-15 12:33:43
「わかりやすい」のが流行っているから、見る人に考えさせるのは良くないらしい。
・・・ほんとにそうなのかな?と、最近思っています。
広告デザインの話ですが。
人が広告を見ている時間は、わずか0.2秒だと言われます。
その間に伝わる情報量には限界があるはずです。
そもそも広告とか絵なんて、誰も見てくれないもの。
そう思ってつくらなければ、本当に誰も見てくれません。

わからないから「確かめたくなる」か「すぐ出て行く」か。
僕も抽象画をサッと見てすぐ出て行くので、0.2秒ならまだしも、30秒、1分間凝視しているなんて、おそらく永遠に感じるでしょうね。
良い悪いは置いといて、今度やってみようかな。
その先に何が見えるか。
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Unknown (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2007-09-15 21:09:42
むつかしい問題ですね。
いい作品かどうかは一瞬でわかる、というのも、事実でしょう。

広告と、アートは、受容のされ方が違いますし。

ただ、あらゆるものが0.2秒で処理される世界って、なんだかつまらないと思うのです。
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Unknown (Unknown)
2007-09-15 22:50:50
広告は、いかに早く商品の名前とコンセプトがわかるように、デザインして、理解させる必要性がある。

絵画(特に抽象)は、情報を受け取り、理解するものではなく、
情報を見て、情報を感じ、共鳴して好きになったり嫌いになったりするもの

そこが絵画と広告の違い。

ゆえに、絵を見るときは30秒又は1分以上眺めることが必要なのかもしれませんね。
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Unknown (taku)
2007-09-15 22:57:25
たしかに、0.2秒で処理される世界はつまらないですね。
そのつまらない世界を少しでも良く・・・と奮闘中のこの頃です。
いろんな人(本当の意味でいろんな人)が見に来る時代にしたいです。
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広告 (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2007-09-16 22:35:08
広告は、たしかに0.2秒の世界かもしれませんが、見る人が
「あれ」
と立ち止まる広告というのもあると思います。
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