【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「カルロス」

2012-09-23 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)


いちばんびっくりしたのは、カルロス最後の潜伏地スーダンの人々が唄う民謡が日本の民謡にそっくりだったこと。
アフリカの歌ではあるんだけど曲調とか歌い方とかまるで日本の民謡よね・・・て、そういうところがポイントの映画じゃないんだけど。
わかってる、わかってる。実在したテロリスト、カルロス・ザ・ジャッカルの軌跡を追う5時間30分の三部作。
本名はイリッチ・ラミレス・サンチェス。あだ名の「ジャッカル」は、1971年に発表されたフレデリック・フォーサイスの小説「ジャッカルの日」に由来するという説もある。
ジョン・フランケンハイマーが映画化した名作か。このカルロスはあのジャッカルほど禁欲的じゃない。
というか、いつも女を横にはべらせている印象。
右手に拳銃、左手に女って感じだな。
監督もドラッグから再起を図る女をマギー・チャンが演じた映画「クリーン」を撮ったオリヴィエ・アサイヤスだからね。確かに「ジャッカルの日」のような骨太のサスペンスの部分もあるけど、それだけではなく、カルロスという男の裏表、そして彼を取り巻くこの世界の姿を、大小のテロ事件の再現を重ねることでまるごと掬いあげる。
そのための5時間30分。全然退屈しない。
どちらかというとチンピラぽかったカルロスが徐々に組織の中で知られる存在になっていく第一部はいわば青春篇。カルロスの肉体も若々しさがみなぎっている。
大きなテロをまかされ、その実行と挫折の中で有名人になっていく第二部はいわば成熟編。肉体もややぽっちゃりして精悍さは抜けつつある。
そして、時代は移り、カルロスのようなテロリストが世界の厄介者になっていく第三部は没落編。ぶよぶよと太った肉体にももはや昔日の面影はない。
脂肪吸引までして、見る影もない。長々と映画を観てきたぶん、最初の頃との落差、寂寥感が観客の胸にも実感される。
飛ぶ鳥を落とす勢いだった男がだんだん時代に取り残されて哀れな最後を迎えるというのは世の常なんだけど、カルロスを演じたエドガー・ラミレスは、その変貌をロバート・デ・ニーロのごとく、一人で演じ切っているから凄い。
時間の経過とともに肉体もみるみる変わっていくからな。実はその変貌ぶりがいちばんの見どころだったりして。
あなたもひとごとじゃないわよ。
そう、ダイエット、ダイエット・・・ってそういう結論に至る映画じゃないんだけど。


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