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『週刊エコノミスト』11月7日号 - 訪日観光の統計は粉飾?、客数で2割マイナス・消費額も「上げ底」か

2017-11-10 | 『週刊エコノミスト』より
今週のエコノミスト特集は時期尚早な印象。
トヨタの全固化電池など新世代電池が開発されでもして
大きなブレークスルーがないとまだ難しいという印象だ。

しかし54頁の「学者が斬る」は非常に良かった。
神奈川大の飯塚信夫教授の寄稿で、いかに日本の観光統計がいい加減か分かる。
訪日客数で2割は過大、消費額3兆円も疑問」というのが推論であり、
確かに百貨店協会の売上高がマイナスになっているのに
政府発表の観光消費が伸びている点から、疑惑は大きいと言えるだろう。

特に現在のように省庁の人事権を握られて霞が関が官邸の鼻息を窺うような不健全な時代は
まるで戦前のように数字を粉飾して媚び諂い、国民を欺く国家的詐欺が生じ易い。
よくよく気を付けて見ておきたいところだ。


国民が知らない不都合な事実としては、94頁の「日本は実はGM輸入大国」もそうだ。
日本では家畜の飼料・油・甘味料(市販飲料の液糖や葡萄糖である)はほぼ遺伝子組み換えで、
日本人は自覚せずに遺伝子組み換え食品(の加工品)を既に大量に口にしているのだ。

『週刊エコノミスト』2017年11月14日号


他方、予想通りエコノミストリポートは日本の後進性を露骨に示すものとなった。
日本では高学歴高所得の層も日本特有のジェンダーに完全支配されていると言える。

流行に乗じた新刊「逃げ恥の経済学」を取り上げているのだが、
「低賃金の夫は家事育児を手伝わないと搾取になる」という
いかにも現代的なミーイズムの権化のような内容だった。
当人が親から教育投資や家事サービスを散々受けたのは「搾取」ではないと言うつもりなのか。

この主張には根深い三重の欺瞞が隠れており、
日本の高学歴高所得層がジェンダー婚姻(高所得な妻とより高所得な夫との婚姻)で
家計を夫が担うのを当然視し、更に家事育児の分担を求めていることにより
事実上、低所得夫婦や片親世帯の苦境を完全無視して自らの生活だけを重視していること、
本来は「応能負担の原則」から言って税・社会保険料負担を引き上げて
低所得世帯の育児支援を担う経済力があるのにそれを完全無視していること、
仏・北欧のように重税に耐えて保育分野での雇用を生み出す負担もしていないこと。
(勿論、米・香港・シンガポールのように移民受け入れもしない)

だからこそ、日本の高学歴女性はOECDに「人材の浪費」と批判され、
高度なスキルを持った人材ほど仕事を辞めるかセーブするという「就労抑制」、
ひいては日本経済停滞に直結するのである。

はっきり言うが、高学歴高所得層は負担増を甘受し、
家事は外注、保育は集約化した方が遥かに経済効果が高いから、
日本の高学歴高所得カップルは「家事育児は外注しなければならない」か
「他人の子供への所得移転を認めなければならない」のだ。
経済原理から言えばそれで間違いなく日本経済は成長し、豊かになれるのだから。

    ◇     ◇     ◇     ◇

週刊ダイヤモンドの外食特集は売れているようだが、
読者の側としては不満足が多いだろう。
ダイヤモンドらしい鋭さがなく、深掘りが足りない印象である。
労働者側の視点が入っているのはユニークだが、意外にも大きな差はなさそうだ。

投資家側と利用者側に分けて評価した方が良いのでは?
恐らく、両サイドからの評価は全く違うものになろう。

少し考えれば分かるように、外食産業で質と収益を両立するのは大変である。
HUBのような希少な例はあるが、これは事業モデルがニッチだからできる(=例外的事象)のだ。

ざっと見ると矢張り、個人的に評価するチェーンは非上場か、収益性に乏しい事例が多い。
フレッシュネスやタリーズのように尖っていて面白いチェーンは経営面では強くなく、
サイゼリヤのように面白くも何ともないチェーンが経営面では強いのが現実だ。

『週刊ダイヤモンド』2017年 11/11号 (外食チェーン全格付け)


巻頭はガバナンス改革だが日本経済にとっては恩恵は乏しい。
国民を貧しくして株主にカネを流し込んでも低成長・消費沈滞のままだからだ。
そうした歪んだ現実を見ても国民は鈍くて気付かないのだから、
マグマが溜まってからとんでもない炸裂につながるだろう。

    ◇     ◇     ◇     ◇

東洋経済の薬局・薬学部特集は踏み込み不足である。
期待していただけに裏切られたと感じる読者は多いだろう。

薬局の「膨張する利権」を取り上げるならは、関連業界の成長を見ないと。
この分野も規制改革が即、企業収益に繋がるから「企業努力より政治」なのである。

また、薬の利権を追求すると必ず高齢者医療の問題にも突き当たる。
そこに全く触れられていないのは大きな手落ちであろう。

薬学部の記事についてもそうだ。
6年制になり学費負担が急増したことが薬学部の凋落に繋がった。
投資対効果が急速に悪化したからだ。
また、自民党政権と文科省の大学新増設政策も質の低下に拍車をかけた。
(次は獣医の質低下と補助金浪費が間違いなく生じる)

『週刊東洋経済』2017年11/11号 (薬局の正体 膨張する利権と薬学部バブル)


深層リポートの「IT強国イスラエル」だけが評価できる記事だが、
(ここはVCや起業家の読者は絶対に見た方が良い)
他は踏み込み不足という印象の強い号だった。。

    ◇     ◇     ◇     ◇

次週の注目は、その手があったか! のダイヤモンド特集、興味深いテーマではある。

▽ 最大の問題は、両方とも経済リテラシーが低く人口老化を放置し現状に安住していること

『週刊ダイヤモンド』2017年11/18号 (右派×左派 ねじれで読み解く企業・経済・政治・大学)


▽ また逆指標になりそうな予感の東洋経済、強気派の面々がいかにも。。

『週刊東洋経済』2017年11/18号 (世界同時株高! いま買える株・投信)


▽ エコノミストは渋過ぎる特集、余り売れそうにないが良い記事もあるかも

『週刊エコノミスト』2017年11月21日号

「国会議員ランキング」の方が重要かもしれない。
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