【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「父親たちの星条旗」:上野広小路バス停付近の会話

2006-10-29 | ★学01系統(東大構内~上野駅)

あのアメリカの旗をデザインした看板は何?
アメリカ屋。いろんなアメリカ製品を売ってる。
旗とかも売ってるのかしら。
硫黄島で最初に立てたほうの旗も売ってたりしてな。
まさか。
ほんと、「まさか」だよな。あの有名な硫黄島の星条旗の写真に写ってる旗が実は二本目の旗で、一本目の旗は誰かお偉いさんの記念にって持って帰ちゃったなんて。
で、その二本目の旗をたまたま立てただけの兵士が英雄に祭り上げられちゃうなんて。
本人たちはその欺瞞に一生悩み続ける。
監督がクリント・イーストウッドだから、ただの戦争映画にはならないだろうとは思っていたけれど、「父親たちの星条旗」って、期待を裏切らない出来よね。
あの有名な写真がどういう意味を持っていたのか、冷静に検証していて立派だよ。「男たちの大和」だって、大和がどういう意味を持っていたかもっと冷静に検証すればこれくらい立派な映画になっていただろうに、若い乗組員が海に散ってかわいそうだった、で終わってて、仲代達矢なんてただのおじさんにしか見えない。
出口のない海」(9.18の記事)のときの会話でも出た話ね。ただ回想するだけのおじさんならいらない。
回想シーンがいまにつながっているかどうかということが大事なんだ。「父親たちの星条旗」はしっかり現在につながっていて立派だよ。
愛国心をどうとらえるかっていうのは、いままさにここにある問題だものね。
兵士のセリフに「茶番だ」っていうのがあるけど、ほんと、すべて茶番なんだよな。しかも、アメリカ的にショーアップすればするほどむなしくなってくる。アホらしくて見てられないんだけど、それが戦争ってもんなんだな。
野球場みたいなところで観客を満員にして兵士たちに旗を立てるところを再現させるなんて、背筋が凍ったわ。
硫黄島の山をかたどったケーキに赤いシロップをかける無神経さとかな。
イーストウッドって、けして誰かを大声で泣かせたり、これみよがしのクライマックスシーンをつくったりしないのに、かえって言いたいことが浮かび上がってくるのよね。
戦場の悲惨さも、銃後の悲惨さも、そして、その悲惨さは戦争が終わっても続くということまで描いて見事というしかない。
恋人の出し方も、ただの善良な女の子って感じじゃなくてまた、リアリティを感じるのよね。
結局、愛国心を煽って戦場に送って利用できるだけ利用したらポイと捨てる、っていう国のやり方はアメリカも日本も変わらないんだよな。いや、世界中が変わらない。
だから、兵士は戦友のために戦ったと思うしかないのよね。期待にたがわない、ううん、期待以上の名作だわ。
それにしても、あの一本目の旗はどこに行っちゃったんだろうな。
アメリカ屋で探してみる?
いや、それじゃあ愚かなお偉いさんと一緒になっちゃうからやめとこう。
そうね、国民一人ひとりが冷静にならなくちゃね。


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「サンキュー・スモーキング」:竜岡門バス停付近の会話

2006-10-28 | ★学01系統(東大構内~上野駅)

東大の薬学系総合研究棟・・・か。禁煙できる薬でも開発してくれないかな。
なに、言ってるのよ、あなたから煙草を取ったら何も残らないじゃない。
そりゃそうだ。映画の「サンキュー・スモーキング」でも煙草を飲んでもかまわないって言ってるしな。
体に悪くないなんて一言も言ってないわよ。
そうだっけ?
この映画の主人公は煙草会社のPRマンだけど、あげあしを取られるようなことは決して言わないの。それでいて、勝手な論理で禁煙論者を上手に煙に巻いて結局論争をうやむやにしてしまうすごいやり手なんだから驚くわ。
ははは。煙草だけに文字通り煙に巻くってことか。
宣伝文句にもあるけどね。
「デベートは相手が納得するんじゃなくて、聴衆が納得すればいいんだ」とか「子どもに煙草の害を教えるのは親の責任だ」とか思わず納得するようなことを次から次に笑顔で言うから、こちらもついつい、うなずいちゃうんだよな。
別に信念があるわけじゃなくて、話術がうまいからこの仕事についているだけ、っていうのがまた妙に納得しちゃうのよね。
「ローンのために働いてるだけだ」とか言われるとつい、身につまされちゃうよな。
アーロン・エッカートがまた、「ブラック・ダリア」とはうって変わって軽いヤツを生き生き演じてるから、煙草会社の片棒をかついでるのに、なんかいいヤツに見えてきちゃうのよね。
だから、この映画を見ると、ま、このまま煙草飲んでてもいいか、って気にさせられちゃうんだよな。
でも別に、喫煙賛成がテーマの映画じゃないからね。
そりゃ、わかってるさ。むしろ、こういうヤツがいるから、アメリカは牛肉輸入禁止措置を取る日本の考えが理解できないんだろうと思っちゃうよ。
「食べるか食べないかは個人の自由だ」っていう考えよね。でも、そこには何が安全で何が安全でないかを明確に明示する責任があるんだけどね。
とにかく映画としては、抜群におもしろい。タイトルバックの煙草のイラストからして楽しくてしょうがない。
最近て、そっけないタイトルバックが多いもんね。
そっけないタイトルは、ウディ・アレンだけで十分だ。
初代マルボロマンのエピソードとかあんな扱いして問題にならないのかって、心配になっちゃっうほどよね。
まあ、日本じゃ無理かもな。こういう問題作を平気でつくれちゃうところにアメリカの懐の深さがあるんだよな。
その懐の深さが牛肉問題のいい加減さにもつながるんだけどね。
表裏一体ってやつだな。
とにかく一見の価値ありよ。
この際、この主人公と東大の学生のディベートってのはどうだい?
だから言ってるでしょ。うまく煙に巻かれちゃうって。
うーん、煙草でも吸って考えるか。
だめよ、バスの中は禁煙なんだから。
ハイ。


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「キャッチボール屋」:東大病院前バス停付近の会話

2006-10-27 | ★学01系統(東大構内~上野駅)

東大病院の前っていいグランドになってるんだな。
東大生って、勉強ばかりして運動なんかしないかと思ったけど、そんなこともないのね。
そりゃ、東大生だって、キャッチボールくらいするだろ。
映画の「キャッチボール屋」はなんだかごちゃごちゃした公園でキャッチボールしてたけど、これくらい広いところで伸び伸びとやりたいわよね。
ま、それが世間てもんだ。あらゆる障害を超えてどこまで愛する人とキャッチボールを続けられるか。
そんなかっこいい映画じゃなかったわよ。成り行きでキャッチボール屋になった男が奇妙な人々と交流ともいえないような交流をするってだけの話。
まあ、愛だの恋だのはなかったな。
ドラマチックなこともほどんどなく。
高校野球のエピソードは泣かせるけど、でも映画自体はことさらそれを強調するわけでもなく。肩の力を抜いてるのな。
そういう映画って、観てる方も肩が抜けて、なんかダラダラ見てるだけで癒されるのよね。
時代にぴったりってやつかな。ちょっと感じは違うけど、「かもめ食堂」系の映画だよな。
俳優たちがみんないいのよね。熱演ていうんじゃなくて自然体で、淡々としてて。
大森南朋も寺島進も松重豊も光石研もみんないい。
光石研なんて、キャッチボールが下手な役なんだけど、下手そうにボールを取るって、かえって難しかったんじゃないのかなあ?
それもまた自然に演じてたよな。
それからあのOL役。あんまり見かけないけど、何て言うのかしら。
キタキマユ。ヘンなヤツ。エンタの神様にでも出ていそうなキャラクター。
この映画のヘンさって、北野武の映画のヘンさにどこかリズムが似てるなあと思ったら、監督の大崎章は北野武の映画の助監督してたんだってね。
北野武ほどの洗練さはなかったけど、そのぶん、素朴でこれはこれでよかったよな。
別に傑作でも秀作でもないし、特筆すべきシーンもないんだけど、どうもけなすのにためらわれる愛すべき映画なのよ。
東大生のように秀才ではないけど、東大の生協のおばさんくらいの愛嬌はあるって感じかな。
例えがよくわからないけど、取材協力東大病院ってタイトルに出てたわね。
痴呆の取材に協力したのかね。
老人の痴呆がすべての発端というのも案外意味深ね。ファンタジーの始まりって感じで。
人はみな、誰もが誰かとキャッチボールをしたがっている・・・。
なるほど。たまにはあなたも頭よさそうなこと言うのね。
たまにじゃない。いつもだ。


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「初恋」:東大構内バス停付近の会話

2006-10-25 | ★学01系統(東大構内~上野駅)

三億円事件の次の年にこの安田講堂が陥落したんだよな。
学生運動華やかなりし頃ね。
壮絶だったもんなあ、占拠学生と機動隊の闘い。
って、あなた、実際に体験したことあるの?
ないけど。
じゃあ、大きな顔して言わないでよ。
おいおい、三億円事件を題材にした「初恋」の監督だって、リアルにあの頃は体験していないはずだ。リアルに体験したことじゃなきゃなにも言えないなんておかしいぜ。たとえば、「ALWAYS 三丁目の夕日」の監督だって、あの映画の時代は知らないはずだ。
そりゃそうね。でも、どちらの時代も知らない私が見ても、「ALWAYS 三丁目の夕日」は、ああ、あんな時代もあったなあ、と思えるのに、「初恋」は、ああ、あんな時代もあったなあ、とどうも思えないのはどうしてかしらね。
そりゃ、タイトル見りゃ一目瞭然だ。この映画が描きたいのは、三億円事件の時代じゃなくて、「初恋」をした女の子の心の揺れなんだ。
たしかに、いまをときめく宮崎あおいは表情豊かでかわいいけど、それだけじゃない。あの時代にいなければいけなかったっていう必然性がどうも感じられないのよね。
そんなことどうでもいいじゃん。かわいけりゃ何でもいい。
そういうもんじゃないでしょ。女子高生が初恋のために三億円事件の犯人になったって話よ。もうちょっと新鮮な感じがしてもいいのに、映画を観ててもあんまりワクワクしないのはどういうわけ?三億円事件と女子高生の初恋なんてミスマッチでおもしろいに決まってるのに。
ああ、テレビドラマの「マイボス・マイヒーロー」なんて、やくざとツルゲーネフの「はつ恋」の組み合わせがミスマッチでおもしろかったのに、三億円事件と女子高生の「初恋」の組み合わせがミスマッチなこの映画にはそういう身を乗り出させるおもしろさが欠けているのは、たしかだな。
もっと元気でもよかったのかもね。
ああいう時代はそんな元気なやつはおらんだろう、という先入観があったのかもしれないが、なんか、映画全体がしんねりむっつりしてるんだよな。
そんな部分で時代を表現しないで別の時代表現があったのかもね。周囲の学生たちなんて、誰もキャラクター立ってなかったし。
それなのに、最後に「アメリカン・グラフィティ」みたいに、その後の彼らの人生を語られたって感動もなにもないよな。
あの「アメリカン・グラフィティ」方式は、ちゃんと本編の中で思い入れのできるキャラクターにしておかないと全然機能しないなんて、素人にもわかるのにね。
やっぱり、宮崎あおいの表情を見る映画なんだよ。頭をなでられたときのうれしそうな顔を見れただけで俺は満足だ。
レベルが低いなあ。そんなレベルだから東大落ちたのよ。
え、なんの話だ?
あ、ごめん。他の人と勘違いした。
誰と?
私の初恋の人・・・。
うそ!


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都05系統のバス停と13本の映画たち

2006-10-24 | ■通ったバス停、観た映画(一覧)
無事、都05系統も乗り終えたわね。
築地とか銀座とか有楽町とかって実は映画館も多いんだよな。
私が好きなのは「銀座並木座」。
って、そんな映画館あったか?
昭和を代表する名画座よ。たしか1998年に閉館しちゃったけど。
ふーん。
「地下鉄<メトロ>に乗って」みたいな映画は並木座で観たかったなあ。
感慨にふける前に、おさらいをしておこうぜ。


晴海埠頭:「太陽」
ロシア映画。でも日本人が見ても違和感なし。

ほっとプラザはるみ入口:「フラガール」
アカデミー賞取れないかなあ。しずちゃんは、助演女優賞取れないかなあ。

ホテルマリナーズコート東京前:「ホテル・ルワンダ」
アフリカのこと知ってる?ルワンダのことは知ったわ。

晴海三丁目:「薬指の標本」
原作小川洋子。でもフランス映画してた。

勝どき駅前:「LOFT」
ホラー?コメディ?

勝どき橋南詰:「夜のピクニック」
80km歩くだけ。人生なんてそんなもんよ。

築地六丁目:「寝ずの番」
敬老映画。お達者で。

築地三丁目:「西瓜」
不思議な味わい。スイカジュースみたい。

築地:「ワールド・トレード・センター」
感動秘話。ユナイテッド93も見よう。

銀座四丁目:「カポーティ」
寒々。でも、ティファニー級の高級品よ。

有楽町駅前:「ストロベリーショートケイクス」
甘くないショートケーキ。味は?結構おいしかったけど。

東京国際フォーラム前:「ブラックダリア」
美術は一流。映画は超二流。

東京駅丸の内南口:「地下鉄<メトロ>に乗って」
「並木座」で観たかった?「並木座」で観たかった。

 

といったところで、一息つくか。
では、また会える日までごきげんよう。
って、いつだ?
たぶん、明日。
それじゃあ、一息つく間もないじゃないか。


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