Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

高Na血症治療における自由水の経腸投与と5%ブドウ糖の経静脈投与の比較

2023年08月31日 | 腎臓
手前味噌ですが、自治さいたまのデータを使った文献がアクセプトされました。

Suzuki R, Uchino S, Sasabuchi Y, et al.
Enteral free water vs. parenteral dextrose 5% in water for the treatment of hypernatremia in the intensive care unit: a retrospective cohort study from a mixed ICU.
J Anesth. 2023 Aug 28. Epub ahead of print. PMID: 37638970.


高Naを水で薄めようとする時に、経管に水を入れるか5%グルを静脈投与するかで比較。結論は、どちらもほぼ同程度にNaを薄めるけど、経管だと水の投与量が少なくなりがちなので、治療効果としては経静脈投与の方が高くなる、と。

ICUではすごくよく見かける高Naだけど、介入研究はすごく少なくて、今回の視点での研究はゼロ。
だからとっても楽しい研究だと思うのだけど、思いのほか投稿に苦労した。

運が悪かったとも言えるけど、1施設の後ろ向き研究がどんどん採用されにくくなっているとも言える。
1施設の後ろ向き研究は初期の仮説設定としては今も有益だと思うのですけどね。
時代には逆らえないか。。。
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重症患者における広域抗生物質投与に伴う腎毒性

2023年08月30日 | 腎臓
Chen AY, Deng CY, Calvachi-Prieto P, et al.
A Large-Scale Multicenter Retrospective Study on Nephrotoxicity Associated With Empiric Broad-Spectrum Antibiotics in Critically Ill Patients.
Chest. 2023 Aug;164(2):355-368. PMID: 37040818.


eICUのデータベースを用い、救急外来からICU入室し、入室初日にVCM+P/T(N=27459)かVCM+MEPM(N=1824)で治療を受けた患者を比較。PSマッチングして比較したところ、VPT群はVM群に比べてAKI stage II以上の発生率が高いだけでなくRRTの必要率も高かった(オッズ比1.56)。

ふーん。
何度か紹介した話(これとかこれとか)だけど、ちょっと違う結論だね。さすがにRRTの必要性はクレアチニンの血中濃度とはほとんど関係ないだろうから。

ただ、VM群の症例数がVPT群の10分の1以下なので、いくらPSマッチングしても測定されていない患者背景に大きな違いが出てしまう気はする。

もう観察研究でどうこう言う話題ではないのかもね。
この文献のeditorialにも、(DeepLで和訳)
「臨床医はレトロスペクティブなデータのみに基づいてルーチンの抗菌薬療法を決定すべきではない。ICUにおける経験的広域抗菌薬レジメンの選択は、感染源の疑い、関与している可能性の高い病原体、地域の耐性パターン、抗菌薬耐性の出現リスクなど、多くの考慮事項に基づいて行わなければならない。」
とあるし。
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メジャー医学雑誌4誌に掲載された集中治療関連のRCT

2023年08月26日 | EBM関連
Kampman JM, Sperna Weiland NH, Hermanides J, et al.
Randomized Controlled Trials in ICU in the Four Highest-Impact General Medicine Journals.
Crit Care Med. 2023 Sep 1;51(9):e179-e183. PMID: 37199541.


2014年から2021年までに、NEJM/Lancet/JAMA/BMJに発表された2431のRCTが対象。
・全体の5.4%(132研究)が集中治療関連
・2014年では4%だったが2021年には7.5%に上昇
・企業がスポンサーの研究比率がそれ以外の分野と比べて低い(5% vs. 36%)
・有意差を示す頻度が低い(29% vs. 56%)
・Fragility indexが小さい(3 vs. 12)
(治療が有効だった人が3人無効になると有意差が消失するという意味)

Online brief reportっていう、ちょっとマイナーな扱いだけど、集中治療の臨床研究の歴史と現状を端的に示した、良い研究だと思いました。
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サイトビジット100施設到達、そして。

2023年08月25日 | JIPAD
JIPADの業務で、サイトビジットというのをやっていました。
JIPADのデータ収集を開始して、継続的にデータ収集ができて、かつ質が一定の基準に到達したら、実際にその施設を訪問し、より簡単に質の良いデータを収集できる方法について提案をする、という活動。
2015年3月からなので8年半、ほぼ平均月に1施設、北は北海道から南は沖縄まで、いろいろなICUを訪問させていただきました。

2021年度の年次レポートより)

僕がサイトビジットに行くのはこれで終了とすることにしました。なお、他の誰かが行くかどうかは未定です。
以上、ご報告まで。
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ECMO PAL:深層ニューラルネットワークを用いたECMOの生存予測

2023年08月17日 | AI・機械学習
最近、どうも文献を読む時間がない(単に読まなくなったのか?)ので、記事も書けない。
それじゃ寂しいので、ちょっと気になったやつをサラッと。

Stephens AF, Šeman M, Diehl A, etal.; Extracorporeal Life Support Organization Member Centres.
ECMO PAL: using deep neural networks for survival prediction in venoarterial extracorporeal membrane oxygenation.
Intensive Care Med. 2023 Aug 7. Epub ahead of print. PMID: 37548758.


すごく普通の研究。同様の文献は月に何十と出ている。
AI研究でNが1万を超えるのは珍しくないし(MIMICとか使えばすぐ)、AIの手法も普通だし、AUORCも0.8程度だし。
予後を計算してくれるWebサイトを作るというのもありがち。なんと現時点ではまだ利用可能となっておらず、逆にそこは珍しい。

ELSOのデータベースをANZICSの人たちが使って普通の解析をすると、impact factor 40の雑誌に載る。
知ってはいるが少し悲しい事実を改めて見せられたな、というのが感想。
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重症患者の腎機能測定におけるシスタチンCとクレアチニンの比較

2023年08月10日 | 腎臓
Haines RW, Fowler AJ, Liang K, et al.
Comparison of Cystatin C and Creatinine in the Assessment of Measured Kidney Function during Critical Illness.
Clin J Am Soc Nephrol. 2023 Aug 1;18(8):997-1005. PMID: 37256861.


基本の復習。
・ICUではクレアチニンによるeGFRは使用しない
・血清クレアチニンは相対値(基準からの変化)で見る
・適宜、CCRやCysCを測定する(例えばこんなのが使える)

関連する過去ログ:
クレアチニンクリアランスとeGFR
Kinetic eGFRを用いてAKIの改善度を予測する
AKIの時の抗菌薬の投与量
腎機能による抗菌薬の容量調整
GFRの推定における個人レベルの不正確さの定量化
ICUではどの指標で薬用量設定するのが一番なんでしょうか?
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