Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

慈恵ICU勉強会 171017 171121

2017年11月30日 | ICU勉強会
10月17日 AKIにおける抗菌薬動態の最新情報(JC-ICM)
11月21日 周術期の集中治療:現状と今後


血圧は、決まったターゲットではなく患者さんの普段の血圧に基づいて管理しましょう、という方向に最近の研究は向かっている。でもまだ大きくてかつ根拠の強い研究はなく、具体的にどうだったらどうするというものもなく、病前血圧をどう定義するかの決まりもない。

数年前から患者さんの普段の血圧(病棟とか外来とかで測定されたものを参考にすることが多い)を利用して臨床するようになっている。普段から血圧が低めだから、MAPのターゲットは60でいいんじゃねーの、とか。根拠が強くない段階では臨床を変えないというのが基本姿勢だけど、これはちょっと変えてる。なんとなく、正しいことのような気がするからかな。

はは、直感で臨床するなんて、ダサいわね。
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ICUベッドと風水

2017年11月29日 | ICU・システム
Charles R, Glover S, Bauchmüller K, et al.
Feng shui And Emotional Response in the Critical care Environment (FARCE) study.
Anaesthesia. 2017 Dec;72(12):1528-1531. PMID: 29130275.


まずfeng shuiってなんだ、で興味を持ち、
それが風水のことだと言うことがわかって読み始め、
著者はこの研究を真剣にやったのか、それともBMJに出そうとして落ちたからこっちに回ってきたのか、の判断をするために結局全文読まされた。

結論は、BMJに落とされた、でいいと思う。ちょいちょいふざけてるから。
そっかー、もうその時期だね、BMJのChristmas特集。今年も楽しみだわ。

誰かが、いつかBMJのクリスマスに載せたいと言っていたが、結構レベルが高いぞ。
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ノルアドとネオシネの投与量比較

2017年11月28日 | 循環
薬剤を商品名で呼ぶのは大嫌いなのだが、分かりやすくしてみた。

Ngan Kee WD.
A Random-allocation Graded Dose-Response Study of Norepinephrine and Phenylephrine for Treating Hypotension during Spinal Anesthesia for Cesarean Delivery.
Anesthesiology. 2017 Dec;127(6):934-941. PMID: 28872480.


カイザー中の低血圧を元に戻すのに必要な昇圧剤のivの量を検討した研究。ノルアド10μg とフェニレフリン137μgが血圧を同程度に戻した。

この量って、ノルアド5Aを50mlにしたシリンジポンプで0.1mlボーラスするのと、フェニレフリン1mgを10mlにしてそのうち1.4mlをivしたのとが同じってことで、臨床で感じているのと同じだー、と思って、嬉しかった。
それが紹介理由。
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GNRの菌血症に血培のフォローは必要か

2017年11月27日 | 感染
Canzoneri CN, Akhavan BJ, Tosur Z, et al.
Follow-up Blood Cultures in Gram-Negative Bacteremia: Are They Needed?
Clin Infect Dis. 2017 Nov 13;65(11):1776-1779. PMID: 29020307.


直感的に不思議だった。GNRなのに何でみんなやっているんだろうって。
治療効果判定なら他の方法でできるし、抗菌薬の投与期間は血培が陰性になってからって何が根拠なんだろうって。つい先日もクレブシェラか何かの菌血症で血培のフォローをしている人がいて、ふーんと思って見ていた。

Conclusions. Follow-up blood cultures added little value in the management of GNB bacteremia.

まあこれで結論されるものでもないのかもしれないが、ちょっと安心した。
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ARDSの始まり

2017年11月26日 | 呼吸
ARDSの50周年を記念した数々の文献の中、満を持して登場、という感じ。

Levine BE.
Fifty Years of Research in ARDS. ARDS: How It All Began.
Am J Respir Crit Care Med. 2017 Nov 15;196(10):1247-1248. PMID: 28731363.


集中治療医は真剣にmust readです。
Lancetには先見の明があったのね。
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造影剤腎症と重炭酸とNAC

2017年11月25日 | 感染
Weisbord SD, Gallagher M, Jneid H, et al.; PRESERVE Trial Group.
Outcomes after Angiography with Sodium Bicarbonate and Acetylcysteine.
N Engl J Med. 2017 Nov 12. PMID: 29130810.


KDIGOのAKIのガイドラインは4章に分かれている。1つめが診断・疫学、2つめが予防と治療、3つめが造影剤腎症、4つめがRRT。
ちょっとバランスが不思議でしょう?

これって、当初は2つめが予防で、3つめが治療だったのだけど、予防と治療って同じような薬が検討されていたり研究がダブっていたりして分けることが難しくて、かつ造影剤腎症の研究の数が際立って多かったので、途中で分け方を変えたんだよね。しかもAKIそのものの予防や治療方法ってほぼないけど、造影剤腎症は輸液の仕方やいくつかの薬剤が有効だと言われていたこともあって。

で、その頃有効かもとされていたトップ2が重炭酸とNACで、その後だんだん旗色が悪くなった。
このNEJMの研究は、そんな歴史を感じさせる。

振り子のようなEBM。
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慈恵ICU勉強会 1711107

2017年11月19日 | ICU勉強会
7日 ECMOの倫理
7日 ICU患者の口渇


倫理の方はCE、口渇の方はNsが担当。
CEが倫理について語った勉強会、なかなかレアじゃないだろうか。しかもなかなか良くできている。
口渇は、メジャー雑誌はまだ少ないけど、これからICUのトピックになっていく可能性があるのではないか。

どちらも結構面白いので、読んでみそ。
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早期の抗菌薬投与

2017年11月18日 | 感染
二つめ。これもeditorialが良い。

Liu VX, Fielding-Singh V, Greene JD, et al.
The Timing of Early Antibiotics and Hospital Mortality in Sepsis.
Am J Respir Crit Care Med. 2017 Oct 1;196(7):856-863. PMID: 28345952


来院6時間以内に抗菌薬が投与された敗血症患者35000例。6時間以内でも、抗菌薬投与は早ければ早いほど死亡率は低い。
で、そのeditorialがこれ。

Singer M.
Antibiotics for Sepsis: Does Each Hour Really Count, or Is It Incestuous Amplification?
Am J Respir Crit Care Med. 2017 Oct 1;196(7):800-802. PMID: 28504905.


Incestuous Amplificationというのは、直訳すると「近親相姦的増幅」で、「ものの考えが画一的なものに固執してしまい新しいものを排除する傾向」という意味だそうだ。
抗菌薬の早期投与が有効という話は、ほぼ全てが多施設の後ろ向き観察研究から導かれたもので、それほど信ぴょう性は高くないのに、チョー有名な話になってしまっている。
何日も前から具合が悪くて、家族が帰って来たら家の中で倒れていた、という患者さんに対して、1時間の抗菌薬投与のズレが予後に影響する、と言われてもちょっと信じがたい。

Epidemiology studies should generate hypotheses but not dictate healthcare policy.

その通りだと思う。
だからノンビリしていていいのよ、ということでもないですよ、もちろん。
何事も天秤。
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ARDSとHFOV

2017年11月17日 | 感染
先週は驚くほど面白い文献がなかったので、ちょっと前のやつを二つほど。
どちらもAJRCCMで、かつeditorialが面白い。

Meade MO, Young D, Hanna S, et al.
Severity of Hypoxemia and Effect of High-Frequency Oscillatory Ventilation in Acute Respiratory Distress Syndrome.
Am J Respir Crit Care Med. 2017 Sep 15;196(6):727-733. PMID: 28245137.


HFOVはARDSのほとんどの患者で死亡率を上げるけど、低酸素がひどいとHFOVは有効かも、という結論。
これよりも、そのeditorialが面白い。
Vincent JL.
High-Frequency Oscillation in Acute Respiratory Distress Syndrome. The End of the Story?
Am J Respir Crit Care Med. 2017 Sep 15;196(6):670-671. PMID: 28914571.

(おお、今気がついた。Vincent先生じゃないですか。)

最後の文章がこれ。
Accordingly, I am afraid this may very well be the end of HFOV in ARDS.
おお。
同感です。
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ICUにおける診断

2017年11月16日 | 感染
Usefulness of central venous saturation as a predictor of thiamine deficiency in critically ill patients: a case report
Journal of Intensive Care20175:61


重症患者の診療において、診断がいかに重要か、そのためにはアナムネがいかに重要か、がよく分かるケースレポート。
ちなみに、肺動脈カテーテルで測定しているようなので、central venous saturationじゃなくてmixed venous saturationではないだろうか。

先日、ほぼ同時期にICUに来た2人の呼吸不全患者に対し、それぞれの担当医が同じ診断名をつけ、1人は診断が当たって元気になり、もう1人は診断が外れて死亡した、ということがあった。
死亡例についてICUでM&Mをしたのだが、僕は集中治療医の診断に対する姿勢の重要性について話をした。

以前、麻酔科ベースの集中治療医と、集中治療をやるには麻酔科ベースと内科ベース(僕がそうなので)のどちらがいいか、という話を雑談でしたことがあった。その時に、麻酔科ベースの人が、内科の方がいいのは診断ができることくらいではないか、と言ったのを聞いて、びっくりした。

診断が重要なんて、医療においてあまりに当たり前すぎて口に出すことでもないだろうと思っていたが、どうも一部の人にとってはそうでもないらしい。
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