活字日記

毎日読んだ活字系(雑誌、本、新聞、冊子)を可能な限りレポートします。

【1月31日】

2012-01-31 | 文庫

蟹工船を読み終わりました。いわゆるプロレタリアート文学というもので、蟹工船内の労働者の不当な扱いぶりを徹底的に描写し、それは現代では考えられないほどの劣悪な扱いで、産軍共同で労働者を虐げるというものに徹底しています。最後はサボタージュから始まって監督官のつるし上げが成功するというところで終わります。うーむ、確かにこのようなものが昭和の初期に書かれたのなら、発禁は間違いないし、この路線を継続していれば作者が逮捕、獄中で死去というのもわかります。おそらく現在でも世界のどこかで児童虐待による労働があるとすれば、こういう世界に近いのかなぁと思いながら読み終えました。
引き続き青空文庫を検索して、海野十三(うんのじゅうざ)の作品から1941年の大宇宙遠征隊という小学生向けのSF(当時はSFという言葉はありませんが)を読み始めました。初っぱな、ロケットという言葉は古く、噴行艇という瓦斯を噴射する乗り物にと出てきたのにはビックリしました。瓦斯の噴射先に舵があってそれで方向を決めるというのには笑いました。瓦斯の続く限り宇宙を飛べるというのですが、これが15年の宇宙の旅というのですからこれにも苦笑。170の噴行艇に4万人の日本人が乗り込んで、こんなことは50年前の日本人には考えつかないだろうと書いてあります。書かれた当時からすれば1890年(明治23年頃)の人たちには想像できないだろうというのです。主人公は15歳の少年で、乗組員とは言わず艇夫といいますが、蟹工船と同じような表現なのにも苦笑であります。

「蟹工船」小林多喜二 青空文庫

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【1月30日】

2012-01-30 | 新書

尼さんになる動機として3つほどあって、1つにデモシカ系の人(いっそ尼さんにでも、尼さんにしかなれない)という逃避型の人がいて、清らかな環境で心を清めたいと思う動機なのですが、実行する人はまれだし、寺院は清らかでも尼さんの心が清らかかどうかわからないと著者は言います。2つめには尼さんになるしかないというナルシカ系の人がいて、霊験とか霊能がある人がそう思うのだそうですが、玉石混淆だそうです。3つめはヤルシカ系の人で、著者がそれにあたり、何らかの形で仏教に縁ができ、解脱やさとりを求めるために尼さんになるというものだそうです。著者は30過ぎて自ら経営していた会社をたたんで、尼さんの世界に入り、パーリ語で教典を研究し、京都大学の博士号も持っているのですが、現在は寺に属さずマンションで暮らしているそうです(でも得度をするとき師僧がいないと得度できないし、僧侶として登録できないので、そういう関係の人はいるそうです)。尼さんの現状に興味がある人はお勧めな本でした。

「尼さんはつらいよ」勝本華蓮 新潮新書

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【1月29日】

2012-01-29 | その他

ようやくケータイをスマホに変えました。アプリもいくつか入れたわけですが、その中の一つが青空文庫です。これがなかなかよろしい。著作権の切れた作品をテキストベースでデータベース化しているのですが、専用のリーダーを使うと文字の大きさを自在に変えられて、片手でページ送りが出来ます。読み始めたのは小林多喜二の蟹工船。いっときブームになり、書店にも山積みされていました。今日は免許更新に行ったのですが、視力測定が(日曜日ということで)大行列。その列の中で読んでいたのですが、すごい小説だと思います。とにかく人を人と思わない蟹工船。船長よりも偉い監督が人を徹底的に酷使します。昭和の初めの底辺の労働者というのはこういう世界かと思います。初期資本主義はまさに人からの搾取というのがあたっていたと思わせます。その後は資本主義も磨き抜かれて現在に至るのですが、でもまだ搾取感から抜けない人が多くてこういう本に共感を得るのではないでしょうか。

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【1月28日】

2012-01-28 | 新書

当世の尼さんというとどういう印象があるでしょうか。キリスト教のシスターはたまに街で出会うことはありますが、尼さんというのは殆ど会いませんね。有名な尼さんは作家の瀬戸内寂聴さんですが、実際尼さんはどこにいるのか。現代に尼寺はあるのか(ちょっと秘密な感じがしたりします)、ということで尼さんはつらいよという新書が出たので買ってみました。それによると尼さんは絶滅危惧種なのだそうです。著者自身は天台宗の得度を得た方ですが、尼寺にいることはなく、普通にマンションに一人住まいだそうです。でもちゃんと頭は丸めているそうです。尼さんの現実が書かれていて面白いです。

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【1月27日】

2012-01-27 | 新書

東北電力の原発のある女川、福島の小名浜、実は両方とも津波痕跡地名だというのです。雄波という言葉があり、激しい波の打ち寄せるところというような意味で、女川、小名浜のオナは津波のことをミを略してヲナと呼んだことの名残であるらしいのです。足下の活断層の有無を原発立地の理由の一つに挙げられますが、こうした地名を吟味することが、その土地がどういう土地であったか、古代からの知恵を知る手がかりになるのでありますね。大阪湾はすり鉢のような形をしていて、堤防が持たない地形だということで、さらに難波の地名のごとく、津波が襲い来る土地という意味が込められているらしいのです。もともと湿地帯の大阪は南海地震で想定される津波に耐えられるのか。地下街水没と言う人もいます(東京も名古屋も同様らしい)。東京直下地震が数年以内に70%の確率があるということで、行政の防災対策は全国レベルで緊急のことと言えます。

「この地名が危ない」楠原佑介 幻冬舎新書

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【1月26日】

2012-01-26 | 新書

神奈川県で有名な地名と言えば湘南です。この地名の由来は中国の湘南地方にあやかったと聞いていたのですが、さにあらず、江戸時代の漢学者が相模の南から相南、転じて読みが同じ湘をあてて湘南となったのだそうです。地名の由来は大きな事典があるのですが、思い込んでいたことと違うことがいっぱいあるようです。房総の南端は安房というのですが、アワはアラワレルの意味があるということで、実は何回も起きている関東大地震による地盤隆起により土地が現れるということが由来ではないかとのことです。大きな災害があるところはその地名に(漢字はあくまでも音としての当て字)その戒めが込められているところが多いそうです。ですから、地名からその土地の災害の状態がわかるということです。この地名が危ないはあと少しです。

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【1月25日】

2012-01-25 | 新書

平成の市町村合併では新しい名前の自治体が日本中にできたり、また市街化調整などで住居表示が変わったりして、古来から綿々と引き継がれてきた地名がかなり無くなってきています。しかし、古来からの地名は多くはそこの地形的な特徴を伝えているものが多いものです。東京でも渋谷、四ッ谷、茗荷谷など谷の地名がつくところは本当に谷で、地下鉄が地上に顔を出します。昨年の大震災で液状化したところは、古来の地名に沼とかを類推する地名がついていたところだったことが判明して、各地の図書館で古地図を見る人が増えたとか。実は津波襲来地も古代からの名前が残っているところが多く、福島原発も地名から類推すると津波が何回も襲来したところだったことがわかるのだそうです。この地名が危ないという本ではそういう各地の地名を紹介してくれています。興味深い本です。

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【1月24日】

2012-01-24 | 単行本

日本が拉致問題を解決できない本当の理由を読み終えました。前半は拉致の歴史と北朝鮮の本質。後半は著者の日本政府に対する怒りが書かれています。北朝鮮はもともとからしてソ連と中共によって作られた人工国家であり、軍も人も物資も何もかもあてがいぶちでやってきたということから、必要なものは外からひっぱてくるのが当然の習わしみたいなところがあると著者は言います。だから拉致も必要な人材を持ってきただけという意識であり、悪ぶれるところは無いのだそうです。なるほど、そういうものなのか、と思った次第。そして、日本政府は朝鮮に対する贖罪意識と(朝鮮総聯と結託した)左翼陣営のおかげで拉致そのものを長い間認めなかった歴史があり、小泉訪朝以降も穏便にこれ以上拡大しないようにという政策をとり続けてきて、やっと拉致を政府として認めた後も、取り返すという気概でなく、北朝鮮からの帰国を促すというなんとも消極的な外交をしてきたと憤慨します。そして拉致問題を解決できない本当の理由は、まだ北朝鮮の日本での工作活動が続いているからだとしています。なにせアメリカよりも長い海岸線を持っている日本は沿岸警備も手薄で、いくらでも工作船が上陸することが可能なのが現実。そうはいっても日本政府の怠慢ぶりとはちがい、地方行政のほうはもう少し前向きで石原都知事もそうだし、神奈川県知事も特任の担当者を置いたということで少しは救われます。

「日本が拉致問題を解決できない本当の理由」荒木和博 草思社

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【1月23日】

2012-01-23 | 単行本

北朝鮮の拉致問題は最近全く進展を見せていませんが、拉致問題は果たして解決できるのか否かという問題の本、日本が拉致問題を解決できない本当の理由という(ちょっと長い)タイトルの本を読んでいます。書いているのは長年拉致問題に取り組んできた特定失踪者問題調査会・代表の荒木和博氏。小泉首相が電撃的に訪朝して拉致問題は本当にあったのだと実証された時からずいぶんと時が経ちましたが、その後は貝を閉ざしたように北朝鮮からのメッセージはありませんね。でも地道に民間組織として調査会は問題解決をしようとしていますが、政府とは一線を画しています。その理由などが書かれています。

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【1月22日】

2012-01-22 | 単行本

冷たい雨が今日も降り、ストーブの前で固まって本を読んだのは昨日と同じ。THE NIKKEI MAGAZINEが朝刊に挟まっていたので朝食後に先ず読んで、次に郷土史の本です。千葉県の戦争遺跡をあるくという本で、歴博の書籍売り場で見つけて買いました。千葉は太平洋戦争時は帝都防衛の最前線で多くの軍事施設があります。米軍は1946年にも九十九里に100万人の兵を上陸させようと計画していたそうで、日本軍も防衛線を作りましたがコンクリートも無くなっていて、ろくなものが作れなかったのが事実のようです。もし広島・長崎の犠牲がなければ千葉が主戦場となった確率がかなりあり、連合軍は房総半島を完全に分断する計画だったということだそうです。

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