【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「ブラッド・ダイヤモンド」:日の出桟橋バス停付近の会話

2007-04-07 | ★虹01系統(浜松町駅~ビッグサイト)

日の出という名がつきながら、こう、どんよりした空模様の日の出桟橋に立つと感慨深いものがあるな。
どうして?
いや、アフリカの日の出はいつ来るんだろうって思ってさ。
まあ、最近は「ホテル・ルワンダ」とか「ナイロビの蜂」とか「ラストキング・オブ・スコットランド」とかアフリカを舞台にした映画が流行のように出てきたけど、どれも日の出とはほど遠い思いに陥る映画ばっかりだったもんね。
そんななか、真打ち「ブラッド・ダイヤモンド」の登場だ。
真打ち?この映画もアフリカの暗い現実を描いた映画の一本だとは思うけど。
ああ。いままでの映画と同じく、欧米のわがままによってアフリカの人々が悲劇に巻き込まれるという構図を告発した映画には違いない。
欧米というより日本人も含めてでしょ。先進諸国がダイヤモンドをほしがるんで、そのダイヤをめぐって生産国アフリカで悲劇が起こるって話なんだから。
捕らえた捕虜の手を切り落とすなんて、アフリカの人ってなんて残酷なんだと思ったら、もともとはベルギー人がアフリカ人に対してやっていたことだって言うんだから、ひどい話だ。
ホテル・ルワンダ」の紛争ももともとはベルギーの植民地政策から始まったっていうのを思い出したわ。
子どもが日常的に兵士として育てられてるっていうのも、衝撃的だよな。幼い子どもが捕虜を撃ち殺しちゃうんだぜ。
「イノセント・ボイス 12歳の戦場」では南米の国が子どもを奪って戦士に育て上げてたけど、世界中どこも悲劇は変わらないってことかしら。
「男たちの大和」を観て、まだこんないたいけな若者たちが犠牲になるなんて、って泣いてた人に言いたいよな。それ以上に悲惨なことが世界ではまだ続いているんだってことを。
「戦争中なのに、人ひとり助けてどうするの?」ってジャーナリスト役のジェニファー・コネリーが口走って、あわててそのことばを反省する場面があるけど、これだけ虐殺の場面を観てしまうと、そういうことを口にしてしまう気持ちもわかってしまうから怖いわよね。
彼女は記事を書いてるときに「その記事で誰かが助けに来るのか」と現地人に聞かれて「誰も来ない」って答える。あれもいいセリフだ。
いままでのアフリカの映画と同じくらい、いい映画じゃない。
ところが、いままでのアフリカ映画と違って、「ブラッド・ダイヤモンド」はそういうことを辛気臭くならずに観ていられる。
どうしてかしら?
やっぱり、主役にデカプリオとジェニファー・コネリーを持ってきたところに勝因のひとつがあるんじゃないか。なんといっても華がある。デカプリオなんて出世作の「ギルバート・グレイプ」以来の好演じゃないかと思えるし、ジェニファー・コネリーの女性ジャーナリストなんて、ハリウッドお得意の配役のような気がするけど、おかげで問題提起の会話も肩が凝らずに聞いていられる。
ほんと、ダイヤの売人役のデカプリオは「ディパーテッド」なんかより全然いいわよね。案外、アクション映画向きなんじゃない?
そうそう。残酷なシチュエーションも多いけど、アクションで見せるから陰湿にならない。
ラストシーンも、ハリウッドの社会派映画の教科書みたいな、明るい未来を予感させる終わり方だもんね。
そして、全体を貫く芯となるのが、生き別れた父子の再会をめぐるサスペンス。
どこで、どう再会するのかって気が気じゃなくて、観ている間じゅう気持ちが引っ張られるのよね。これも、ハリウッド映画の教科書みたいなストーリー構造よね。
オランダ映画の「ブラックブック」もサスペンス映画としてはよくできたいたけど、「ブラッド・ダイヤモンド」に比べると複雑すぎてちょっと嘘くさいし、やっぱり、第二次世界大戦っていう時代背景も、アフリカの紛争に比べるといまや切実感に欠ける感じがして損をしている。
デカプリオをジンバブエ生まれの白人にしているのもうまい設定じゃない?白人ていうと、アフリカ映画では、どうしても加害者の立場になって陰気臭くなってしまうけど、アフリカの紛争の中で両親を失くした役にしておけば、彼も被害者の立場になれる。
おー、いいとこ、つくねえ。要するに、問題提起を鼻につかない形でうまく娯楽映画に翻訳し直したんだよ、この映画は。話がこなれていて危なっかしいところがないんだよな。
それが、アフリカ映画の真打ち登場って意味ね。
そういうこと。
でも、デカプリオの字幕に「給料三ヵ月分でダイヤモンド」て出たのには驚いたわ。給料三ヵ月分て、世界共通なのかしら?
さあ、原語では何て言ってるのかな。こういうときだよなあ、上司とNOVA友になっとけばよかったなあ、て思うのは。それとも監督のエドワード・ズウィックが「ラスト・サムライ」のロケで日本に来たとき、覚えて帰ったとか?
まさか。昔はよく映画館のCMで「給料三ヵ月分」てやってたけど、最近はとんと見ないじゃない。
でも、ロンドンのシーンでは、ご愛嬌なのか、いかにもわざとらしく日本の老夫婦がカメラで観光名所を撮影しているシーンが一瞬あったりしたぜ。
で、あなたはいつ、くれるのよ、給料三ヵ月分のダイヤ。
いや、こういう映画を観ちゃうとなあ・・・。
こういう不正な密輸ダイヤはもう出回ってないって、最後に字幕が出たじゃない。
え、そうだっけ?
とぼけちゃって・・・。
いや、ちゃんとそんな字幕を見てたなんて、やっぱり女だなって思っただけだ。
で、くれるの、くれないの?
いや、そういう会話につながる映画じゃないと思うんだけど・・・。
なるほど、私たちの日の出はまだ来ないってことね。
はい・・・。


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