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越澤満風景画展(11月5日まで)

2006年11月05日 04時02分23秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 道展会員で、「グループ環」メンバーでもあるベテランの風景画家、越澤満さんの個展。25点の油彩は、6-8号がほとんどで、10号を超えるものは1点もない。
 「なんだ、小品展か」と思ったが、見ていくうちに、名状しがたい寂寥感というか、さびしさのようなものを感じた。
 風景画に描かれているモティーフから、作者の、あるいは鑑賞者の心理を読み取るのは、かならずしも正しい鑑賞法とはかぎらない。でも、今回の作品の多くは、ご健筆をふるっていらっしゃるご本人には失礼にあたるかもしれないが、「老年の境地だなあ」と筆者には感じられたのだ。

 たとえば、案内状に印刷されていた「春国岱・晩秋」。
 春国岱(しゅんくにたい)とは、道東・風蓮湖附近の砂洲だが、絵では、茫漠とした湿原と、黒々とした木々、その向こうに落ちるレモンイエローの夕日が描かれている。
 人はもちろん、鳥の姿もない。これで、雪に覆われていれば、またちがった感じなのだろうけど。
 なんという孤独だろうと思った。

 となりに陳列されていた「岬への道」も、「春国岱・晩秋」よりは明るいが、緑の中の一本道が、旅愁のようなものを漂わせる。

 「幌加内晩秋」もさびしい。
 赤茶けた近景は水田だろうか、ソバ畑だろうか。わらのようなものがところどころに積んである。中景には山吹色の帯が描かれ、その上には、すっかり葉の落ちた木々がならんでいる。木立の間には緑の屋根(政和温泉か)が見えるので、「春国岱」ほど、人跡未踏の感じはないとはいえ、やはり人の気配のすくない、寂寞としたものを感じる。
 空はやや濃い青で、日没後の感じがよく出ている。
 春国岱も幌加内も、とりたてて観光地とか名勝という土地ではない。だからいっそう、旅のさびしさが漂う。

 「水溜りのある風景」は、北大の農場だろうか。
 題名のとおりの、とりたててなんのへんてつもない景色なのだが、斉藤茂吉の叙景歌を思わせる、しみじみとした境地があるように思われる。
 「遠い日」は、放置された農業用の車の車輪がモティーフだ。

 もちろん、なかには「白樺と赤い屋根」「然別湖への道」といった、彩度の高い緑をふんだんに配した明るい絵もある。
 しかし、全体から受ける印象は、寂寥感と旅愁である。
 越澤さんは一貫して道内各地の風景をモティーフとして描いているが(サハリンを描いた作品もあるが)、以前はこんな感じではなかったと思う。
 また、すべての風景画家が、年を重ねると、さびしい絵を描くわけでもない。
 しみじみと心に迫る個展だった。

10月31日(火)-11月5日(日)10:00-18:00(最終日-17:00)
スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図B)


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