【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「300」:永代二丁目バス停付近の会話

2007-06-06 | ★東20系統(東京駅~錦糸町駅)

おや、こんな都心にアスレチックがあるなんて。
よーし、体を鍛えてスパルタの軍団に入るぞ。
あなた、ついこの間、「ザ・シューター」観てスナイパーになるって言ったばかりじゃない。
いやいや、「300」なんていう血沸き肉踊る映画を観ちゃったもんだからさあ。
ほんとに、血沸き、肉踊るだけの映画。他に何もなし。
それで十分だろ。300人しかいないスパルタ兵が100万人のペルシャ兵を相手に戦うんだぜ。
それだけ人数に差があれば普通は頭を使ってその差を埋めようとするわよね。ところがこのスパルタ兵は肉体でがんばろうとしか考えないの。
そんなことないだろ。敵を狭い谷間におびき寄せるくらいの知恵はあるぜ。
それくらいの幼稚な知恵しかないじゃない。圧倒的な兵力の差を前に大和魂だけで勝とうとした太平洋戦争の日本軍みたいなものよね。結果は目に見えているわ。
お前、ずいぶん冷静な判断するねえ。この映画は言ってみりゃマンガなんだからさあ、もっとお話の中に自分を入れて楽しまなくちゃ損だぜ。
そうそう、原作はフランク・ミラーのグラフィック・ノベル。だから同じ作者の「シン・シティ」みたいな匂いがプンプンとするのよね。子どもが戦士に育て上げられていくファーストシーンは「ブラッド・ダイヤモンド」の一挿話みたいで、そうやって育てられた男が人間性を取り戻す過程を描く映画になるのかと期待したら、ただ単に兵士として強くなっただけの話。
ありゃ、嫌いか、こういうテイスト?
討ち取った首を高々と掲げたりするのよ。趣味悪いわ。まあ、頭使わない人たちの首だからどうでもいいんだろうけど。
しかし、あの迫力はコミック調の「グラディエーター」とも言えるぜ。
言えない、言えない。あっちにはちゃんとしたドラマがあるのに、こっちにはほとんどドラマがないじゃない。
そんなことはない。隊長と妻との深い絆が描かれていたじゃないか。
この妻がまた、頭の悪い妻で、悪者の陰謀にまんまと乗っちゃうの。
もう一度聞くけど、嫌いなわけ、こういう知性のかけらもないような映画が?
いや、あれだけ凝った映像をつくるには相当の知性が必要だったに違いないわ。セピア調の色彩といい、CGを駆使した画面構成といい、アートとして一流の仕事だったのは認めるわ。だけど、内容があれじゃあねえ。ディズニーのアニメ映画だって技術が凄いから評価されているんじゃなくて、ストーリーがしっかりしているから認められているのよ。このチームもあれだけの才能があるんなら、もっと別の話に生かしてほしいわ。
じゃあ、俺がアスレチックで肉体を鍛えるのにも反対ってことか。
アスレチックみたいなところで肉体を鍛えようとする、その考え方に知性が感じられなくていやだって言ってるのよ。
でもさあ、たまには頭を空っぽにしてアスレチックを楽しむような映画も必要だぜ、人生には。


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永代二丁目バス停



ふたりが乗ったのは、都バス<東20系統>
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