【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「テトロ 過去を殺した男」

2012-03-06 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)

監督、フランシス・フォード・コッポラ。
「ゴッドファーザー」遠くなりき。
モノクロで描く物語は、ハリウッド映画を遥か離れ、インディペンデント映画の匂いがプンプン。
兄ヴィンセント・ギャロと弟アルデン・エーレンライク。兄弟を巡る話。
弟は行方知れずとなった兄を探してブエノスアイレスを訪れる。
モノクロで描きだすブエノスアイレスの情景がまず雰囲気を醸し出す。
どうして兄は姿を消したのか。そこに横たわるドロドロの秘密は、つい最近観た映画をほうふつとさせる。
おっと、それを言うと、カンのいい人は感づいちゃうから、それ以上は言いっこなしだぜ。
そうね。ヒントはなしで。
でも、ドロドロ。
だから、ヒントはなしでしょ。
船員の弟が兄のアイデアをヒントに演劇にしてそれが大きな賞を得るなんていう荒唐無稽な話になっていく。
なんか不思議な映画よね。
父親は著名な音楽家だったりしてね。
コッポラそのまま。
やっぱり、見どころはヴィンセント・ギャロとアルデン・エーレンライクかな。
異様な雰囲気を漂わせるヴィンセント・ギャロ、ちょっとディカプリオがかったアルデン・エーレンライク。この二人の存在は大きいわね。
でも、ハリウッド・メジャーとは相当キャラクターが異なる。
「ゴッドファーザー」遠くなりき。


「モテキ」

2012-03-03 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)

何か看板に偽りない?
どうして?
タイトルが「モテキ」で四人の女性にかつがれている森山未来の図、といえば、四股掛ける男のウハウハな話かと思うじゃないか。
ウハウハ?凄い表現。あなた何歳?
そんなところに反応するな。
ところが中身は、森山未来と長澤まさみ二人の恋模様だってところね。
あと、三人もからんではくるんだけど、麻生久美子はともかく、仲里依紗や真木よう子は森山未来の恋愛とは関係ない。
・・・なんてことは、どうでもいいことで、案外まっとうな恋愛映画を今のノリで描くとこうなりましたっていう映画なんじゃないの。
仲里依紗も真木よう子もいい味は出しているけどな。
森山未来と長澤まさみの「セカチュー」コンビもこっちのほうがいい。
監督の名前が凄い。
大根仁。
自らダイコンであることを宣言しているってわけか。
だけど、純情一筋の森山未来君に比べ、長澤まさみちゃんは純情なのか、すれているのかよくわからない。
妙に大胆だったかと思うと、妙に慎重だったりしてね。
そこが恋の不思議なところなのかしらね。
恋なんて縁のない俺たちにはわからないことだけどな。
そ。恋に縁のありそうな人だけわかればいいのよ。
俺たちは、ドロドロの愛の映画でも観に行くか。
行かないわよ。


「果てなき路」

2012-03-01 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)


モンテ・ヘルマン版「アメリカの夜」。
映画撮影のプロセスを描いているという意味ではそうかもしれないけど、トリュフォーとモンテ・ヘルマンでは、監督の資質がまったく違うわよ。
だけどこの「果てなき路」のみずみずしさはどうよ。
開巻、女優がベッドの上に座りうつむいているだけのショットが示されるんだけど、それだけなのに、それだけでもう、これを撮影している映画の中の監督が女優に惚れていることがありありと感じられてしまう。
何の変哲もない構図なのに、これだけ心惹かれるのは、どういうわけだろうな。信じられないくらい、魅惑的なショット。
映画の中の監督は、みんなには「監督が女優を好きになるなんて、あり得ない」とかうそぶきながら明らかに女優を愛してしまう。
そんな中で進むサスペンス映画の撮影。
その映画の元となる物語もはさまってきて、話は混乱し始める。
映画製作に混乱はつきものだよ、っていうことかな。
緊張高まるクライマックスでいきなり撮影隊の様子をはさんだりして、やりたい放題。
モンテ・ヘルマン監督、21年ぶりの長編作品だっていう触れ込みだけど、そんなご無沙汰信じられないくらい、手だれの演出。
ロッジのベランダで台本の読み合わせをする主演男女優。
ちょっとずつ調子を変えて読んでみる。それだけの場面になんと引き込まれることか。
この魅力的なヒロインを演じるのは、シャニン・ソサモン。彼女の美しさというより彼女を撮る監督の手腕を讃えるべきでしょうね。
ラストなんて、そこまで純情しなくてもいいじゃないか、と思うほどの幕切れ。
謎がいっぱい残ったままで物語としては消化不良なんだけど、そんなことどうでもよくなるような麻薬的な肌触りの映画だったわ。