やまねこマッサージ

ねがうこと、ゆだねること

聴力を失った作曲家・佐村河内守

2013-03-31 | art
NHKスペシャルで佐村河内守さんという作曲家を知る。
聴力を失い、耳鳴りが止まらない病に苦しみながら交響曲
などを作曲しつづけている。知ってる方も多いのかもしれ
ないし、人となりは、NHKのサイトwikiで。

広島被爆者2世。耳鳴りについて、佐村河内さんは「父と
母が、そして歴史が聞いた『原爆の音』。それを私の血が
いま、聞いているのかもしれません」と語る。音楽的神話が
無くては耐えられないのかもしれない。

いろんな持病があることへの不安と恐れ。15種類の薬を服
用。その薬の副作用で鈍感になるからか耳鳴りが抑えられる、
と壮絶だ。



聴力を失った14年前、作曲の望みも失い絶望感に陥る。現代作曲
家として食えていたわけではないところへの(そもそも食べて
いける人はほとんどいない)追い打ちというか鉄槌。

それが先天性右上腕欠損といって腕が半分失われている少女との
出会いで、彼は救われる。彼女も彼との出会いでプロのバイオリ
ニストを目指すことになる。彼女はクリスマスプレゼントに4年
かけて折った千羽鶴を渡す。。


プロを目指す大久保美来さん

私は障害を持った子どもたち、また障害を持たない子どもたちとも
交流しています。もしこの先、私が曲を書き上げたとしたら、私に
曲を書かせたのはこの子どもたちだと言いたい。

作曲は瞑想のなかで行うかのよう。楽器は聞こえないから使わな
い。ひたすら頭にうかぶ音を追い求める。耳鳴りや不協音が邪魔
するなか、音を拾い出す。音楽ができると一気にスコアを手描き
で書きあげる。とても美しい楽譜。

2003年『交響曲第1番 HIROSHIMA』を完成。その直後、病苦から
発作的に縊死を図るも未遂。2005年『交響曲第2番』を完成。その
翌日、再び縊死を図るもやはり未遂に終わる。

闇が深ければ深いほど、祈りの­灯火は強く輝く

『交響曲第1番』の1楽章と3楽章の初演が5年後の2008年。そして
とうとう、2010年秋山和慶指揮の京都市交響楽団により、全曲版が
京都コンサートホールで演奏。

アルバムが大友直人指揮・東京交響楽団によって2011年発売。クラッ
シック音楽での1位はもとより、音楽チャートでTOP10入りを果たす空
前のヒット。



東日本大震災の被災者からも勇気づけられたと多くの声が届く。その
なかの一人、母を失った小学生の女の子のためにピアノ曲「レクイエ
ム」を作ろうと決意。

みんなは救えない、一人だけだよ。

なんども被災地にいき、夜を海辺ですごしもがき悩むなかで、曲が完成
して発表する様子も番組では紹介していた。彼女が津波に襲われた小学
校での発表は意義深い。

再放送は4/13の15:05~の予定。

ロシア人デザイナーの服

2013-03-30 | tokyo
馬喰﨑山町の古いビル、アガタ竹澤ビルに久しぶりに行く。
1961年頃竣工で、当時気合いの入ったこじんまりとした複
合ビル(住居+オフィス+店舗)が2007年にコンバージョ
ン。

ギャラリー、雑貨、ファッション、カフェ、デザイン事務
所などが集まり、入れ替わり、楽しい拠点になりつつある。



2階にVolga Volgaという服のお店ができていたから入って
みる。舞台のような暗くて大きな空間。アトリエが移転した
のが昨年で、土曜日だけ販売も行っているとか。

デザイナーはミハイル・パンチレエフさんというロシア人。
ヨウジヤマモトさんのもとで、デザイナーとして参加した後
独立。



奧で作業をしてたのが、出てきてくれて、話をする。気さく
な人だ。ショップで服の紹介をしてくれてたのがどうも奥様。
ヨーガンレール出身とのこと。

寒さに対する配慮が生まれつき染みついてるそうで、軽くて
暖かい服を買う。バーゲン最終日だったしw



馬喰町周辺は、生地など素材が入手しやすいし、腕のいい職
人も多いとか。中国などと対抗して安くて質の低い仕事を請
けおう職人達もいる。


空をむくからそら豆

2013-03-29 | 
秋がきのこの季節だとすると、春は豆のシーズン!?
これから初夏まで豆がでてくるのは楽しみの一つ。

そら豆を剥く。しなやかな皮に弾力ある繊維に包ま
れた豆が三つ。ベッドに眠っている豆という比喩を
する人は多いんちゃうかな。



豆よりも皮や繊維の方が体積が大きい。この贅沢な
感じ、繊維というか空気にフンワリ包まれていう様
が「そら」なのかと漠然と思ってた。

食べるところが少ないからか、人気が減ってるって
聞いたことがあるけど、実際どうなんやろう。えん
まめなどは丸ごと食べられるもんね。

調べてみると、豆の実が空に向かって伸びていく様
から、「空豆」と言われると知ったのね。ちょっと
恥ずかしい感じもするが、畑でも見たことない。



軽く湯がいたそら豆を塩で食べる。旨い。春の味。

タランティーノ『ジャンゴ 繋がれざる者』

2013-03-28 | 映画
アメリカ制作の映画が続いたので、もう一本。タランティーノ監督の
新作映画『ジャンゴ 繋がれざる者』は、マカロニウェスタンへのオ
マージュでありながら、奴隷制を浮き彫りにする新しさが注入。



『続・荒野の用心棒』は原題が『ジャンゴ』なんだね。これが出世作と
なったジャンゴ役のフランコ・ネロがカメオ出演してたり、テーマ曲も
同じだったり。

南北戦争の2年前の南部を舞台に、解放奴隷のジャンゴ(ジェイミー・フ
ォックス)がドイツ系賞金稼ぎのドクター・キング・シュルツ(クリスト
フ・ヴァルツ)と共に、サディスティックな農場主カルヴィン・キャンディ
(レオナルド・ディカプリオ)に立ち向かい、奪われた妻のヒルダ(ケリ
ー・ワシントン)を救おうとする。

冒頭は圧巻。鎖に繋がれていた奴隷のジャンゴは腕のたつ謎のドクター
シュルツに解放され、一緒に馬に乗って街に行くと、奇異な目で見られ
る。黒人が馬に乗ること自体、当時はタブーだったことがわかる。



町から出て行くように、勧告した保安官をシュルツが撃ち殺す・・地元
の男達にライフルを突きつけられ、ジャンゴも観客もどうなるんだろうと
固唾を飲むと、一滴も血を流さず、勝利する。

なんと、殺した保安官がお尋ね者であり、このシュルツが賞金稼ぎのプロ
であることがわかった時の痛快さはない。WANTEDと書かれた手配書から
賞金稼ぎの仕組みがわかっていく。



ジャンゴとシュルツは賞金稼ぎで儲けると、ジャンゴの妻を奴隷から救いだ
そうと、農場主キャンディに行く。そこで奴隷制の実体・・アメリカの恥部
だと思うだけど・・も描かれていく。



それまでが外での広いシーンが多かったのが、家の中のシーンとなり、人と
人の距離感が濃密となり、奴隷の使われ方にジャンゴが嫌悪したり、反応す
る演技に感情移入していく。

シュルツが殺され、ジャンゴも捕らえられ、なぶり殺される寸前で脱出して、
悪役を皆殺しにしていくあたりは、まさにマカロニウェスタン。イタリアで
熱狂的に迎えられたらしい。



監督はアカデミー賞の脚本賞をゲットし、シュルツ役のクリストフ・ヴァルツ
が助演賞。悪役を熱演したディカプリオは無冠だった。

映画『ムーンライズ・キングダム』

2013-03-27 | 映画
3人の兄弟がインドへ列車旅行をする『ダージリン急行』、
ロアルド・ダール原作のアニメ『ファンタスティック Mr.
FOX』で独自の世界を打ち出し、結構好きになったウェス・
アンダーソン監督。最新作、『ムーンライズ・キングダム
を観る。



アンダーソン節は全開で、正面から行儀よく撮るカメラ
衣服、小物、家に隅々まで行き届いた美意識、島という
小さなコミュニティでおこる事件。1965年という設定。



主役の小学生二人が逃避行をする物語。恋の逃避行、家
出、いいでしょ。二人ともオーディションで初映画だとい
うから、驚き。どちらもかわいいなぁ。脇を、堂々たる俳
優が固める。



うだつのあがらない地元の警察官をブルース・ウィルスが
好演。アクションシーンは皆無。主人公の少年たちを理解
する唯一の存在という役どころ。

『ダージリン急行』ではカメオ出演だったビル・マーレが
保守的で、不幸な家庭の父親役。その娘が家出するのね。
お互い理解しあって2年の文通を経て、二人は逃避行を決行。
いったんは連れ戻されるけど、再度逃げ出す二人。



どうなるかという結末はネタばれになるから伏せるけど、
子供の世界を貫徹することでもなく、大人の世界に戻さ
るわけでもなく、新しい物語が始まるという、なかなか
いい話だった。

東京での公開は終了してしまったみたい。下高井戸シネマ
で上映するという話。



「ハーブ&ドロシー」続篇・ジャパンプレミア

2013-03-26 | 映画
「ハーブ&ドロシー」の続篇なんだけどいよいよ、今週末
3月30日の劇場公開を前に、ジャパンプレミア試写会がある。

インターネットを利用したソーシャルなクラウドファンディン
グで宣伝・配給費を集め、915人によって日本での最高額であ
る1,463万3,703円を記録したそうだ。(くわしくはこちら

出資した人達やプレス向けに試写会が開かれたんだけど、仕事
で行けなかったので、終わった後のパーティに参加する。



佐々木監督にまた公開の時が来ましたね、とおめでとうを
伝えると、前作より宣伝や告知の規模がパワーアップして、
とっても期待している、とテンションが高かった。

そして人だかりをかきわけ、ドロシーにきちんと紹介してくれた。
一回目の立役者とか言ってくれたんだけど、このあたりが佐々木
さんの細やかなところと感心する。



ドロシーは意外に小さい方で驚く。小柄な佐々木さんよりもっと
小さい。ハーブと並んでいたから、もっと大柄な女性かと思ってた。

「とてもありがとう」と言って下さり握手する。とても小さな手で、
か弱く、冷たかった。「お会いできて、とても嬉しいです」と応える。
会えてほんとよかった。とても満足。

「お疲れだろうから、早くお休みしてもらえるといいですね」と佐々木
さんに伝えたけど、そうしたいけど、なかなかそうもいかなくてって顔
をする。

1作目は映画配給のプロも手伝ってくれたけど、どちらかといえば素人た
ちが智恵と手足で作り上げた手作りなものだった。パーティの仕切り方を
見てもプロがやってて、派手だし、ソツがない。


試写会からサプライズ参加のリリコさんもパーティ会場に

3月30日から、東京は新宿ピカデリー、恵比寿写真美術館を
始め、全国で公開中。前作を観て下さった方は、必見。まだ
のかたはレンタルで借りてから、ぜひ!

新音楽ユニット「チリンとドロン」

2013-03-25 | art
音楽ユニットの「ショピン」で活躍中の田中馨さんと
松本野々歩さんが親子のための新ユニット「チリンと
ドロン」を立ち上げる。

デビュー公演というのかお披露目公演を目前にして、
練習風景を見る機会がある。親子といっても、赤ちゃ
んとお母さんやお父さんと一緒に聴いてもらおうとい
うプログラム。

野々歩さんのお父さんになるんだけど松本雅隆さんが
主催するロバの音楽座のレパートリーにある0~3歳の
ためのコンサート 「ポロンポロン」
と趣旨は似てる。



楽器は想像通りだったんだけど、言葉遊びの楽しい曲目
を予想してたら、見事にはずれる。世界の遊び歌が中心
だったんだ。手振り身振り演奏し、聴き手も一緒にやれ
るものがとても多くて楽しい。歌ったり踊ったりもあるしね。

こういう音楽は童心に帰るというか、素の自分に帰れる
というか、懐かしく暖かさで、心が解けていく感じがする。

世界中を旅することが好きな二人にはあってるし、今後
収集にますます拍車がかかるかもしれないし。



どんなものかは、彼らのサイトで今後明らかになるはず。
ご近所でコンサートがある際には、一度聴きにいってみ
てね。

ちなみにチリンドロンはスペイン語でカルタの意味だそ
うだ。

現代アートフェア『G-tokyo』

2013-03-24 | art
昨日六本木アートナイトに行った時、ミッドタウンで
開催中だった『G-tokyo』も行ってみる。こちらも20
10年に始まって、4回目の開催。

六本木アートナイトが美術館=キューブをでて、パブ
リックで社会性を強く意識したアート作品だとすると、
『G-tokyo』は、美術館や自宅のなかで私的な会話を
目指したアート作品と言えるかもしれない。

東京を代表する現代アートのギャラリーが集まって、
おのおの作家を絞った展示をしている。見れてよかっ
たのが


Mizuma Art Gallery /池田学さん Meltdown 2013


Courtesy KENJI TAKI GALLERY/ 塩田千春さん State of Being (old money)

印象的だったのが、仕掛けというか動きのあった


ギャラリー小柳/田幡浩一さん 《100 peeler》 (アニメーション)


hiromiyoshii roppongi/Satoshi Otsuka Untitled ( Landscape Transfer ) 


新作、近作がずらり。写真は『G-tokyo』のサイトから。


六本木アートナイト2013

2013-03-23 | art
2日間だけのアートイベント、「六本木アートナイト2013」に
行く。土曜の夜がオールナイトでメインなんだけど、昼間に寄っ
てみた。2009年に始まって、2011年は休止した毎年イベント。

今年は、日比野克彦さんがアーティスティックディレクターに
なって、キュレイターが1970年世代の清宮陵一さんと小川希さ
ん。

「六本木がアートを切り口にして発信していこう」という目的の
なか、“アートブネ”というモチーフが港、灯台などと重なりなが
らあちこちで作品にでくわす。面白かったのをピックアップすると;


桜満開の毛利庭園に、日比野さん《動きたい水灯台・動かない土灯台


五十嵐靖晃さん《そらあみ ─六本木─》 石巻の猟師と編んだ網


俳優の伊勢谷友介さん代表のREBIRTH PROJECT《シャウティングスター丸


これは子ども達大人気で、様々な素材と大きさによる筒が船体を構成


筒のいくつかには音が拡大する共鳴器がついてて、大きな音が広場に鳴り響く


昨日みた「みんなの家」も六本木ヒルズに出店していたらしい。
が、気づいたのは帰ってパンフを見たときw

陸前高田の「みんなの家」展

2013-03-22 | 建築
伊東豊雄さんが呼びかけた3人の旬な建築家;乾久美子さん、
藤本壮介さん、平田晃久さんが震災後の建築のあり方に向き
合うべく、陸前高田に「みんなの家」を建てたのが昨年11月。



その1年にわたるプロセスのドキュメントを、ヴェネチア・
ビエンナーレ国際建築展(2012.8.29-11.25)の日本館で
出展し、最高賞の「金獅子賞」を受賞。その帰国展示会が、
TOTO GALLERYで開催されていた。



津波で人も建築も築いてきたものが失われた場所に、何を
作ればいいのか。小さな共同の家を作るんだけど、みなが
悩むプロセスが数々の模型とコメントでたどれる。写真や
映像は写真家の畠山直哉さん。



高台の山の中から海に近くの丘に、建設予定地が移動して
から、作業がまとまっていく。塩害でやられた杉をむきだ
しで使いながら、このような結論になる;



ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の帰国展だから、地
元の人の感想や使い心地はわからないのが、ちょっと残念。
竣工後というコーナーがあってもいい。あったのかもしれ
ないけどね。


原寸大の杉の組立

その開催中に、伊東豊雄さんが「プリツカー賞」受賞という
ビッグニュースも飛び込む。建築界のノーベル賞ともいわれ
る最高賞。彼の生態的で独創的な建築だけではなく、この
『みんなの家』

「彼は、建築は人の物理的な要望だけではなく、人々の感覚
にも報いなければならないと語ったことがある。2011年に
日本を襲った地震で被災した人たちの、小さな共有スペース
である『みんなの家』を支持する彼の仕事は、彼の社会的責
任の感覚が端的に表れたものだ」

写真や動画はTOTO GALLERYのサイトより。