Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

重症度スコアの歴史を知り、未来を考える。

2021年04月19日 | ICU・システム
これは良いレビューだ。

Kramer AA, Zimmerman JE, Knaus WA.
Severity of Illness and Predictive Models in Society of Critical Care Medicine's First 50 Years: A Tale of Concord and Conflict.
Crit Care Med. 2021 May 1;49(5):728-740. PMID: 33729716.


重症度スコア、特にAPACHEについて、表面的ではなく、しっかりと歴史が書かれている。
この手の話題は好きなので、それなりに知っているつもりだけど、これは読んだことがない。知らないことが一杯。
どうして今もAPACHE IIをよく見かけるのか。
すごくよく分かった。

ちょっと長いけど、英語は難しくないし、休み中にでも読んでみたらどうか。
お勧めです、マジで。
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動脈圧ラインの挿入部位と感染リスク

2021年04月18日 | 感染
Buetti N, Mimoz O, Schwebel C, et al.
Insertion Site and Infection Risk among Peripheral Arterial Catheters.
Am J Respir Crit Care Med. 2021 Mar 1;203(5):630-633. PMID: 33052721.


橈骨に比べ鼠径に挿入されたA-lineは、コロナイゼーションは多いが感染は同等。

あれ。
昔読んだものを忘れちゃってるだけなのかもしれないが、初めて聞いた気がする。
鼠径って、そんなに気にしないでもいいのか?
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頭部外傷患者の意識と機能の回復

2021年04月17日 | 神経
Kowalski RG, Hammond FM, Weintraub AH, et al.
Recovery of Consciousness and Functional Outcome in Moderate and Severe Traumatic Brain Injury.
JAMA Neurol. 2021 Mar 1 Epub ahead of print. PMID: 33646273.


中央値39歳の頭部外傷なので、全ての脳損傷で見られる結果ではないとはいえ。
ICUで働いていると、患者さんがその後どうなるか分からないものだが。
こんなに回復するのか?
マジか?
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RCTについての、ありがちだけど重要な話

2021年04月11日 | EBM関連
昨日来たICMから、2つ紹介。

Shehabi Y, Serpa Neto A, et al.; SPICE III Study Investigators.
Early sedation with dexmedetomidine in ventilated critically ill patients and heterogeneity of treatment effect in the SPICE III randomised controlled trial.
Intensive Care Med. 2021 Apr;47(4):455-466. PMID: 33686482.


SPICE IIIのサブ解析。65歳以上ではDEXを使うと予後が良くなるかも。

Juschten J, Tuinman PR, Guo T, et al.
Between-trial heterogeneity in ARDS research.
Intensive Care Med. 2021 Apr;47(4):422-434. PMID: 33713156.


ARDSについての67のRCTのsystematic review。コントロール群の28日死亡率は10-67%と大きな幅があり、補正しても18-45%と、患者背景だけでは説明できない大きな違いがあった。介入群が有意な効果を示した研究の方がコントロール群の死亡率は高かった(44% vs. 28%)。

・サブグループ解析はあくまで仮説を作る行為。66歳だと有効だけど64歳だと有害な治療って存在するのか?
・コントロール群の死亡率が高い研究は疑ってかかる必要がある。偶然有意差が出ただけかもしれないから。

常識だけど、繰り返し言ってないと、知らない人たちが増える。
年寄りの義務かと。
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研究報告時のガイドライン

2021年04月08日 | EBM関連
今朝、JAMA SurgeryのePubで、文献を書くときに使うガイドラインのまとめが送られてきた。
外科雑誌で?というのはちょっと驚きだけど、まとめとして便利かなと思って、紹介。

STROBE Reporting Guidelines for Observational Studies

SQUIRE Reporting Guidelines for Quality Improvement Studies

ISPOR Reporting Guidelines for Comparative Effectiveness Research

TRIPOD Reporting Guidelines for Diagnostic and Prognostic Studies

CHEERS Reporting Guidelines for Economic Evaluations

AAPOR Reporting Guidelines for Survey Studies

MOOSE Reporting Guidelines for Meta-analyses of Observational Studies

PRISMA Reporting Guidelines for Meta-analyses and Systematic Reviews

SRQR and COREQ Reporting Guidelines for Qualitative Studies

The CONSORT Framework

TREND Reporting Guidelines for Nonrandomized/Quasi-Experimental Study Designs

あれま、4つくらいしか知らないぞ。
初めて見たのはCONSORTだったかなー。いつの間にやら随分増えてたのね。
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ゾンビRCT

2021年04月07日 | EBM関連
くっだらない話を晒しっぱなしにはできないので、さっさと文献紹介。
すっごい面白いやつ、見つけた。
(と言ってもEpubは半年も前なので、巷ではとっくの昔に話題になっていたかもしれなけど)

Carlisle JB.
False individual patient data and zombie randomised controlled trials submitted to Anaesthesia.
Anaesthesia. 2021 Apr;76(4):472-479. Epub 2020 Oct 11. PMID: 33040331.


Anaesthesiaに投稿された526文献を詳細に調査(ちなみに調査したのは著者一人だけ)。
そのうち153の文献で症例の個人データが登録されたので、1つあたり平均3時間かけてデータを精査した。
その結果、67の研究(44%)でデータに間違いがあり、40(26%)でretractされるべき間違いがあった(=ゾンビ研究)。
もっともRCTの投稿の多かった5カ国は順に中国、韓国、インド、日本、エジプトで、これらの国でゾンビ研究が多かった。

例えば中国は、2019年3月からの1年間で48のRCTが患者情報付きで投稿され、そのうち17がゾンビ研究だった。
ちなみに日本は11研究中2つがゾンビ。
ゾンビ研究の具体例が本文に記載されているけど、その多くは症例の水増しのようだ。同じ患者さんのデータをコピペしたり、ちょっとだけ修正したりして、でっちあげたものらしい。

この研究の結論は、
・症例データ付きで投稿されたRCTの半分近くに間違いがあり、4分の1は科学的価値がないと判断された。
・Anaesthesiaだけが特別だと考えるのは困難であり、雑誌の編集者が最初に考えるべきは、‘what is the evidence that this study is not flawed?’である。

この人、どんだけすごいんだと思うし。
日本から1つの雑誌にたった1年間で2つもゾンビが投稿されているのも驚きだし。
これからRCTを見たときにどうしたらいいんだとも思うし。

とりあえず、すごい話だ。
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「帰室」という謎の言葉

2021年04月06日 | ひとりごと
ひっさしぶりの投稿ですが、
くっだらない話をします。

十数年前、慈恵に来たときに、”帰室”という聞き慣れない言葉を聞いた。
患者さんの具合が良くなって、ICUから病棟に移動するときに使う言葉だった。
不思議だなーと思った。
だって、例えば救急外来からICUに入室して、数日後に病棟に移動したら、病棟に行くのは初めてなのだから”帰る”場所じゃないじゃんか。
ICUから病棟に行くことは日本語では退室、英語ではdischargeと言うのが普通のはず(discharged from the ICU to the ward)。
ずーっと変だ変だと事あるごとに言っていたら、ここ数年はほとんど誰も言わなくなり、普通に退室という言葉が使われるようになった。
ちょっとスッキリ。

しかーし。
今月から、慈恵には行かなくなり、その代わりに自治さいたまのICUに週2回顔を出すようになった。
そして、ここではOP室や救急外来などからICUに来ることを"帰室”と呼んでいることに気がついた。

ビビった。マジで。しばらく意味が理解できなかった。
それ、入室じゃんか。ちなみに英語ではadmission(admitted to the ICU)。

手術や麻酔のことは全然知らないけど、”帰室”って元々はそっち関係の用語だよね、きっと。
手術を受けるほとんどの患者さんは病棟から来て病棟に帰る。だから手術が終わって病棟に移動することを”帰室”と呼ぶようになった(と想像)。
そこから派生して、
ICUから病棟に移動することを帰室と呼んだり、
他の場所からICUに来ることを帰室と呼んだりするローカルな習慣ができたのかしら。

ローカルな用語って他にもたくさんあるけど、これは同じ言葉が逆の意味に使われていて、面白い。

っていうかさ、普通に入室・退室と言ったらいいのに。。。
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