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4億円の寄付でも焼け石に水、子供の貧困は改善しない - 諸悪の元凶は富裕高齢層への数兆円のバラ撒き

2016-08-10 | いとすぎから見るこの社会-格差の拡大
湯浅誠氏がyahooに寄稿した記事が話題になっているが、
残念なことに完全に間違った内容である。
計算すれば小学生でも分かる程度の話なのだ。

4億円程度の寄付で日本の子供の貧困が緩和される訳がない。
対象層の子供全員に4億円を配ったらコンビニのお握り1個分程度であり、
子供の貧困率に与える効果はほぼゼロに近いのである。

勿論、河野氏の志は素晴らしいもので、
少子化に対する危機感にも心から賛同する。
しかし、幾ら志があっても数量的に足りな過ぎる。

記事内容から見て、河野氏はこの国の社会保障制度がいかに歪んでいるか、
いかにその場凌ぎで持続可能性の低い制度であるか、充分に理解していない。

我が国の社会保障制度は、我が国の家計金融資産の殆どを占有している高齢層に、
30兆円に迫る膨大な額の公費(未来世代の払う借金も含まれている)をバラ撒いている


4億円程度の額ではせいぜい、「焼け石に水」でしかないのだ。
最低でも4億円の2000倍以上、つまり1兆円は必要である。

河野氏に倣う富裕高齢層があと2000人はいなければならないのだ。
そうした水準に至れば漸く、子供の貧困率をはっきりと低下させることができる。

▽ 日本経済を低迷させているのが年金給付、成長させるのは育児支援だと数理的に証明されている

『子育て支援が日本を救う(政策効果の統計分析)』(柴田悠,勁草書房)


今回の湯浅氏の記事で、当ウェブログの警告が的中したと言える。

「安倍政権も反貧困派(若しくは無責任なリベラル)も自己欺瞞ばかり得意で、
 貧困対策を真面目に行う気がなく、問題を却って深刻化させている始末だ」

「日本国民は、就労に復帰できる層への効率的な支援には同意しても、
 手が焼ける層への給付には強烈に反発するだろう」

「そうした面倒な状況がある上に、経済リテラシーのない反貧困派が
 北欧のような峻厳さのないバラ撒きを要求するから益々事態が悪化するのである」

「「他人に金を払わせようとする」反貧困派は、自分達が正しいと信じているなら
 まず自らがカネを出して住居を工面して貧困層を支援してから言うべきである。
 (そうすれば問題は容易に解決しないという現実がやっと見えてくる)
 そして、欧州諸国並みの重税を自分が払ってから言うべきである。
 北欧がなぜ日本より法人税が軽く、間接税が重いのか。彼らはそれすら全く理解していない」

「日本において「年金が足りない」という人々の話を聞いてみると、
 殆どが「これまで払い込んできた保険料が少ない」というだけのことが多く、
 メディアは彼らの言い分を垂れ流しにしてはならない。
 それは騙されやすい自らの能力不足を証明しているに過ぎない。
 (重病や介護でより深刻な状況にある人々は他に大勢いるのだから)」

「現下の年金制度の劣化には、冷厳な事実を伝えない主要メディアの拝金主義にも責任がある。
 利己的で次世代に借金の山を残そうとする国民の鼻息を窺い媚びた報道ばかりしているからだ」

「「年金不足の犠牲者」という誤ったイメージを捏造することで、
 犠牲者を悼むのではなく、犠牲者を利用して年金給付の少なさを強調したい薄汚れた欲望が
 こうした虚像と自己洗脳的な報道を生んだのである」

「その証拠に、50年間にも渡って年金を詐取していた岐阜県での犯罪については
 碌に報じられていないし注目もされていない。(総額は5000万円以上に達する結構な額である)」

「つまり、「貰える年金が少ない」と主張するのに役立つ事件を選んで騒ぎ立て、
 自己の利益を増大させようとしているとしか考えられない行動である」

「そうした受給者の利己的行動は致し方ないものと言えるかもしれない。
 しかし、メディアがそれに乗じて金儲けを狙うとなると話は全然違ってくる。
 もはや「許し難い」域に入っているとすら言えよう」

「社会保障を維持して高齢層の生活を支えたいなら、
 公的年金控除と退職金控除を大幅カットし、
 高齢者雇用を生み出す企業や非営利セクターに移転すべきである。
 就業していないと健康状態が悪化するのは既に調査で確認されている」

「名古屋大学が日米中印の四ヵ国で意識調査を行った結果、
 日本の高齢層の特徴としては「金融資産」「年金の多さ」によって
 不安が減少することが判明したと言う」

「因に、「家族」が不安を和らげていない点では日米中印すべて同じであるが、
 金融資産と年金に関する特徴的な傾向は日本だけに顕著だったようだ」

「これは「拝金主義」としか言いようがないだろう。
 日本人は遺伝的な要因で不安が強いことが知られているが、
 その不安がカネで左右されているのだから他に考えようがない」

「有権者の中で最も数の多い年金受給者層が
 金銭給付を受けないと不安であるからこそ、
 自分が負担してもいない過剰な年金給付を求めるのである」

「だからこそ1000兆円近い過剰貯蓄(死に金)が日本に存在するのであり、
 だからこそ貧困に苦しむ若年層や子供の苦しみを無視できるのである」

「日本の高齢層は、個々人によって金融資産の額に大きな格差があることが知られている。
 不安が大きいから「将来に備えて貯蓄を過剰なまでに積み上げ」るのではない。
 利己的で他人の苦しみに同情せず、平等を嫌っているから資産格差が生じるのだ」

「我が国の醜悪な社会保障の歪みの根源には、
 数の多い高齢有権者にバラ撒きを行う政治家の買票行為と、
 利己的な有権者の貪欲な近視眼と、程度の低いメディアの煽動が
 がっちりと「モラルハザードのトライアングル」を形成しているという現実がある。
 このままでは、「コラテラル・ダメージ」を逃れることは絶対にできない」

「日本より遥かに財政が健全な北欧は年金給付にも課税するし、
 退職金は殆ど貰えない。介護サービスは日本より簡素だ。
 日本と違って当人が負担もしてない給付は行われないのである」

「年金問題においてもまともな議論が成立していない。
 いずれ危機を迎える老化した国の悲しい現実である」

「無責任な本が何十万部も売れている能天気な日本は、
 ソ連崩壊時のような経済危機・財政危機を必ず迎えることになる」

「無知は時によって重大な過ちに結びつくことがある。
 我が国は国債を発行してまで高齢者三経費に年に約30兆円の巨額公費を投入している。
 借金して豊かな高齢層にもバラ撒いている訳である」

「「下流老人」は、同世代の我利我利亡者に憤懣をぶつけるべきであり、
 現役世代にコストを転嫁するのではなく、世代内扶助を求めるべきなのである」

「事実、総務省調査によれば、リーマンショック後の経済低迷期に
 高齢層の預貯金は増えているのに現役世代の預貯金は逆に減っている」

「我が国の国債発行残高が一貫して伸び続けている一方で、
 日本の高齢層の家計金融資産も殖え続けていることから、
 我が国の社会保障の本質は「政府と未来世代から現在の高齢層への所得移転」であるのは明白だ」

「ファイナンスに喩えれば、忌まわしい「蛸足配当」に他ならず、
 日本社会は今、金の卵を産む鶏を殺してその血を啜っているのである」

「我が国には「偽弱者」が非常に多く、彼らの嘘の集積が社会保証制度を歪めてきたのだ。
 彼らの醜い本音は「同胞だろうが他人に分けるカネはない」である。
 「老後不安」や「生活できない」という偽装された言葉は信用できない」

「また頭の古い自民党議員から問題発言が飛び出した。
 案の定、2012年に大量発生した「敵失」によって当選したタナボタ議員だ」

「最も問題なのは、義務教育を「しっかりやれば貧困はありえないと言いたい」などと
 とんでもない勘違い発言を平気で行っていることである」

「日本の子供の貧困率が過去最悪の16%を超えている現実をも知らず、
 よくもこのような厚顔無恥の発言を口にできるものだ。
 こうした無知と傲慢こそが我が国の子供を苦しめる元凶である」

「歴代の自民党政権の失政のために我が国の成長率が低迷の一途を辿り、
 貧困率が刻々と上昇しているという明白な現実を全く認識していないのは、
 国会議員として厳しい懲罰に値すると言っても過言ではない」

「何故なら、国民の貧困化の原因は第一に自民党の経済政策の失敗にあり、
 第二に再分配効果が乏しいことで知られる歪んだ社会保障制度を作り上げたのも自民党政権だからだ。
 痛切に反省して然るべきであるのに、勉強不足も甚だしい」

「また、高齢層だけに異常に偏った社会保障給付を維持してきたのも自民党だ。
 現役世代に大きな恩恵を及ぼす北欧型の社会保障制度であれば、
 これほど出生率が低迷することはなく、女性就業率も経済成長率ももっと高かった筈だ。
 だから、二重の意味で赤枝議員の罪は重い」

「医師である赤枝議員の問題は更に大きい。
 我が国では、学費が高額であることで有名な私立医大の学生は
 およそ半数が医師の家系であることが判明している」

「つまり赤枝議員の「高校や大学は自分の責任で行くものだ」という発言は根本的に間違っていて、
 「大学は医師家系で子に安定収入を受け継がせる手段と化している」のが正しい」

「赤枝発言の唯一の功績としては、自民党には頭の古い議員が確実にいて、
 現代日本の抱える問題への取り組みを怠り、既得権を擁護している事実を明らかにしたことだ」

個人の寄付を賞賛しても、日本の寄付市場はアメリカの100分の1程度でしかない。
日本の場合、高齢層へ投入される公費が余りにも巨額に膨張しているので、
社会保障制度そのものを大きく変えない限り未来がないのだ。

▽ 日本の高齢層の遺産に関する行動は、他先進国より利己的であることが分かっている

『超少子化: 異次元の処方箋』(NHKスペシャル「私たちのこれから」取材班,ポプラ社)


自民党の若手が少し動いているが、断言しても良い。
小手先改革に終わり、自分達の支持層の猛反対を受けて挫折するであろう。

「自民党の小委員会が注目すべき提言を行っている。
 まず遅過ぎるのと、実行力に深い疑念があるものの、評価しておきたい。
 安倍政権にはその程度の健全な認識すら欠けているからだ」

「小泉進次郎議員もメンバーに入っているその小委員会は
 我が国の社会保障制度の欠陥をはっきりと指摘しており、
 「給付と負担が均衡しておらず、多くの部分を将来世代に先送りしている」
 「世代間格差が拡大する恐れ」があるとしている。
 (正しくは「先進国一深刻な世代間格差が更に悪化する」である)」

「また、「国民の資産や所得をきめ細かく把握」して
 「真に支援が必要な高齢者に給付を行う仕組みとする必要がある」とも明記したようだ」

「「実は支援が全く必要ない」豊かな高齢者に散々カネをバラ撒いて
 巨額の公的債務を生み出し未来世代を借金漬けにした
 歴代の自民党政権の罪を本当に糾弾できるのかは甚だ疑問だが、
 漸くにして正しい認識に到達したのは評価できる」

「ただ、自民党若手議員がまだ理解していない点は指摘しておかねばならない。
 我が国の経済低迷の重大な要因こそが、この歪んだ社会保障制度である」

「貧しい若者から搾取したカネを豊かな高齢層にバラ撒いているため、
 頑張って働く者から働かない者(高齢者、専業主婦)にバラ撒いているため、
 日本の歪んだ社会保障制度それ自体が低成長・消費減減退・少子化の元凶となっているのだ」

「事実、日本経済新聞は直近2年間の賃上げの半分が社会保険料に食われてしまっており、
 大企業の健康保険料は9年間で5万円も上昇していると報じている」

「ただでさえ安倍政権の愚劣な政策のために実質賃金が下落しているのだから、
 高齢層と安倍政権が二重に日本の現役世代を貧しくしているという図式である」

「高齢者バラ撒きを始め、醜く膨張させてきた自民党の自浄力に期待する方が間違っている。
 自民党の支持層こそ、巨額資産を死蔵しバラ撒きを受ける富裕高齢層とその予備軍だからだ」

とした当ウェブログの指摘も、的中する可能性が高いと判断できる。

 ↓ 参考

高齢者バラ撒きが賃金減・消費停滞をもたらした、自民党政権のバラ撒きの罪は重い - 賃上げの半分を奪う
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/2a71f6bc2afdeb5d864d672720c9f734‎

リーマン危機後に日本の高齢層は資産を増やし、現役世代は減らしていた! -『下流老人』は悪質な情報操作
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/e620858c75f84d5b091b8ec4191bc7d4

日本の高齢層は「家族よりもお金を重視」、国際比較調査で鮮明に - シルバーデモクラシーの明白な証拠
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/d81e6ed8d4908ae45a41f337711c9fc1

▽ 低所得の若年層や貧困化する育児世帯から搾取したカネを、豊かな高齢層にもバラ撒いている

『中間層消滅』(駒村康平,KADOKAWA/角川マガジンズ)


4億円を寄付した男の“危機感”(湯浅誠)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yuasamakoto/20160803-00060561/
”7月14日の朝刊各紙の首相面会人一覧に、見慣れぬ名前が載った。
 「河野経夫」。
 第一住宅という会社の代表取締役会長。
〔中略〕
 河野さんの寄付行為は強い危機感に裏付けられた、より切迫したものだった。
 その危機感とは何か。
 埼玉県川越市にある第一住宅本社にて、お話をうかがった。
寄付は1分で決めた
――4億円もの寄付を即決されたと聞きましたが、本当ですか?
 本当にあっさり決めたんです。
 家内が「おとうさん寄付したら?」というから、私が「いいね」と。
 1分で決めました(笑)。
 実は、私の会社は同族会社でしてね。会社の純資産は90億円なんですが、息子も継ぎませんので、そのうち20億円で持ち株会をつくって、みんなの会社にしようと。
 そういう趣旨で株を処分したので、それで寄付しようと決めたんです。
 税金を払いながらコツコツ貯めたお金を寄付したわけじゃないんです。
 そこまでのお金はない。臨時収入ですよ(笑)。
 私たちの会社がここまで来られたのは社会のおかげです。
 社会のおせわになったわけだから、社会のお役に立ちたい、と。
「子供の未来応援基金」に決めたワケ
――にわかには信じられませんね(笑)
 本当ですよ(笑)。
 ただ、どこに寄付するかは、かなり慎重に調べました。
 名前を出すのは控えますが、よく知られているところでも、ダメなところはいっぱいあります。寄付を集めるべき団体が政治家に寄付したりとかね。
 調べているうちに出会ったのが「子供の未来応援基金」です。
 これは、基金すべてを子どもの福祉のために使います、と。
 事務費は、すべて事務局が負担します、と。
 これならいいかな、と思ったんですね。
 ところが、政府が提唱して始めたものだけど、半年で2億円しか集まっていない、と。
 個人・団体から寄付を募って、経団連にも一生懸命営業しているらしいんですけどね。
 寄付すると、自社広告に子供の未来応援基金のステッカーが貼れる。それでもそれしか集まっていない。
 内閣府の方が来られたので、聞いたんですよ。そしたら「目標は2億5000万円です」と。
 でも、トヨタの利益は2兆3000億円ですよ(笑)。
 いや、他人のことはどうでもいいんですが、それで私、少しでも起爆剤になればと思いましてね。
 それでも心配ですからね。
 お金の分配を決める委員の方たちの顔ぶれが決まるまで待った。
 審議委員には、企業の人が5人、行政から2人、学識経験者が2人。これなら大丈夫かな、と思いましてね。
 それで決めました。
 自分なりに精査したつもりです。
 私だって中小企業のオヤジですからね。個人で4億円出すのは容易なことじゃないんですよ(笑)。
不労所得が増えてもロクなことはない
〔中略〕
――お子さん、お孫さんに譲ろうとは思わなかったんですか。
 息子が1人、娘が2人、孫が1人おりますけどね。子どもたちも賛成してくれましたよ。
 子どもたちにまったく残してないわけじゃないんです。それなりに計画的に株を譲ってきました。
 でも、必要以上に譲ってもね。いかに我が子とはいえ、不労所得が増えすぎたらロクなことはありませんよ(笑)。
おなかくらい満たしてあげたい
――「子供の未来応援基金」に決めたのは、やはり子どもですか。
 子どもは未来の宝です。
 じいさんばあさんばかりになっては、地球は崩壊するでしょ(笑)。
 子どもを増やすべきです。
 でも今は6人に1人の子どもがプア(貧困)だと言うんでしょ。
 勉強のできる子どもばかりが宝じゃないが、それでも高校とか大学とか、行けるなら行かせてあげたいですよね。
 ひもじい子どももいるんでしょ。そういう子どもたちにご飯を食べさせる「こども食堂」もあるとか。300円とかで食べさせるらしいですね。
 私にはできないが、そうやって社会貢献している人たちがいっぱいいる。
 その人たちの力になれればいいな、と。
 ひもじい思いをしているなら、おなかくらい満たしてあげたいじゃないですか。
4億円を寄付した男の危機感
――でもそれは、国が税金でやるべき仕事だという人もいますよね。
 これは安倍総理にお会いしたときにも申し上げたんですけどね。
 厚労省の外郭団体によれば、日本の人口は2110年に4286万人まで減ると言っていますね(国立社会保障・人口問題研究所中位推計)。
 このままいったら、この国は大変ですよ。終わりますよ。
 人口減少で未来がないとなれば、円の信認も下がるかもしれない。
 国債が暴落するかもしれない。
 このままいったら、デフォルトになるとか、預金封鎖があるとか、そういうことがありえると私は危惧しているんです。
 そういう危機的状況なのに、57兆円の収入で97兆円の生活をしている。持続可能性がないですよ。
 学者さんの中には、大丈夫だって言う人もいますけどね。私は心配です。
 それなのに、消費増税を2年半延期してしまった。
 選挙に勝つためでしょうが、どうしてこういうことをやるのか。
 安倍総理には力があるんだから、任期を伸ばしてでもやってほしい、と申し上げました。
 そもそも日本の総理は短命にすぎます。
〔中略〕
 安倍さんだって、借金を減らしたわけじゃない。国債の増発を減らしただけです。
 政治は、もっと長期的な見通しをもって、もっとまっすぐに進むべきものだと思うんです。
 でも、政治の力だけでは、それはできません。
 その意味では、安倍さんも悪いが、国民も悪い。
 子どもは放っておけば育つんだと言う人もいます。
 でも、誰がプア(貧困)にしたのか。政府の責任です。
 中流層がものすごい勢いで減っています。
 これってまさに、小泉構造改革がまずかったと思うんです。
 でも、小泉構造改革をやったから、日本のモノづくりががんばれた。
 悪いことも、良いこともあった。
 でも、悪い面の手当てが十分なされていません。
 だから政府の責任でフォローすべきです。
 でも1100兆円の借金があります。政府だけではできません。
 それには、私たち国民にも責任があったと思うんです。
 国民による運動が必要だと思います。でも、私にそんな力はありません。
 私にできることは、せめて寄付をすることぐらいです。
寄付の連鎖に期待
――河野会長の周りには、そのような思いを抱いている方が多いんですか。
 多くはないですね。
 私はどこでも、このままいったら大ごとだ、と言っています。
 みんな「そうだな」と言ってくれるんですが、なかなか行動は起こしてくれません。
 このままでは大変だ、そのためには子育てだ、と言っているんですが、広がらない。
 私に説得力がないんでしょう。
 でも、こんな話もありました。
 ウチの社員が行っている病院の医師が「おたくの会長は立派なことをやられた。私もやろうかと思っている」と言ったというんです。
 そういう人もいます。
 だから、広がっていくことに対する期待を捨ててはいません。
〔中略〕
 できたら、私の寄付が呼び水になって、連鎖が広がってくれるといいですね。
 また言っちゃいますが、トヨタの利益は2兆3000億円ですからね。
 4億円なんて、トヨタから見れば私の1円くらいでしょう(笑)。
 経団連がその気になれば、すぐに数十億円くらい集まると思うんですよね。
 だいたい企業がやれば経費ですから。私みたいな個人はそうはいかない(笑)。
立派なことなど言えないが
――最後に、今の子どもたちに一声かけるとしたら。

 立派なことなんて、言えませんねえ。
 でもやっぱり、がんばったら未来は開けるよ、と言いたいですね。
 できたら、横道にそれず、前向きに努力してほしい。
 素朴にそう思いますね。
 そのために、私のお金が少しでも生きてくれれば、ありがたいです。
(8月3日18:41誤字修正:「子供未来応援基金」→「子供の未来応援基金」)”

河野氏には申し訳ないが、育児世帯に最大の打撃を与えたのは
氏の目の前にいる安倍首相である。
円の切り下げで実質賃金をリーマンショック時並みにまで減少させ、
社会保険料負担をじりじり高めているのが安倍政権なのだから。
挙げ句の果てに消費税を引き上げながら育児支援予算は雀の涙という体たらくなのだから。

はっきり予言しておくが、安倍政権下で子供の貧困率は過去最悪を記録するだろう
間違った政策の数々から見て、容易に予想できることだ。

寄付を募って何とかできるとの空疎な幻想にすがってはいけない。
今すぐ、富裕高齢層への巨額給付を徹底的に削減し、
貧弱過ぎる育児支援を一気に増やさなければならない。

高所得層ほど恩恵を得ている配偶者控除をなくし、
育児世帯への現物給付と低賃金労働者への給付付き税額控除に予算移転しなければならない。
愚図愚図と無駄に時を過ごしていると、それだけ日本経済に及ぶ害が拡大する。


夫婦で4億円寄付、首相が感謝状 子どもの貧困解消基金(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASJ7F5FV1J7FULFA024.html
”子どもの貧困解消のための寄付を募る「子供の未来応援基金」について、安倍晋三首相は13日、基金に夫婦で4億円の寄付をした埼玉県狭山市在住の住宅会社会長、河野経夫さん(74)と妻の敏子さん(68)に感謝状を贈った。
 同基金は、貧困家庭の子どもを支援するNPO法人への助成などを目的に、官民で昨年10月に創設。夫妻の寄付を含めて寄付総額は計6億1779万円(6月26日現在)まで増えた。経夫さんは記者団の取材に「猛烈な少子化で、このままだとこの国は終わると思った。なんとか子どもたちを支援する起爆剤になればと思った。〔以下略〕”

河野氏を含めてもたった6億円しかない。
この国の富裕高齢層の公共精神の剥き出しの真実が、この数字に如実に表れている。
(断言してもいいいが、この1000倍以上の額の資産が彼らによって海外に持ち出されている筈だ)


社会的入院、1年超の子どもも 虐待恐れ退院できず(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASJ7Q65WFJ7QPTFC00T.html
入院した子どもが、保護者に虐待や養育力不足の疑いがあるため治療後も退院できない「社会的入院」について、1年を超えたり、当初から医学的な入院理由がなかったりするケースが大阪府内で複数ある実態が、一般社団法人大阪小児科医会の調査でわかった。「虐待が心配で家に帰せない」「施設に空きがない」などの理由からだ。
 医会は、小児科病床がある府内106病院を対象に昨年9月から調査。昨年6月までの3年間で、4日以上の社会的入院が少なくとも30病院で延べ168人いた。追加調査で、うち76人の詳しい状況がわかった。
 医会によると、大阪市近郊の病院では、10歳男児が内科の病気で入院。ネグレクト(育児放棄)の疑いがあり、治療後も1年近く社会的入院が続いた。大阪市内で36日間入院した1歳男児もネグレクトの疑いがあり、医学的な入院理由はそもそもなかったとみられるという。
〔中略〕
 社会的入院の期間は、1年以上が3人、30日以上1年未満も20人いた。”

また、河野氏が考えているように寄付では問題は解決しない。
日本の貧困問題はそもそも家庭の抱える深刻な問題に由来することが多く、
現金給付ではなく現物給付と非営利組織のサポートがなければ普通の生活も送れないのだ。

貧困対策に熱心な団体も例外なく国民負担の問題を直視せず、
費用対効果を考慮した政策を提言する能力に欠けていて
カネさえあれば何とかなるように幻想を振りまいている。

日本の貧困問題が二重の意味で深刻なのは、この社会に
こうした自己欺瞞的な構造が深々と根付いているからだ。
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