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サンフランシスコ・SFMOMAで伊藤隆介作品を見る

2009年10月02日 22時00分26秒 | 展覧会の紹介-現代美術
承前)

 以前予告した「おわび企画」である。

 SFMOMA(サンフランシスコ近代美術館)では、いろいろな催しを行っており、この「サンフランシスコ・シネマテーク」もそのひとつ。もっとも、シネマテークは、あちこち会場を変えて開催しているようだ。
 この日は
「Measurement in the Impermanence:Contemporary Japanese Avant-Garde Film」
というものだが、こんなむつかしそうなプログラムに100人を優に超す人々が集まるのは、すごいと思う(悪いけど、札幌では考えられない)。
 ただ、上映作品は、トロントに巡回してきたイメージフォーラム・フェスティバルあたりから選んできたようなのだが、抽象的かつ難解な作品が多くて、2時間見ているのはいささかつらいものがあった。たとえば、「ハコトリ」で上映していた田口行弘さんとか、伊藤隆介さん門下の佐竹真紀さんの作品などもあれば、見ている人はもうちょっと安らいだ気分になったのではないかと思う。

 伊藤隆介さんの作品は「A Flat,Split Reel」(2008)。
 明示はされていないが、長年とりくんでいる「版」シリーズのひとつとみていいだろう。

 ここで作者が強調しているのは、ひとことでいうと、フィルムそのものの物質性である。
 映画においては、フィルムに写っているものがすべてであることが大半であり(あたりまえなんだけど)、フィルムそのものが厚さや重みを有していることに着目する人はほとんどいない。
 作者は既成のフィルムをつぎはぎし、パーフォレーションなどもそのまま取り込むことで、あらためてフィルムのマテリアル性を強調している(それは、木版画などで、版木に注意するのとよく似ている)。
 今回の作品は、毛虫が葉を食うところのクローズアップとか、ロボットアニメの一場面とか、老人のニュース映像とか、戦前の米国フィルムらしき水着姿の女性の後ろ姿などが、ランダムにつなぎ合わされており、フィルムのこすり合わさったような音とあいまって、独特の印象を与える。
 というか、今回のラインナップは、抽象の底に叙情をたたえたものが多かったので、隆介さんのは、方法論的に非常にしっかりしたものだという感じがした。

 しかし、札幌在住の映像作家の作品をサンフランシスコで見るなんてなあ…。

 終わりのほうで、石田尚志(たかし)さんの「inclined Horizon」が上映された。
 これは、2007年の作で、こないだtemporary spaceで見させてもらったものよりも前の作になるが、こま撮りアニメーションの技法を応用して、長期間にわたり壁に絵を描き、それが動いていく画面の美しさには、脱帽するしかない。


この項続く)


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