Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

敗血症に対するHATの使用

2020年12月30日 | 感染
Vail EA, Wunsch H, Pinto R, et al.
Use of Hydrocortisone, Ascorbic Acid, and Thiamine in Adults with Septic Shock.
Am J Respir Crit Care Med. 2020 Dec 1;202(11):1531-1539. PMID: 32706593.


ステロイドとビタミンCとチアミン、いわゆるHATが発表された前後で、この治療法の選択頻度がどのように変化したのかについて検討。
ほぼゼロだった選択頻度が、研究発表後に2.65%になった。

イノベーター理論のイノベーターの頻度(2.5%)とバッチリ同じじゃないですか。
名前はカッコイイけども、EBMに対する姿勢、治療選択に対する姿勢という意味では、レイトマジョリティで十分だと思います。

今年はこれでおしまい。

セミリタイアしてから半年経った。
来年はどうなるだろう。COVIDも、日本の集中治療も、僕も、このブログも。
想像つかないけど、良い年でありますように。
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ポータブルCXRの診断精度

2020年12月29日 | 呼吸
Panizo-Alcañiz J, Frutos-Vivar F, Thille AW, et al
Diagnostic accuracy of portable chest radiograph in mechanically ventilated patients when compared with autopsy findings.
J Crit Care. 2020 Dec;60:6-9. PMID: 32731104.


ICUで死亡し、病理解剖が行われた422例。2名の集中治療医と2名の放射線科医が死亡72時間以内に撮影された胸部レントゲンを読影し、解剖結果と比較。
・肺炎の感度は24%、特異度は91%
・ARDSは68%と74%
・放射線科医同士の診断の一致率は高かったが、それ以外の組み合わせは低かった。

メッセージは、
何度も言われていることだけど、レントゲンがきれい=肺炎はない、ではない。
そしてICU医の読影能力は怪しい。
そーなんだよねー。
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eCPRの初のRCT

2020年12月28日 | 循環
Epubはもう1ヶ月半も前なので今更感はあるけれど。

Yannopoulos D, Bartos J, Raveendran G, et al.
Advanced reperfusion strategies for patients with out-of-hospital cardiac arrest and refractory ventricular fibrillation (ARREST): a phase 2, single centre, open-label, randomised controlled trial.
Lancet. 2020 Dec 5;396(10265):1807-1816. Epub 2020 Nov 13. PMID: 33197396.


1施設のopen-label RCT。対象は、VFで3回のDCでROSCしなくて、病院搬送が30分以内。
なんとたった30例がenrollされた時点でearly termination。
理由は効果が明白だったから(生存退院率が7% vs. 43%)。

・1施設RCTである
・early terminationである
・Primary outcomeが死亡率で、神経予後ではない
ので、もちろん注意は必要。

でも、eCPRが生命予後に有益であろうことは、まあ間違いない気はする。
問題は対象症例。積極的にeCPRを始めると、多分必ず、やりすぎる。
そこがね。。。
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部門システムからのデータの自動取り込みにおける注意点

2020年12月23日 | JIPAD
先月にまとめて書いた文章。

データの自動取り込みの罠
自動取り込みの罠①:入退院日、入退室日時
自動取り込みの罠②:身長、体重、病名、術式
自動取り込みの罠③:バイタルサイン
自動取り込みの罠④:GCS
自動取り込みの罠⑤:人工呼吸の開始終了
自動取り込みの罠⑥:血液ガス

興味ない人は何書いてんだ?と思ったかもしれないけど、けっこう真剣に書いたんですよ、これ。
北は北海道から南は沖縄まで、合計約70のICUを実際に訪問して、繰り返し話した内容をまとめたので。

でも、ちょっとこのままだと初めて会う人(メールする人)に「読んでください」とは言いにくいので、文体と内容を変えて、一つの文章にまとめました。
それをJIPADのホームページに掲載してもらったので、紹介します。

部門システムからのデータの自動取り込みにおける注意点

自分で言うのも何だけど、これから自動取り込みでデータベースを運用しようと思っている人にはマジでお役に立つはずだと思っております。
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Big dataとLarge database

2020年12月15日 | ICU・システム
今月号のJournal of Critical Careに、
Special Section: Data, technology and large databases as catalysts of quality improvement in the ICU - Part 1
という特集があった(今気がついたが、Part 1となっているということは次もありそうだ)。
5つの文章が掲載されている。タイトルだけ列挙。

Novel approaches to facilitate the implementation of guidelines in the ICU
Prediction on critically ill patients: The role of “big data”
Data-driven ICU management: Using Big Data and algorithms to improve outcomes
Linking of global intensive care (LOGIC): An international benchmarking in critical care initiative
National registries: Lessons learnt from quality improvement initiatives in intensive care

ガイドラインの話、Big dataの話、データベースの話。
ほとんどの人はあまり興味のない話題かもしれないけど、僕は読んでいて、いろいろなことを考えた。
考えすぎたので説明は難しいけど、とりあえず、機械学習がどうやったら臨床に入ってくるのかとか、データベースって大事だぞとか、それをどう使ったら患者予後改善につながるかとか、僕と同じことを考えている人はたくさんいそうだ、ということが確認できた。

最近、JIPADについての否定的な意見を間接的に複数回聞いた。
でも、やっていることは間違ってないぞ。
それをどう伝えるか、考えないといけない。
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1ヶ月ほど前、新しいMacbook airを買った件。

2020年12月14日 | ひとりごと


初めてMacを買ったのが1996年。それ以来、ずっとMacユーザー。
3-5年に1度、定期的にラップトップを買い替えているけど、今回は2年。前回買うときにハードディスクの大きさを考えなかったのか、それとも注文し間違えたのか、どちらかは忘れたのだが、あっという間に一杯になってしまった。
困ったな〜と思っていたら、久しぶりにアップルが作ったCPUであるM1チップ搭載のMacbook Airが出たので、即ポチした。

使って約1ヶ月が経過。
いやー、驚きだわー。
たった2年だし、そんなに変わらないだろうと思っていたのに。
クッソ速いぞ、これ。
アプリをいつでも使えるように、起動時にオフィスとか10個くらいのアプリを開くように設定している。これまでは再起動したら数分は待たなくちゃいけなかったのに、新しいMBAだと20秒くらいで全部開いちゃう。
特にオフィスの起動速度が全然違う。てっきり新しいCPUに適応するようにバージョンアップしたのかと思ったら、まだなんだって。今後適応予定だそうで、どんだけ速くなるんだろう?

ついでに、新しいOSのBig Sur。
見た目の雰囲気が変わった。まあそれは趣味の問題だけど、いつもはOSが新しくなると、あのアプリが起動しないとか、メールやサファリが調子悪くなるとか、必ずちょっと困るのに、今回はトラブルゼロ。ありがたや。

自分のマックが遅いなーと思っている方。マジでオススメっす。
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集中治療系の多施設RCTの結果がネガティブになる理由

2020年12月13日 | EBM関連
Abrams D, Montesi SB, Moore SKL, et al.
Powering Bias and Clinically Important Treatment Effects in Randomized Trials of Critical Illness.
Crit Care Med. 2020 Dec;48(12):1710-1719. PMID: 33031148.


集中治療系のRCTが発表される七大雑誌(NEJM, JAMA, Lancet, AJRCCM, Lancet RM, CCM, ICM)に過去10年間に掲載された101の多施設RCTを調査。
・77%はコントロール群の死亡率の設定が高すぎ
・47%の研究で介入による死亡率の低下を10%以上と設定したが、実際に有意差が示されたのは3研究のみ

アウトカムの発生を大きく設定しすぎ、介入効果を大きく設定しすぎ。つまりはNが足りない。
これまで効果がないとされた介入の中には、本当は臨床的に意味のある効果があった可能性は否定できない。

教科書的な話だけど、具体的に示されると分かりやすい。
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ECMO中の抗凝固モニタリング②

2020年12月12日 | 消化器・血液
ちなみに①はこちら

Figueroa Villalba CA, Brogan TV, McMullan DM, et al.
Conversion From Activated Clotting Time to Anti-Xa Heparin Activity Assay for Heparin Monitoring During Extracorporeal Membrane Oxygenation.
Crit Care Med. 2020 Dec;48(12):e1179-e1184. PMID: 33009103.


アメリカのPICUで、ECMO中のヘパリンのモニタリングをACTから抗Xa活性に変更したら、膜の交換頻度が半分になり、ヘパリンの投与変更回数が5分の1になり、出血の合併症が減った。

①にも書いた通り、ヘパリンは昔っから世界中で使われている薬なのに、いまだに確立したモニタリング方法がない。
ACTでは絶対に無理、APTTも相当無理、TEGとXa活性はそれらよりマシそう、でも十分な根拠はないし、どちらも測定が大変。
どないせーっちゅうじゃい。
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造影剤は本当に問題か?

2020年12月06日 | 腎臓
Lakhal K, Ehrmann S, Robert-Edan V.
Iodinated contrast medium: Is there a re(n)al problem? A clinical vignette-based review.
Crit Care. 2020 Nov 10;24(1):641. PMID: 33168006.


造影剤腎症は、少なくともICUでは言われているほど多くない。
でも無視していい、ということでもない。

その辺の話がよくまとまっています。
「腎臓悪いし、単純CTにしよう」と簡単に言っているあなた、必読です。
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治療制限が重症度による予後予測に与える影響

2020年12月05日 | ICU・システム
Kaufmann M, Perren A, Cerutti B, et al.; Swiss Society of Intensive Care Medicine.
Severity-Adjusted ICU Mortality Only Tells Half the Truth-The Impact of Treatment Limitation in a Nationwide Database.
Crit Care Med. 2020 Dec;48(12):e1242-e1250. PMID: 33031145.


スイスのnational ICU database(MDSi、なんとスイス国内の全てのICUが含まれている)を使った研究、16万例。13%に治療制限が設定され、そのうちの61%はICU入室時に設定されていた。多変量解析にて、治療制限のICU死亡率におけるオッズ比は18.1だった。

40%はICU在室中に治療制限が設定されているし、そりゃICU死亡に関連しているだろ、とは思うけど、ICU入室時の予後予測に強く関連するのは確かだろうし、重症度スコアだけじゃ足りないというのは理解できる。
じゃあ、重要な情報だから自分の施設でもデータベースの項目に含めようと思っても、実際に収集しようと思うと相当大変だ。多くの施設では医療者以外の人がデータベースを担当していたりするから、退室後にカルテを全部読まないといけない。なので在室中にリアルタイムに収集する必要があるけど、現実的には一部の施設を除いてほぼ不可能、少なくとも日本では。

昨日のANZICSの研究もそうだけど、どうしてスイスやANZでは治療制限の有無とその決定日とか、退室OKとICUが判断した日時とかをデータベースに含めることができるかと言うと、IUC内にデータを収集する専門職の人がいるから(少なくともANZではそうだった)。そりゃ日本では無理だわな。
先日、データベースの情報収集を自動でやる困難さと工夫の方法について書いたけど、専門職の人がいればそんな工夫なんか不要だ。

日本はいろいろな点で後進国。
悲しいけど。

でも頑張るしかない。
JIPADの症例数はつい先日18万例を超えたよ。来年春には20万例だ!
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