【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「雲南の少女 ルオマの初恋」:東京都現代美術館前バス停付近の会話

2007-06-30 | ★東20系統(東京駅~錦糸町駅)

ここで観たのよね、「雲南の少女」。
いや、あれは東京都写真美術館。ここは東京都現代美術館。
ややこしいなあ。どうりでなんか見覚えのない建物だと思ったわ。東京て、同じような名前の美術館とか博物館がいっぱいあって、わけわかんない。
おいおい、田舎から出てきたばかりのおのぼりさんみたいなこと言うなよ。
おのぼりさんだもん。雲南の少女みたいなものよ。
ちょ、ちょっと待て。雲南の少女は17歳だぞ。お前はいくつだ?
年齢の話じゃないわよ。私は地方出身者だってこと。
じゃあ、お前は、山の中腹にみごとな棚田が広がる美しい風景のところから来たっていうのか。ありゃ、世界遺産にも登録されているんだぞ。
田んぼはあったけど、さすがにあんな壮大な棚田はなかったわね。
つまり、単なる日本の田舎者に過ぎないんだろ。
まあね。でも、田舎にもときどき、どえらいべっぴんがいるもんよ。
ときどき、というか、まれにな。
「雲南の少女」は、ハニ族という中国に住む少数民族の17歳の美しい少女が都会から来た青年に胸をときめかすという、いまどき実に心洗われる物語。田舎の女の子が都会に憧れるというのは、どこの国も変わらないんだなと思ったわ。
そして、都会の人間が田舎に憧れるっていうのもな。
あら、そうなの?
一度でいいから、ああいう天国のような風景の中で、ああいう汚れのない少女に出会ってみたいもんだよ。
そういう人が観光バスでやってきてお金払って少女と一緒に写真撮って、ひととき満足した気になって帰っちゃうのよね。
映画の中の無垢な少女も、撮影のモデルになるとお金を稼げると気づいて、観光客相手に写真を撮らせてたな。
その観光客の中にはしっかり日本人もいたわね。
映画にちなんだ雲南ツアーっていうのがあるらしいけど、それに参加すればああいう少女と写真が撮れるのかな。だったら参加しちゃおうかな。
これだからなあ。せっかくの美しい風景も伝統文化もあなたみたいな軽薄な人間たちに荒されるのかと思うと、心が痛むわ。
そっと残しておきたいってことだろ。でも、携帯プレーヤーを初めて知って目を輝かせて聞いている少女の姿を観ると、近代化もいたしかたないかなって気がするぜ。
そうね、この映画、素朴な田舎が舞台とはいえ、いかにも近代化途上の中国らしい映画だったもんね。
そうか?
だって、少女の顔写真を無断で本の表紙にしちゃうのよ。そんなこと、先進国だったら許されない行為よ。いったい、肖像権を何だと思ってるのよ。そういう根性だから、海賊版のテープとかDVDとかが平気で出回るのよ。
なんだよ、いきなり批判モードかよ。あのシーンは自分の写真が本の表紙になったって、少女が素直に感激する、いいシーンじゃないか。
だから、なおさらタチが悪いのよ。肖像権とは何か、ちゃんと国民を教育する義務があるんじゃないの、中国には。いろんな映画を上映禁止にしているのに、どうしてこういう反道徳的な映画を上映禁止にしないのよ。
いや、そんなことでこんな味わい深い映画が観れなくなったら、そっちのほうが問題だ。注意を促すくらいでいいんじゃないのか。
あなたは、かわいい女の子が出ていればなんでもいいんでしょ。
そんなことないけど・・・。
そんなこと言って、写真美術館だか現代美術館だか知らないけど、女性をモデルにした芸術作品でも展示していない限り、美術館なんて来ないじゃない。
そんなことあるけど・・・。


ブログランキング参加中。クリックをぜひ。

東京都現代美術館前バス停



ふたりが乗ったのは、都バス<東20系統>
東京駅丸の内北口⇒呉服橋⇒日本橋⇒兜町⇒茅場町⇒新川一丁目⇒永代橋⇒佐賀一丁目⇒永代二丁目⇒門前仲町⇒不動尊前⇒富岡一丁目⇒木場二丁目⇒木場駅前⇒木場三丁目⇒木場四丁目⇒東京都現代美術館前⇒白河⇒森下五丁目⇒菊川駅前⇒菊川三丁目⇒住吉一丁目⇒住吉駅前⇒毛利二丁目⇒錦糸堀⇒錦糸町駅前