活字日記

毎日読んだ活字系(雑誌、本、新聞、冊子)を可能な限りレポートします。

今こそ石橋湛山?

2004-07-29 | 選書
 石橋湛山という政治家をご存じの方はあまり多くはないと思います。太平洋戦争直後の日本の混乱期を指導した政治家です。吉田茂やGHQと合わず言われ無き公職追放を受けましたが、復帰後総理大臣も務めました。残念ながら体調不良により2ヶ月の短命内閣でしたが、後の池田内閣にその精神は受け継がれました。
 戦時中も時の体制には小日本主義の立場から批判的言論を展開してきました。左翼政治家とは違って自由主義という立場を貫き続け、戦後はリベラルなという形容詞はこの人のためにあるのではと思われます。
 現在も湛山を信奉する政治家は数多く、その精神を勉強する人は耐えません。真の日本リーダーがいなくなって久しく(と私は思うのですが)今、石橋湛山がいたら日本をどう導いてくれるのかと本気で思います。

「日本リベラルと石橋湛山」田中秀征 講談社メチエ選書
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雷九州阿房列車

2004-07-28 | 文庫
 昨日に続いて阿房列車です。目的のない旅を阿房(あほう)と呼ぶのが著者のセンスですが、鉄道旅行が好きな人にはこの本は是非読んでもらうと面白いと思います。現代はの旅行は点と点を結ぶ旅行と化してしまい、線上を楽しむ旅行が減りました。在来線も急行がなくなり特急化されるて駅弁を買う喜びとか、ちょっとした待ち合わせ時間で駅を降りて町を歩くということが無くなりました。そういう旅行ができた時代です。
 今回の紀行では60年振りの豪雨水害に見舞われた熊本から大分にかけて紀行します。1日の差で水害をくぐり抜けられましたが、阿房列車の連載(当時の小説新潮)も人気になってあちこちで取材を受けるようになり、そろそろこの紀行も面倒くさくなってきています。

「第二阿房列車」内田百 新潮文庫
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第二阿房列車

2004-07-27 | 文庫
 第一阿房列車に続いて内田百は快調に列車紀行を続けます。目的のない旅だということが趣旨の旅ですが(だから自分の紀行を阿房―あほうといいます)、一応列車に乗ることは目的のようです。そして車窓は十分に楽しんでいます。ですから目的地に着いても、現地での観光はせずひたすら旅館に構え、夜になると知り合いを交えて一献というのが楽しみという旅行です。
 1950年代のこの旅行はまだ一等から三等まであって、特急こだまがまだ登場していませんから(新幹線ではなく在来線です)、列車特急には最後尾に展望車が併設され、今よりも贅沢な旅が一部ではできていたのかなと思います。
 是非、タイムマシンでこの時代に戻って、ある意味では列車の旅いい時代を楽しみたいものです。現代と違ってスピードは出ないし、乗り心地も良くはないのですが、それらが旅の全てではないと思うのです。ゴトンゴトンというレールの継ぎ目を拾う旅は現代では贅沢と言えるかもしれません。

「第二阿房列車」内田百 新潮文庫
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江戸時代は小氷期

2004-07-25 | その他
 江戸時代ってかなり寒い時代だったということがわかってきたようです。何回か大飢饉が起きましたが、それは小氷期ともいえる寒冷な時代だったからということです。氷期っていうのは冬の寒さも厳しいのですが、そのことよりも夏の天候不順の方が重大事で、そのために稲がまともに育たない、ということなのですね。現代でもたまに涼しい夏が来ると東北での収量が落ちてしまいますが、江戸時代は収量どころではなく、生き死にの問題でした。
 ただ、単純に寒い夏のせいだけではなく、寒さに弱い品種を作付けしていたとかそれは現代にも通じるような原因もあったようです。
 米だけではなく、江戸では隅田川が結氷したというのが3回報告されていますし、30センチ以上の大雪も何回も降ったようです。
 ヨーロッパでも同じ頃はテムズ川が結氷したということですから、小氷期というのは地球規模の話だったのです。

「一目でわかる江戸時代」小学館
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鬼平の年収は一千万円?

2004-07-24 | その他
 鬼平は旗本四百石だったと言われています。小説を読んでいると密偵達にけっこうお金を使っているのでどれほどの収入があったのかといつも思っていました。当時の物価をから類推すると五百石取りでざっと一千万円ということらしいということがわかりました(もちろん年代にもよりますが)。ただ一千万円と言っても自分の取り分だけだけでなく、使用人を7人くらい使わなくてはならなかったので可処分所得はもっと少なくて、そんなに楽な暮らし向きではなかったと思われます。いきおい、借金生活になっている旗本も多かったわけですね。
 それにひきかえ、大工は旗本よりも年収は五分の一だったのに、蓄えもできたといいますから、体裁を大事にする武家が果たして裕福だったのかということになります。

「一目でわかる江戸時代」小学館
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品川駅は海岸端

2004-07-23 | 雑誌
 昔の風景、特に明治時代の写真などを見ていると建物や風俗が違うのは当然として、地形そのものも違っているのを発見して楽しいものです。
 明治時代までは芝浦から横浜あたりまでの海岸線は古地図を見るとほぼ現在のJR東海道線に沿っていることは知っていましたが、それを写真で見ると改めて感慨にふけってしまいます。今月の鉄道ピクトリアルは東海道線特集なのですが、明治時代の写真を並べてあります。品川駅を八ツ山鉄橋の辺りから見た写真ですが、現新幹線品川ホームが海岸線という感じで、この頃の品川ホームに立つと、この季節海風が気持ちよかったろうと(毎日品川駅のムンムンする構内を通勤しているので)うらやましくなります。

「鉄道ピクトリアル 9月号」
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マエストロに乾杯

2004-07-22 | 文庫
 今は無きFMfanに連載されていたクラシック演奏者へのインタビューシリーズが単行本になり、さらに文庫化されたものです。80年代半ばから90年頃にかけてインタビューされたものなので、約15年を経て読むと掲載されている写真の古さ(若さ?)が時の流れを感じさせますし、もちろん鬼籍に入った演奏者もいます。
 演奏者がどういう人格の持ち主であるのかなどはなかなか伝わってこないのですが、こうしたインタビュー記事を読んでいると大まかなことは伝わります。巻末の方にインタビューはできなかったものの、ホロヴィッツが滞在した時の様子をホテルマンに聞いたり、部屋にこっそり潜入したりしてホロヴィッツの人物像を浮かび上がらせた章がありますが、それが一番面白かったです。

「マエストロに乾杯」石戸谷結子 知恵の森文庫
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R25

2004-07-16 | 雑誌
 フリーペーパーという無料新聞、フリーマガジンという無料雑誌はアメリカなどではけっこうあるようですが、日本ではなかなか見ません。フリーペーパーは本格的なタブロイド判が東京で発刊されましたが、置かれるところが拡大しないのか目につくことは少なく、どちらかといえば我が家の方では地域新聞というなのフリーペーパーがポストに投げ込まれていきます。
 それよりももっと見ないのがフリーマガジンですがリクルートが本格的に発刊しました。都心の車内吊りで広告したくらい力が入っています。でもどこで手にはいるのか皆目わからず、とある展示会の片隅に置いてあったのを目にして手に取りました。
 R25というのは25歳位をターゲットとしたビジュアルマガジンで、毎週木曜日発行。都会に住むこの世代の人間への情報誌というものです。時事問題、政治経済などの簡単な解説、洒落たホテル、レストランの紹介、特集記事とあってフリーの源である広告はもちろんありますが、目立ちすぎるというほどではなく、金を出した雑誌でもこれくらいの広告はついてくるなという位の量です。全体は48ページですから昼飯を食べながらちょちょっと見て読み終わるというものです。内容はフリーの割にはいいと思うのですが表紙デザインが悪く、就職斡旋誌と見間違えてしまうようなレベルです。

「R25」リクルート
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ローマ人の物語7勝者の混迷(下)

2004-07-15 | 文庫
 ローマ共和制の制度疲労は内乱という形で表面化します。ローマ市民権の付与の仕方を巡り、最初はローマ内部での民衆派と保守派との暴力事件が続き、ゲルマン人の進入を押さえたのもつかの間、やがてローマとローマ連合との間での戦いに発展します。イタリア半島での情勢をみて反旗をあげる小アジアの王国、それを押さえるために出陣する名将スッラ。さらにあのカエサルの名前も登場します。
 世界史の授業ではここまでこまかなローマ史など当然習いはしませんでしたが、紀元前の世界にこんなにも胸をすくような事実があったのかと思うと感動します。つい、この時代は中国でも春秋戦国時代とかがあって面白い時代ですが、英雄が存在し得た時代だったのだと思います。どこをとっても物語、小説になるんですね。
 ローマ人の物語はここまでが今のところ文庫版です。秋にまた続きが出るようなので楽しみです。

「ローマン人の物語7勝者の混迷(下)」塩野七生 新潮文庫
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ローマ人の物語6勝者の混迷(上)

2004-07-14 | 文庫
 ハンニバルとの戦いの後カルタゴを完全滅亡に追い込んだ共和制ローマは絶頂期を迎えます。しかし、内部からの体制の綻びが目立つようになってきます。ローマを愛するが故に体制改革を目ざしたグラックス兄弟は元老院の反発を招いて兄弟とも志半ば若くして生涯を閉じます。
 当時は失敗した改革ですが、後の世、カエサルの時代に彼らの志は引き継がれていきます。
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