活字日記

毎日読んだ活字系(雑誌、本、新聞、冊子)を可能な限りレポートします。

パンツが見える

2005-07-19 | 選書
 白木屋火災事件というのを知っていますか。白木屋とは日本橋にあった呉服屋あがりの百貨店でちょっと前まで東急日本橋店でした(もう閉店しました)。昭和初期にあった日本初の高層ビル火災として知られています。この時店員が何人か亡くなったのですが、ビルの7階あたりから紐を伝って降りようとして力尽きて落下死してしまった人がいます。当時の店員は和装で、さらに和装というのは長襦袢(腰巻き)以外の下着を着けていませんから下から見ると陰部が丸見えだったのです。ということでこの力尽きて落下した店員達は下にいる野次馬から見られるのを恥ずかしがって手を離して落ちたのだ、従ってこのことがあってから和装でもパンツをはくようになったということが通説になっています。著者はまずこの通説を疑って間違いであることを証明しています。後生の人の作り話だったのですね。実はこの昭和初期の女性は陰部を見られるということに抵抗感があまりなかったらしいのです。現代はパンツが見えるかどうかということが男のスケベ心を遊びますが、当時はパンツどころか階段の下から丸見えであることがよくあったというのです。
 というような大正末期から現代に至って女性がいかにパンツをはくようになったのかという風俗史の本です。サブタイトルは「羞恥心の現代史」。つい最近まで日本もおおらかにパンツを見せる女性がそこかしこにいたというのですが、自分の記憶にはなかなか存在しません。

「パンツが見える」井上章一 朝日選書
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