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伊藤隆道展(5月14日まで)

2006年04月09日 06時32分57秒 | 展覧会の紹介-彫刻、立体
 きれいにみがきあげられたステンレスのパイプがぐるぐる回転して光を反射する「動く彫刻」で、国際的に活躍する伊藤隆道さん(1939年札幌生まれ。東京藝大教授)の展覧会です。道立近代美術館の前に「回転螺旋・一月」(上の画像)があるので、ご存知の方も多いでしょう。会場には、同様の作品がメーンで展示されており、あんまりむつかしいことを考えなくても「わー、きれいだなあ」と、ラクに見られる展覧会です。
 札幌のホワイトイルミネーションのツリーもこの人の作品だそうです。いまや冬のイルミネーションは日本中でおこなわれていますが、その発端をつくった人といえるかもしれません。

 回転する螺旋形ってふしぎですよね。回転の方向によって、上昇していたり、下降していたりするように見える。上昇しているように見えるものは、作品の上の端で、金属の線が空中に消失していっているように感じられる。反対に、下降しているタイプの作品は、作品の上の端で、まるで空中から、光る線が絶え間なく生成しているように見えます。
 「わかれる光」は、螺旋の途中で折れ曲がっているので、上の空間と、作品の基底部から同時に生まれ出てくる金属の線が、途中で合体しているようにも思えます。
 ブランクーシがやりたかったことは、案外こういうことだったのかもしれないなあ、なんて思いました。
(註:ブランクーシは抽象彫刻の創始者。螺旋形の「無限柱」という作品がある)

 螺旋形を見ていると、金属がやわらかいものにだんだん感じられてくるからふしぎです。
 ステレンスじゃなくて、ゴムホースとか、水の流れのようです。

 単純にきれいなのが「S・動く面」。
 ステンレスのS字が光を反射して、色とりどりのS字模様が天井で回転する夢幻的な作品でした。
 この美術館でこれほど天井を活用した作品もめずらしいのではないでしょうか。

 出口附近にあった「上昇・下降」は、9対の螺旋が回転する向きをときどき変えるので、ずっと見ていても飽きません。
 
 ところで、図録の話。
 写真が中心で、論文はひとつもありません。
 それはいいのですが、写真の質が不ぞろいなのは惜しいです。
 それよりびっくりしたのは、55ページの、ホワイトイルミネーションの写真が、裏焼きであることです。
「だから中国なんかで印刷するからだ」
とは言いませんが、みっともないですね。

4月5日(水)-5月14日(日)
道立近代美術館(中央区北1西17)
一般1000円、高校・大学生600円、小中学生400円。これくしょん・ぎゃらりいとの共通券あり


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (SH)
2006-04-09 14:58:16
ヤナイさん、こんにちは。

私も土曜日、早速行ってきました。



私の物理心は「単に二次元平面状を回転してるだけだって」と思うのですが、光の効果でどうみても上昇/下降しているように見えるのですね。



最後の「上昇・下降」はしばらく見入ってしまいました。ああいうものを見ると、私は法則性を見つけたくなってしまうのです。
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版下入稿? (エゾ三毛猫)
2006-04-09 21:28:01
>「だから中国なんかで印刷するからだ」

>とは言いませんが、みっともないですね。



裏焼きの原因はわかりませんが、

入稿段階のポジ指定でトチッたのかも知れませんね。



いつも入り口で見慣れているので、

今ひとつお金を出して入る気にはなれません。

タダのギャラリーに馴れた貧乏性でしょうか。



関係ありませんが、コンカリーニョって

来月オープンするんですね。



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Unknown (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2006-04-09 23:59:14
>SHさん

わたしも気になって「上昇・下降」をずっと見ていました。

十字形に位置する螺旋が、四隅よりも早く次の動作に移るというパタンが多かったような気がします。



>エゾ三毛猫さん

あはは、「入り口で見慣れている」っていうの、わかります。でも単純に楽しい展覧会ですよ。



わたしが裏焼きで許せないのは、ネオンサインの文字が逆さになっていることがすぐわかることです。中国人のくせに漢字が読めないのかなあ。
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