Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

オンラインでJIPADの話をすることになりました。

2022年05月28日 | JIPAD
ICONのセミナーです。

開催日:2022 年 6 月 16 日(木)17:00~18:00(後日オンデマンド配信あり)
・視聴方法:お申込者様に視聴用 URL をお送りいたします。
・参加費用:無料
・対象者:日本集中治療医学会員等・(通常はICON会員限定です)
・講演者:日本集中治療医学会 JIPADワーキンググループ 内野 滋彦(当NPO理事)
・演題名:JIPADとは
・セミナー詳細・申し込みURL:こちら
・主催:NPO 法人集中治療コラボレーションネットワーク・日本集中治療医学会

大きな声では言えませんが、対象者のところは気にしないでいいのではないかな?
ご都合がよろしければ。

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セプザイリスを使う時に注意しなければいけないこととは。

2022年05月27日 | 腎臓
短いcorrespondenceなのですけど、ちょっと笑えたので。

Honore PM, Redant S, Djimafo P, et al.
Membrane adsorption in vancomycin treatment is membrane type dependent in CVVHDF: dose correction is crucial.
Crit Care. 2022 Apr 29;26(1):117. PMID: 35488349.


ちなみにfirst authorのDr. HonoreはCRRT関連ではチョー有名人。

・AN69-ST=セプザイリスを使っていると、バンコマイシンが2時間で200mg吸着される
・Dr. Honoreの施設ではルーチンでAN69-STを使用している

AN69-STはフツーの膜であること、薬剤使用が面倒くさくなること。
が分かりますね。

過去ログはこちらから。
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重症脳卒中に対する早期気管切開

2022年05月26日 | 呼吸
Bösel J, Niesen WD, Salih F, et al.; SETPOINT2 and the IGNITE Study Groups.
Effect of Early vs Standard Approach to Tracheostomy on Functional Outcome at 6 Months Among Patients With Severe Stroke Receiving Mechanical Ventilation: The SETPOINT2 Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2022 May 17;327(19):1899-1909. PMID: 35506515.


人工呼吸を必要とした重症脳梗塞もしくは脳出血、382例。早期(5日以内)に気切するか、10日以降で必要なら気切するか、でRCT。Primary outcomeは6ヶ月後の修正Rankin scale。結果は、早期群の方が少し神経予後も生存率も良いが有意ではなかった。

ふーん。
「意識の悪い脳卒中は、急激に状態がよくなることはないし、気道確保の理由はairway protectionで、その必要性はしばらく続くのだから、さっさと気切する。」
が当然だと思っていたので、それについてRCTをやろうと考える人がいることに驚いた。でもその判断に根拠がなかったことも事実。

26施設で5年近くやって、やっと予定されたサンプル数に達したけど、結論は、
"the wide confidence intervals around the effect es- timate may include a clinically important difference, so a clini- cally relevant benefit or harm from a strategy of early trache- ostomy cannot be excluded."
という、ありがちだけど残念な感じ。

晩期群の方が実際に気切を必要とした人が少ないし、気切関連の合併症も少ないのだけど。
とりあえずは「重症脳卒中はさっさと気切」のままで良いのではないかな。
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WHOのSolidarity trialの最終報告

2022年05月25日 | COVID-19
WHO Solidarity Trial Consortium.
Remdesivir and three other drugs for hospitalised patients with COVID-19: final results of the WHO Solidarity randomised trial and updated meta-analyses.
Lancet. 2022 May 21;399(10339):1941-1953. PMID: 35512728.


35カ国、454病院、8275症例。
最終報告と言っても結果に新しいものはなく、
・全症例では死亡率に差はなし
・すでに人工呼吸されている群では有意ではないが投与群の死亡率が高い
・酸素投与群では有意に死亡率が低く、有意に人工呼吸必要率が低い

レムデシビルの過去ログ:
レムデシビルも治療的抗凝固も重症COVIDには推奨されていませんが、しかし。
やっぱりレムデシビルは死亡を減らさない。
Remdesivirでウイルス量は減らない。
ヨーロッパにおけるレムデシビル
Remdesivirは使わない。
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文献の書き方:データを手に入れてから原稿が出来上がるまで

2022年05月15日 | ひとりごと
時々、他の人と研究をしていてちょっと上手くいかないことがあるので、まとめておきます。
研究デザインとか統計とか、そういう話ではありません。
1施設研究でも多施設研究でも既存のデータベースを利用した研究でも、諸々あって、最終的に手元にデータがやってくる。その後どうするか、について。

1:データを理解する
一気に多変量解析とかのメインに進まず、まずExploratory Data Analysis、EDAというやつをする。
どんなデータなのか、各項目の意味、平均や中央値、分布、欠損はどうか、を眺める。
この段階で、入力ミスとか、データの収集段階のトラブルとかを見つける。

2:解析をする
うまいことやってください。僕なんぞが余計なことを書くまでもなく、たくさん情報はあるでしょう。

3:文献用の図表を作り、確定する
解析の段階でいろいろな結果が出てくる。そのうち、どれを実際の文献として利用するかを考える。
・本来やろうしていたことからずれていないか
・一番伝えたいことは何か
・どの情報を提示して、どれをsupplementにするか
・表よりも図のほうがメッセージ性が強いので、どんな図を作るか
・どの点についてDiscussionするか
などを考える。

4:MethodsとResultsを書く
ここまで来ると本来なら自動的に進むのだけど、実際は慣れていない人が多い。
簡単に言えば、どうやって3で作った図表ができたかを書くのがMethods、その図表を文章で説明するのがResults。
礼儀作法(順番とか言い回し)については、世の中に情報がたくさんあるはず。

5:IntroductionとDiscussionを書く
これまた情報はたくさんあるはず。
僕も以前いくつか書いた。これとかこれとか。

この順番を守らないと変な文献ができるし、ちゃんと1ステップずつ進むと読める文献が出来上がる。
もしよかったら、ご参考に。
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国公立大学病院ICUで働くナースのみなさん、血液ガスの採取しませんか?

2022年05月14日 | ひとりごと
2015年3月から、JIPADの業務で各地のICUを訪問している。北海道から沖縄まで、合計79回、83のICUを見てきた。主な訪問の目的はデータ収集をより効率的かつ正確に行う方法を助言すること。そのためには、ICU内の業務分担を把握する必要があって、それこそ医師の勤務表も見せてもらったりしている。

訪問するたびに新しい発見がある。「いやー、これは初めて見ました」って毎回言っている気がする。
でも、パターン化できるところもたくさんある。その一つが血液ガスの採取者。
訪問の内容をメモに残しているので、それを全部確認してみた。採取者について記載があった70くらいの施設のうち、ナースが血液ガス採取をしない(医者的には”してくれない”)施設は12あった。
正確には数えていないけど、病院の種類別にすると、だいたいこんな感じ。

ナースが血液ガスを採取しないことになっている割合。
国公立大学病院:40%
私立大学病院:0%
PICU:50%
その他の病院:5%以下

綺麗なパターンが見える。ナースが採らないのは国公立大学とPICU。
全体的にはマイノリティで、「ついX年前からナースが採ってくれるようになったんですよー」という会話をいくつかの国公立大学病院でしたので、減少傾向のようだ。

PICUは専門外なので分からないけど、少なくとも成人ICUにおいてナースが血液ガスを採取しないメリットって、なにかあるのだろうか。
距離的にも時間的にも、患者さんに一番近いところにいる人が、患者さんの変化に応じて血液ガスの採取の判断をした方が患者さんのためになる気がするし、一人で二人を担当する方が十人を担当するよりも能率的だし。自分で判断して行動して、その結果を評価する方が楽しそうだし、勉強にもなるはず。

まとめると、
・ナースが血液ガスを採らない施設はマイノリティ
・その数は減少傾向
・採取した方が患者さんのためになる
・ICUで働く医療者としての技量向上につながる
のでは。

考え直してみませんか?
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誰でも利用可能なICUデータセットの比較

2022年05月04日 | AI・機械学習
Sauer CM, Dam TA, Celi LA, et al.
Systematic Review and Comparison of Publicly Available ICU Data Sets-A Decision Guide for Clinicians and Data Scientists.
Crit Care Med. 2022 Mar 2. Epub ahead of print. PMID: 35234175.


4つある。
・Amsterdam University Medical Center data base [AmsterdamUMCdb]
・eICU Collaborative Research Database eICU CRD
・High time-resolution intensive care unit dataset [HiRID]
・Medical Information Mart for Intensive Care-IV [MIMIC-IV]

HiRIDって、知らんかった。
大きなデータを使って研究したい、SQLも使えるぞ(もしくは勉強するぞ)と思っている方には非常に有益な情報では。

それぞれのデータセットの特徴がよく分かるので、研究するときだけじゃなく、これらのデータセットを使った研究を読む時にも使えそう。
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NOMIに対する血管拡張薬の動脈内投与、その反応性の予測

2022年05月03日 | 消化器・血液
Rittgerodt N, Pape T, Busch M, et al.
Predictors of response to intra-arterial vasodilatory therapy of non-occlusive mesenteric ischemia in patients with severe shock: results from a prospective observational study.
Crit Care. 2022 Apr 4;26(1):92. PMID: 35379286.


ドイツの1つの病院の8つのICUで、腸管壊死のないNOMIと診断された42例にPGE1の動注をした。全体の死亡率は71%、24時間で乳酸が2mmol/L以上下がると死亡率は59%、反応しないと85%。

Single armだし、治療についてのメッセージはあまりないように思うけど、
8つのICUで3年間、プロトコルを設定した上で前向きに調査すると、手術適応のないNOMIは18707例中42例に発生した、という情報は面白いのでは。
例えば自治さいたまは年間1500例くらいなので、3-4ヶ月に1例は動注の適応のあるNOMIが発生する計算。

プロトコルもちゃんとしている印象。興味のある方は使ってみては。
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SAH患者への血圧介入

2022年05月02日 | 神経
こっちで知ったのだけど、実際には去年に発表されていたので、そちらを紹介。

Maagaard M, Karlsson WK, Ovesen C, et al.
Interventions for altering blood pressure in people with acute subarachnoid haemorrhage.
Cochrane Database Syst Rev. 2021 Nov 17;11(11):CD013096. PMID: 34787310.


RCTはなんと3つのみ、合計症例数は300程度。
血圧を下げて再出血を予防しよう、血圧を上げてDCIを予防しよう、ってやってません?
その根拠は、この程度。

でも、「血圧って根拠乏しいんですよねー、だから適当でいいっすよ」と言う脳外科医には会ったことがない。
「血圧は〇〇で!」と堂々と言う人がほとんどなので、ICU的には従わざるを得ないことが多い、よね。
ま、何が正しいのか分からないし、別にいいんですけど。

Strokeの同じ号にレビューもあったので、こちらもよかったらどうぞ。
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データベース研究のためのAKIの定義

2022年05月01日 | 腎臓
Guthrie G, Guthrie B, Walker H, et al.
Developing an AKI Consensus Definition for Database Research: Findings From a Scoping Review and Expert Opinion Using a Delphi Process.
Am J Kidney Dis. 2022 Apr;79(4):488-496. PMID: 34298142.


数十人の専門家が集まって、文献レビューの結果を元に話し合った。レビューした174文献のうち、33%でベースラインのクレアチニンをどう定義したのか記載がなく、腎機能の回復について記載があったのは20%だけだった。そして、KDIGO criteriaをどう使うかについて決めようとしたけど、結論に達しなかったことが多かった、と。

セミリタイアしてからも、平均して週に1つくらいのペースでpeer reviewをしている(JINCだけじゃないぜ)。商売柄、AKIについての文献をレビューすることが多いのだけど、ちょいちょい、「ベースラインのクレアチニンの定義をちゃんと書いてください」と指摘している。
自分でAKIの研究もしていたし、この文献の結果(記載の不備と、AKIの定義を統一することができないこと)はとても納得できる。

AKIの研究をしようと思っている方へ。
KDIGOの定義を使う時に何が問題になるのか、何を忘れずに記載するべきか、など、研究をして文献を書く時に有益な情報が沢山あるので、オススメです。
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