北海道美術ネット別館

アート、写真、書など展覧会の情報や紹介、批評、日記etc。毎日更新しています

利尻富士の四季の美をとらえた村上将示郎写真展(4月21日まで)

2006年04月19日 00時11分24秒 | 展覧会の紹介-写真
 今週はネイチャーフォトの写真展に、見ごたえのあるものがありました。
 なかでも挙げておきたいのは、利尻富士町でDPE店を営みながら利尻富士を撮影しつづけている村上将示郎さんの、3年ぶりの個展です。
 地元で毎日のように見ながら暮らしている人ならではの視線で、山がとらえられています。
 3年前に筆者が感嘆した「水鏡北斗星」、おんなじ写真かどうかわかりませんが、今回も出品されています。
 くりかえしをいとわず説明すると、利尻富士の上に北斗七星が輝き、手前の湖面に星の光が反射している写真ですが、これはめったなことでは撮れない1枚なのです。まず、波があったらだめ(この時点で、日本の海や川ではまずむり)。水が濁っていてもいけません。北斗七星が上向きになるのは秋の夕方だけ。しかも、秋田県以南では地平線の下に隠れて見えません。さらに、月明かりが山容を照らしている必要があり、それも満月では明るすぎて小さな星が見えなくなってしまいます。その上、数十秒-数分の露光で星がちゃんと撮れるような晴れた暗い夜空でなくてはならないのです。こんな条件を満たす「時」というのは、なかなかないと思います。
 湖面の反射を利用した作品として「たそがれ」もあります。空にはフレームインされていないあかね色の雲が水面に見えるのが、気が利いています。湖と岸の間に細い帯のような光が見えるのも、すばらしい。
 一方、「月光」は、星は写っていませんが、月明かりに浮かぶ山塊が幻想的な1枚。
 ほかにも、紫色の空が美しい「ララバイ」、雪が消え残った山肌の模様がユニークな「
猫の顔」、山はぼけさせて手前の花を引き立たせた「エゾカンゾウ」「クロユリ」など、美しい写真が、計28点。
 案内状の写真は「冬のポートレート」。遠くから見るとなだらかな利尻富士も、山頂附近は猛々しい表情を持っていることがよくわかる1枚でした。 
 ネイチャーフォトに興味のある人はぜひ見てほしい展覧会です。

クリエイトフォトギャラリー(中央区南1西9 札幌トラストビル 地図C) 日曜・祝日休み
4月10日(月)-21日(金) 9:00-19:00、土曜・最終日は-17:00

■2003年の個展 


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
現実と水鏡の像 (川上@道都書房)
2006-04-22 02:46:47
最終日に見てきました。



「水鏡北斗星」の写真を見ていて、空にある無数の星々に比べて水に映る北斗星の姿は、当然天地が逆になっているのですが、現実界の意識が空として、水面に反射する整理された星は、心のフィルターを透した作者の美意識を感じました。

あるいは天空が現実世界として水面の像は作者の思いを寄せる自然の有り様を映しているのかも知れません。

撮影技術の困難やチャンスというものを度外視しても一枚の写真から作者の「空(くう)」の意識を感じました。



ちょうど、利尻出身で現在札幌在住という女性がお二方、作品を購入されている所をみて、利尻という自然が人々の意識の奥深くに記憶される美しいものであるという事を再確認致しました。

私のワイフの母親は小樽出身ですが、幼い頃海産物商の父親と一家で利尻に移住したという話を何回もしていたことを思い出しました。

返信する
小樽と利尻 (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2006-04-22 23:05:23
定期船が走っていて経済的なつながりも稚内とおなじくらいあったと聞いています。何年か前に廃止になってしまいましたね。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。