【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「ザ・シューター 極大射程」:佐賀一丁目バス停付近の会話

2007-06-02 | ★東20系統(東京駅~錦糸町駅)

この風景、ブレてない?
夜景を狙って撮ったんだけど、うーん、俺もこんな腕前じゃ狙撃手には、なれないかな。
なに、狙撃手になんてなりたいの?初耳だわ。「ザ・シューター」なんていう映画を観たせいね。
だって、かっこいいじゃないか。
「ロッキー」観るとボクサーになりたいっていうし、「アポロ13」観ると宇宙飛行士になりたいっていうし、「ダイハード」観ると警官になりたいっていうし、ほんとに頭軽いのね。
でも、かっこよかっただろ、マーク・ウォールバーグ。
海兵隊の狙撃手で今は山の中にこもっている男が大統領の暗殺を阻止するために再び狙撃の腕を見こまれるんだけど、実はそれが大きな陰謀だったというポリティカル・サスペンス。
とにかく、サスペンスものはこうでなくちゃいけないというお手本のように映画が始まってすぐに話が動き出し、思わせぶりなところがまったくないまま、最後まで一気に見せる。
そうは言っても、結局ドンパチが多くて、いったい何人の人間が死んだことかと思うと哀しくて哀しくて・・・。
お前なあ、こういう類の映画はそういう見方しちゃあ最低だぜ。主人公と一緒に一気に走り抜けなきゃさあ。
ちょっとケネディ暗殺事件を思わせるようなところがあってそこは興味深かったけどね。
そこを深掘りすれば、たとえば「ブラッド・ダイヤモンド」みたいな告発映画になったのかもしれないけど、こちらはアクションに徹しているから、そういう社会派映画にはならない。そこがまた潔くて嬉しくなっちゃうね。
でもこの主人公、「愛国心」て言葉に踊らされて陰謀に巻き込まれちゃうのよね。あれって、「愛国心」をふりかざそうとするいまの日本の政治家たちに対する批判よね。
それは深読みのし過ぎだ。「自由のために戦争をするなんて嘘っぱちに決まってるのに、それを許すのがアメリカ国民だ」みたいなセリフもあったけど、それ以上全体の流れを乱すような深入りした展開にはならない。娯楽映画の節度を知っている。
まあ、「ディパーテッド」とかに比べれば、よほどすっきりしている映画で、主演のウォールバーグもあの映画の中より全然生き生きしているのは認めるけど・・・。
親友の彼女だった女と親しくなるんだけど、見え透いたラブシーンはない。そこがまた泣かせるじゃないか。
たしかに凡庸なハリウッド映画ならすぐくっついちゃいそうなところなのに、珍しく抑制がある映画だったわ。
彼女のそばかす。それがまたいい。決して美人じゃないけど、俺は買いだね。
狙撃手の味方になる新米警官もよかったわよ。続編はこの二人がもっとコンビで活躍する映画なんてどうかしら。
ヘリコプターショット、スローモーション、広大な風景。とにかく映画のツボを抑えて安心して観ていられる。どうして日本ではこういプロフェッショナルな出来のアクション映画が少ないんだろう。
主人公の肉体と同じで、よけいな部分はそぎ落とす。それが引き締まった映画をつくるのよね。
お、うまいこと言うねえ。お前にもようやくこういう映画の良さがわかってきたか。
でも、このブレた風景の良さはわからないわよ。
俺には狙撃手になる腕はないかもな。
狙撃手になる頭もね。


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佐賀一丁目バス停



ふたりが乗ったのは、都バス<東20系統>
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