【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「恋する日曜日 私。恋した」:不動尊前バス停付近の会話

2007-06-13 | ★東20系統(東京駅~錦糸町駅)

絵馬がビッチリだな。
それだけ、世の中には願いたいことがたくさんあるってことかしら。
堀北真希主演の「恋する日曜日 私。恋した」みたいにか。
あの映画にはそんなにたくさんの願いごと、なかったじゃない。不治の病に冒された女の子が初恋の人に会いに行くっていうだけの話だもん。
ストーリーだけ聞くと、また甘ったるい難病ものかよ、と思うけど、実際はそういう印象でもなかったな。
会ってどうしようっていうこともないし、自分の運命を呪うわけでもないし、主人公がまだ元気だから見た目につらくないし、それこそ何かを必死に願うなんてシーンもないしね。
演じるのが堀北真希だから、最初から最後までキリッとして、なよなよした感じにならないし、同情を買おうという仕草も見せない。潔い、っていえば潔いけれど、それだけにジワジワとつらい。
泣き叫ぶシーンもあるにはあったけど、それでも自分の本当の思いを相手に押しつけるわけではない。
とにかく、死期が近いのに、自分の病気のことも自分が相手をどう思っているかも決して口にしない。
もちろん、それを許さない状況っていうのもあるんだけど、健気としか言いようがないわよね。
あざとく涙を誘おうとする映画じゃないってことだ。ある意味、長崎俊一の「8月のクリスマス」みたいな映画だな。あれほどハートウォーミングな感じはないけど。
ちょっと地味かしら。
それだけにヒットは難しいだろうし、映画館の観客なんか数えるほどしかいなかった。観た人は貴重な体験をしたってことだな。
でも、ラストの長回しには目がうるんだわ。堀北真希がバスの中に立って、バスガイドの真似をしながら自分の生い立ちを淡々と語る場面。
長回しで延々と写すものだから、この映画の監督は相米慎二かと思ったぜ。
監督は「ヴァイブレータ」や「やわらかい生活」の廣木隆一。だからか知らないけど、長回しに耐え切れなくなって、相手の男の顔に切り替えた部分があって、あ、惜しいと思っちゃった。
だけど、ああいう描写に接したときだよな、「ああ、映画を観てるなあ」っていう気持ちになるのは。心情をベラベラと語るわけではないのに、描写の仕方でそれ以上に切ない思いが観てるほうに伝わってくるという瞬間・・・。
あまりに長い間バスに乗っているから、いつ次の停留所が来てバスが停まってしまうかとドキドキしたけど、停まらなかったわね。
そりゃ、田舎のバスは都バスとは違う。
それにしても長くない?
その代わり、あのあっさりしたエンディング。グダグダ、グダグダ、名残惜しそうに終わる映画が多い中、スッキリした切り上げ方で好感度がさらにあがった。
私も絵馬にスッキリ願いごとを書こうかな。
「10キロ減」てか。
ああ、確かにスッキリねえ・・・。


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不動尊前バス停



ふたりが乗ったのは、都バス<東20系統>
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