今週の『エコノミスト』の特集「景気回復のウソ」は妥当な内容だった。
甘利大臣の「言い訳」やリフレ派の「裏切り」ぶりが興味深い。
何と言っても特集の中で一押しなのが、P28の明治安田生命・小玉祐一氏による
「強気の設備投資計画、下方修正へ」である。
氏によれば、9月の時点での大企業の売上見通しは前年比0.9%増、
全規模・全産業では0.4%増でしかなく、伸びは過去6年間で最低だそうだ。
日本企業が設備投資を減速させているのは、合理的で至極当然の判断なのである。
(氏は「例年以上の下方修正幅も」と懸念している)
大企業の設備投資は相変わらず海外重視で、
国内では「維持・補修」の比率がじりじり増えている。
これが次元の低いアベノミクスに相応しい帰結なのである。
しかもドル円が100円から130円に上昇するゾーンでは、
試算によれば「成長率の押し上げ効果はゼロに近い」そうだ。
一方、片岡剛士氏はあれだけアベノミクスを賞賛しておきながら、
マイナス成長を消費税へ責任転嫁して退避モードに入っている。
間接税の重いドイツやスウェーデンに成長率でも生産性でも劣るという
日本経済の情けない現実をいまだに認識できないようである。
(小玉氏の分析と比較すると優劣がはっきりと分かる)
「米雇用統計がポジティブでも日本の内需は変わらない。
トリクルダウンなど起きる訳がないのだ」
と当ウェブログが先週書いた通りであろう。
富国生命の市岡繁男氏の連載は、今回は珍しくポジティブな内容だった。
ただ、債権から株式に資金移動がある「買い場」の前に「トリプル安」だそうだ。
(その程度で済めばいいのだが…)
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊ダイヤモンド』のテレビ局・マンション偽装の両立て特集は完璧だった。
特に冒頭の「欠陥マンションの見抜き方」は保存版と言えよう。
個人的にはマンションは地盤の良い地域の中低層しか買うべきではないと考えていたが、
矢張りその見方は正しかったと確信できた。特にタワーマンションのALCは余りに怖過ぎる。
資産として保有していると甚大な「流動性リスク」に突然晒される危険性がある。
テレビ特集、と言うよりフジ凋落特集の方も興味深い。
フジは総中流意識がありメガトレンドに流されやすい時代は良かったのだが、
社会の多様化が進むと従来の手法が悉く裏目に出ているのだろうと思う。
その点で保守的で大きく動かない日テレよりも打撃が大きくなったのではないか。
階層社会化が明確になってくると、テレ東やテレ朝のような路線が
より広い層に受け入れられるようになるのだろう。
(乏しい予算で工夫しているのが如実に伝わり共感できる)
そもそも日本のテレビ局は他先進国に比べて異様に賃金水準が高かった。
新聞と同様、適正水準への「調整」は不可避であろう。
何より、利益の源泉である日本の人口減少が効いてきたところに
ネットメディアの侵食が相俟って、未来が見えない状況だ。
「優雅に沈下」できればいいのであろうが、どこかで「沈没」に転じそうな気配もある。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊東洋経済』のスマホ料金特集は悪くないが切れもない。
丁寧に労力をかけた割には報われない特集だったのではないか。
スマホ料金は客観的に見て実質的なカルテルに近いので、
経済学者に依頼して計量分析すると面白かったろう。
それよりも、真相レポート「英中が手を結ぶ 人民元国際化戦略」が素晴らしい。
「ロンドンの利益のため英国は何でもする」と書かれているように、
この英中提携の根底にはシティの利益がある筈だ。
脱法的なユーロダラー市場で大儲けしたシティが二匹目の泥鰌を狙っているとの
このレポートの見方は、実に的確である。
シティは拝金主義の権化であり人権問題など歯牙にもかけていないからだ。
佐藤優氏のコラムは今回も良かったが、
マンション杭打ち偽装の根源には太平洋戦争時と同じく
「不合理的な組織の理論に抗し得ず滅亡までずるずる流される」
悪しき因習があると見た方が正しかろう。
しかしそれでも氏の言う「年末にかけて、国内を揺るがす最大の問題になる」
との警告は正しい。この問題は非常に根深く、この程度では済まない筈だ。
(しかも根本には、愚劣な「国土強靭化」による資材・人件費の高騰もある)
◇ ◇ ◇ ◇
次週は東洋経済に注目、選挙向けに「介護離職ゼロ」と騙るキャッチコピーの嘘は明白だから。
▽ 井上達夫教授も「偽善」と喝破するリベラル特集も興味深い、次元の低い安倍政権と共倒れだろう
▽ ダイヤモンドはマイナンバーでは後発なのだから、タイトル「決定版」とかにしないのだろうか?
▽ エコノミストはMRJ特集、個人的にはホンダジェットの方が期待できると思っていたりする
カタルーニャの独立問題にも目を配っておきたい。
甘利大臣の「言い訳」やリフレ派の「裏切り」ぶりが興味深い。
何と言っても特集の中で一押しなのが、P28の明治安田生命・小玉祐一氏による
「強気の設備投資計画、下方修正へ」である。
氏によれば、9月の時点での大企業の売上見通しは前年比0.9%増、
全規模・全産業では0.4%増でしかなく、伸びは過去6年間で最低だそうだ。
日本企業が設備投資を減速させているのは、合理的で至極当然の判断なのである。
(氏は「例年以上の下方修正幅も」と懸念している)
大企業の設備投資は相変わらず海外重視で、
国内では「維持・補修」の比率がじりじり増えている。
これが次元の低いアベノミクスに相応しい帰結なのである。
しかもドル円が100円から130円に上昇するゾーンでは、
試算によれば「成長率の押し上げ効果はゼロに近い」そうだ。
一方、片岡剛士氏はあれだけアベノミクスを賞賛しておきながら、
マイナス成長を消費税へ責任転嫁して退避モードに入っている。
間接税の重いドイツやスウェーデンに成長率でも生産性でも劣るという
日本経済の情けない現実をいまだに認識できないようである。
(小玉氏の分析と比較すると優劣がはっきりと分かる)
「米雇用統計がポジティブでも日本の内需は変わらない。
トリクルダウンなど起きる訳がないのだ」
と当ウェブログが先週書いた通りであろう。
『週刊エコノミスト』2015年 11/17号 | |
富国生命の市岡繁男氏の連載は、今回は珍しくポジティブな内容だった。
ただ、債権から株式に資金移動がある「買い場」の前に「トリプル安」だそうだ。
(その程度で済めばいいのだが…)
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊ダイヤモンド』のテレビ局・マンション偽装の両立て特集は完璧だった。
特に冒頭の「欠陥マンションの見抜き方」は保存版と言えよう。
個人的にはマンションは地盤の良い地域の中低層しか買うべきではないと考えていたが、
矢張りその見方は正しかったと確信できた。特にタワーマンションのALCは余りに怖過ぎる。
資産として保有していると甚大な「流動性リスク」に突然晒される危険性がある。
『週刊ダイヤモンド』2015年 11/14号 | |
テレビ特集、と言うよりフジ凋落特集の方も興味深い。
フジは総中流意識がありメガトレンドに流されやすい時代は良かったのだが、
社会の多様化が進むと従来の手法が悉く裏目に出ているのだろうと思う。
その点で保守的で大きく動かない日テレよりも打撃が大きくなったのではないか。
階層社会化が明確になってくると、テレ東やテレ朝のような路線が
より広い層に受け入れられるようになるのだろう。
(乏しい予算で工夫しているのが如実に伝わり共感できる)
そもそも日本のテレビ局は他先進国に比べて異様に賃金水準が高かった。
新聞と同様、適正水準への「調整」は不可避であろう。
何より、利益の源泉である日本の人口減少が効いてきたところに
ネットメディアの侵食が相俟って、未来が見えない状況だ。
「優雅に沈下」できればいいのであろうが、どこかで「沈没」に転じそうな気配もある。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊東洋経済』のスマホ料金特集は悪くないが切れもない。
丁寧に労力をかけた割には報われない特集だったのではないか。
スマホ料金は客観的に見て実質的なカルテルに近いので、
経済学者に依頼して計量分析すると面白かったろう。
それよりも、真相レポート「英中が手を結ぶ 人民元国際化戦略」が素晴らしい。
「ロンドンの利益のため英国は何でもする」と書かれているように、
この英中提携の根底にはシティの利益がある筈だ。
脱法的なユーロダラー市場で大儲けしたシティが二匹目の泥鰌を狙っているとの
このレポートの見方は、実に的確である。
シティは拝金主義の権化であり人権問題など歯牙にもかけていないからだ。
『週刊東洋経済』2015年 11/14号 | |
佐藤優氏のコラムは今回も良かったが、
マンション杭打ち偽装の根源には太平洋戦争時と同じく
「不合理的な組織の理論に抗し得ず滅亡までずるずる流される」
悪しき因習があると見た方が正しかろう。
しかしそれでも氏の言う「年末にかけて、国内を揺るがす最大の問題になる」
との警告は正しい。この問題は非常に根深く、この程度では済まない筈だ。
(しかも根本には、愚劣な「国土強靭化」による資材・人件費の高騰もある)
◇ ◇ ◇ ◇
次週は東洋経済に注目、選挙向けに「介護離職ゼロ」と騙るキャッチコピーの嘘は明白だから。
▽ 井上達夫教授も「偽善」と喝破するリベラル特集も興味深い、次元の低い安倍政権と共倒れだろう
『週刊東洋経済』2015年 11/21号 | |
▽ ダイヤモンドはマイナンバーでは後発なのだから、タイトル「決定版」とかにしないのだろうか?
『週刊ダイヤモンド』2015年 11/21号 | |
▽ エコノミストはMRJ特集、個人的にはホンダジェットの方が期待できると思っていたりする
『週刊エコノミスト』2015年 11/24号 | |
カタルーニャの独立問題にも目を配っておきたい。