Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

COVIDとトシリズマブとステロイド

2021年02月26日 | COVID-19
NEJMに今日発表されたRCTが二つ。
Interleukin-6 Receptor Antagonists in Critically Ill Patients with Covid-19
The REMAP-CAP Investigators

Tocilizumab in Hospitalized Patients with Severe Covid-19 Pneumonia
I.O. Rosas and Others


そしてこれが2週間ほど前にpreprintされた、ROCOVERY(デキサメサゾンが有効だと示した研究)からの報告。
Tocilizumab in patients admitted to hospital with COVID-19 (RECOVERY): preliminary results of a randomised, controlled, open-label, platform trial

全部を読むのが面倒な人はこちら。今日のNJEMのeditorial。
Interleukin-6 Receptor Inhibition in Covid-19 — Cooling the Inflammatory Soup
E.J. Rubin, D.L. Longo, and L.R. Baden


この3つを含め、過去の結果をまとめると、ステロイドと併用すれば死亡を減らすかも、となる。
RECOVERYのFigure 3にサブグループ解析あり、綺麗な結果。

うーん。マジですか。
ちょっと、すぐには信じられない。

WHOは定期的に治療薬についてのガイドラインをアップデートしているけど、最後のアップデートが2ヶ月以上前なので、きっとそろそろ新しいのが出るでしょう。それにはトシリムマブが含まれているはず。専門家の方々がどう判断するか、興味津々。

現状は、sit tightだと思います。
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JROD発表!

2021年02月24日 | JIPAD
JIPADのデータを利用した文献2つ目がJournal of Intensive Careに掲載された。
(ちなみに一本目はこちら

Endo H, Uchino S, Hashimoto S, et al.
Development and validation of the predictive risk of death model for adult patients admitted to intensive care units in Japan: an approach to improve the accuracy of healthcare quality measures.
J Intensive Care. 2021 Feb 15;9(1):18. PMID: 33588956.


年次レポートを見てもわかる通り、既存の重症度スコアを日本のデータに当てはめると、AUROCは0.9あるけど、SMRは0.5で、死亡率を著明に高く予測してしまう。
そこで、日本版の重症度予測方法を開発したのがこの文献。その名もJROD(Japan Risk of Death)。
新しいスコアを作るのではなく、APACHE IIIjの予測を日本の現状に合うように修正。

今後はこの予測率が参加施設でも見られるように、JIPADのデータベースを改良中。乞うご期待!
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重症COVIDにECMO

2021年02月21日 | COVID-19
Shaefi S, Brenner SK, Gupta S, et al.; STOP-COVID Investigators.
Extracorporeal membrane oxygenation in patients with severe respiratory failure from COVID-19.
Intensive Care Med. 2021 Feb;47(2):208-221. PMID: 33528595.


アメリカの68施設。P/F<100でECMOをした130例としなかった1167例を比較。ECMO群の死亡のハザード比は0.55だった。

8年以上前に書いたやつ。
敗血症性ショックとステロイド
同じようなことは何度も書いた気がするし、今時学校でも習うことかもしれない。
なので改めて色々書いても仕方ないので、簡潔に結論だけ。

「高価だったり実施に手間がかかる治療は、観察研究では必ず有効性を示す。理由は医療者の選択バイアスが存在するから。若かったり、やったら有効そうな患者さんが選ばれる。そして、そういう治療法のほとんどは多施設RCTで有効性が否定され消えていく。」

高価だったり実施に手間がかかる治療が観察研究で有効性を示したという意味では、このICMの研究もそうだし、例えばこれもそう。

コストと合併症のリスクは実在する。そして過去を見る限り有効である確率はとても低い。
するな、とは言わない。
するなら、このことは知っていないといけない、とは言う。
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AMIの輸血の域値

2021年02月20日 | 消化器・血液
Ducrocq G, Gonzalez-Juanatey JR, Puymirat E, et al.; REALITY Investigators.
Effect of a Restrictive vs Liberal Blood Transfusion Strategy on Major Cardiovascular Events Among Patients With Acute Myocardial Infarction and Anemia: The REALITY Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2021 Feb 9;325(6):552-560. PMID: 33560322.


TRICCからもう22年。
それ以降、ICUでの輸血の域値は7-8g/dlになった。
でもそれには”ただし”があって、高齢者と心筋虚血は例外とされていた。

ずっと違和感があった。
その違和感が一気に解消された感じがして、嬉しい。
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ヨーロッパにおけるレムデシビル

2021年02月19日 | COVID-19
Dal-Ré R, Banzi R, Georgin-Lavialle S, et al.
Remdesivir for COVID-19 in Europe: will it provide value for money?
Lancet Respir Med. 2021 Feb;9(2):127-128. PMID: 33341157.


ちょっと過去を振り返りつつ、現状と今後について説明。

最大の問題はステロイドとの併用についての評価がないことではないか。
日本のICUでも少なからず使われているのではないか。
これを読んでも使いたいだろうか。
少し不思議、だ。
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JIPADが2019年度年次レポートを公開!

2021年02月18日 | JIPAD
最新のレポート(2019年度版)

5回目の年次レポート。
どんどん電子化が進み、レポート作成が早くなってきた。

57施設、46000例が対象。
日本のICUの疫学情報はJIPADだけ。
是非、ご覧あれ。
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高所得国によるワクチンの大量確保

2021年02月17日 | COVID-19
今日からついに日本でも医療者に対するワクチン接種が開始される。
偶然にも、今朝JAMAから来たe-mail alertにこんな記事があった。

Global Health
February 16, 2021
High-Income Countries Have Secured the Bulk of COVID-19 Vaccines
Bridget M. Kuehn, MSJ
JAMA. 2021;325(7):612. doi:10.1001/jama.2021.0189


昨年末にBMJに発表された文献を紹介した記事。
その中から、
・11月時点で世界中で75億回分のワクチンの製造が予定されたが、そのうちの51%は高所得国により確保され、全人口の86%を占める中低所得国で残りを分けることになった。
・例えばアメリカは人口は3.3億だが4億人分のワクチンが確保されている。
・アメリカは全COVID患者の約2割を占めているが、もっと患者数の少ない高所得国、例えば、日本、カナダ、オーストラリアは合計で約2億人の人口がいるが、患者数は全世界の1%しかおらず、にもかかわらず合計で10億回分を確保している。
ことを紹介している。

日本でワクチン接種が始まる日の朝に、2ヶ月前に発表された文献を紹介して、かつ日本を名指しした記事が出るとは。きっと偶然なのだろうけど、ちょっと複雑な気分になる。

テレビは日本のワクチン確保の話ばかりで、確保するということは確保できない人や国があることはほとんど言わない。それも聞いていて複雑な気分になる。

自分の順番が来たら打つけどね。
きっと、ちょっとモヤモヤしながら。
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手術室とICUスタッフのCOVID感染リスク

2021年02月15日 | COVID-19
大事な話だと思うので、この話題は繰り返し紹介。
過去ログはこちら

Cook TM, Lennane S.
Occupational COVID-19 risk for anaesthesia and intensive care staff - low-risk specialties in a high-risk setting.
Anaesthesia. 2021 Mar;76(3):295-300. PMID: 33307597.


イギリス国内の情報を徹底的に集めてまとめたeditorial。
手術室やICUで働く人の感染リスクが(他の部署と比べて)低いことをたくさんのデータを提示して説明。

その理由として5つの可能性をあげている。
・エアロゾルが出そうな時はPPEを必ず着ている。
・普段から感染予防についての意識が高い。
・換気が良い環境で働いている。
・飛沫感染は病棟の方が起こりやすい。
・ICUに来る頃には感染のリスクは下がっている。

理由はどうあれ、ちゃんと防御していればICUで働いていても感染しない。
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伏臥位中のCPR

2021年02月11日 | 循環
タイムリーな文献だ。

Anez C, Becerra-Bolaños Á, Vives-Lopez A, et al.
Cardiopulmonary Resuscitation in the Prone Position in the Operating Room or in the Intensive Care Unit: A Systematic Review.
Anesth Analg. 2021 Feb 1;132(2):285-292. PMID: 33086246.


52の文献が対象、ただしそのうち原著論文が4本+ケースレポートが27本。
CPRもDCも、挿管されていれば伏臥位のままやっても(それなりに)大丈夫。

うーん。恥ずかしながら、全然知らなかった。
麻酔科医とかだと常識だったりするのだろうか?

伏臥位だと体の下にクッションがあるから、それも含めて流れをまとめると、

1:伏臥位中に心静止もしくはPEAになる
→助けを呼ぶ
→伏臥位のままCPR開始
→助けが一人来る
→二人でクッションを抜く、伏臥位のままCPR継続
→助けがたくさん来る
→仰臥位に戻してCPR継続

2:伏臥位中にVFになる
→助けを呼ぶ
→伏臥位のままCPR開始
→助けが一人来る
→DCを持ってきてもらって、ドカン
→二人でクッションを抜く、伏臥位のままCPR継続
→助けがたくさん来る
→仰臥位に戻してCPR継続

という感じだろうか?
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集中治療系雑誌の自己引用

2021年02月10日 | ICU・システム
Sanfilippo F, Tigano S, Morgana A, et al.
Self-citation policies and journal self-citation rate among Critical Care Medicine journals.
J Intensive Care. 2021 Jan 26;9(1):15. PMID: 33499899.


自分の文献の中で自分を引用したり、自分の雑誌の中で自分の雑誌を引用するのはちょっとね、という話。

紹介理由は、集中治療系の35雑誌のimpact factorが順番に全部書いてあるので、文献を読み書きするときに便利では、と思って。

ちなみに毎年こんなのを作っておりますので、こちらもよかったらご参考に。
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