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ねがうこと、ゆだねること

「具体」-ニッポンの前衛 18年

2012-08-13 | art
お盆でゆるやかな打合せ。国立新美術館の
「具体展」を見てくる。東京での初といっても
いい大規模な回顧展だ。

「具体」といえば、嶋本昭三さんであり、
去年亡くなられた元永定正さんであり、
その中心にいたのが吉原治良さんという
のがボクの断片的なイメージ。

それがどういう精神だったのか、どういう
人達だったのか、どこで広がり、どう変質
したのか・・一挙に展望できる展覧会だ。
9/10まで。



嶋本さんによれば、師事した故・吉原さんの
批評のポイントは「オリジナリティ:独創性の
一言につきる」と読んだことがあった。
(『芸術は人を驚かせることである』1994)

それは、「フジタ(藤田嗣次)さんに具象画を
みてもらったところ『一切まねてはいけないよ』と
独創性のなさを指摘され、抽象絵画に徐々に転向
した」ことに発すことも知った(𠮷原治良
『わが心の自叙伝』1967)。



初期のはなばなしいパーフォーミングアート、
いわゆる「前衛」が、徐々に平面絵画中心に
なっていくのに、フランス人美術評論家・
タピエという人の存在が大きかったこと。

タピエは戦後の新しい抽象表現を「アンフォル
メル」と命名した張本人。その欧米の動きが、
遠い日本で追求されていることに興味を抱き、
積極的に欧米に紹介する。

おかげで具体はGUTAIとして西洋現代美術の
文脈での評価を獲得する。いっぽう、タピエは
評論活動や展覧会の企画にとどまらず、作品の
売買にもからんでいたそうだ。

海外に輸送しやすく、売買が容易な絵画や平面
作品をより高く評価し、具体に求めるように
なったそうだ。

ニーズやパッケージ性を優先するなんて、
アートの矛盾が詰まっててて面白い。

生前の元永さんがインタビューに答えていて;

やっぱり、タピエさんっていうのは、半面画商やさかいな。
「安く召し上げろ」っていうようなことやったんちゃうかな。
むちゃくちゃやもん。僕ら、契約されて嬉しいさかいに、
儲けるなんてこと考えてないしやね。




「タピエ氏に捧ぐ 元永」と左下に描いてあるけど、
長年白く塗りつぶされていて、修復されて現れた。